当サイトでは、看護学生や新人看護師のために、NANDA-Iの看護診断に基づく看護計画&看護記録の記載例・書き方を多数ご紹介しています。
今回は、NANDA-I領域11の看護診断「組織結合性障害」の患者の観察ポイントを解説してまいります。
組織結合性障害は、看護診断の中でも使用頻度が高く、しっかりと抑えておくべき診断の一つです。
記事の最後には、看護計画と看護記録(SOAP)の記載例を公開しており、すべてコピペ可です。
あくまでも一例であり、所属している病院や法人によって、書き方やルールは異なる場合も考えられますので、各自カスタマイズしてご活用ください。
組織結合性障害(NANDA-I領域11)とは
組織結合性障害とは、体組織(皮膚、粘膜、筋膜、筋肉など)が正常な構造や機能を維持できない状態を指します。
これにより、創傷治癒の遅延や感染のリスクが高まり、患者の全身状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
原因は外傷や感染、慢性疾患など多岐にわたり、適切なケアと管理が必要です。
組織結合性障害(NANDA-I領域11)の原因
組織結合性障害(NANDA-I領域11)を引き起こす主な原因は以下の通りです。
外的要因
- 外傷(例:擦り傷、切り傷、圧迫傷)
- 手術による創傷
- 火傷や凍傷
内的要因
- 栄養不良(例:ビタミンCやタンパク質不足)
- 慢性疾患(例:糖尿病、循環器疾患)
- 加齢による皮膚の脆弱性
- 免疫力の低下(例:がん患者、免疫抑制療法中の患者)
環境的要因
- 適切でないドレッシングやケア不足
- 不衛生な環境
- 体位管理不足による圧迫や摩擦
医療的要因
- 褥瘡や静脈潰瘍の悪化
- 血流障害(例:閉塞性動脈硬化症)
組織結合性障害(NANDA-I領域11)の評価方法
組織結合性障害(NANDA-I領域11)を評価する際には、傷の状態や患者の全身状態を観察・記録します。
創傷の観察
- 創傷の大きさ、深さ、滲出液の量や性状(例:透明、膿性)
- 創縁の状態(例:発赤、腫脹、硬化)
- 組織の壊死や感染兆候(例:悪臭、痛み、熱感)
全身状態の評価
- 栄養状態(アルブミン値、体重減少の有無)
- バイタルサイン(例:体温、脈拍、血圧)
- 免疫状態(例:白血球数、CRP値)
スケールの活用
- PUSHツール(Pressure Ulcer Scale for Healing):褥瘡の治癒経過を評価
- ブレーデンスケール:褥瘡リスクを評価
患者背景の確認
- 過去の損傷歴、治療歴
- 使用中の薬剤(例:ステロイド、抗凝固薬)
組織結合性障害(NANDA-I領域11)の治療方法
組織結合性障害(NANDA-I領域11)の治療は、創傷のケアと原因の除去を中心に行います。
創傷ケア
- 洗浄:生理食塩水や消毒液を使用し、創傷を清潔に保つ
- ドレッシング材の選択:湿潤療法を導入し、創傷に適したドレッシング材(例:ハイドロコロイド、フォーム材)を使用
- 壊死組織の除去:外科的切除や酵素的除去を実施
栄養管理
- 高タンパク、高ビタミン(例:ビタミンC、亜鉛)の摂取を促進
- 必要に応じて栄養補助食品を提供
感染対策
- 抗菌薬の局所または全身投与
- 清潔なケア環境を維持
圧迫と摩擦の軽減
- 体位変換を2時間ごとに行う
- エアーマットや体圧分散クッションを使用
基礎疾患の治療
- 糖尿病の血糖コントロール
- 血流改善のための薬物療法や外科的治療
組織結合性障害(NANDA-I領域11)の患者をケアする上で気をつけること
組織結合性障害(NANDA-I領域11)の患者をケアする際には、以下の点に注意する必要があります。
清潔な環境の提供
- 創傷部を清潔に保ち、感染のリスクを最小限に抑える。
体位管理の徹底
- 圧迫部位を頻繁に確認し、体位変換を適切に行う。
早期発見と報告
- 創傷の悪化兆候(例:発赤、滲出液の増加)を早期に発見し、報告する。
心理的ケア
- 創傷の見た目や治療過程への不安を軽減するため、患者に寄り添ったケアを提供する。
チーム連携
- 医師や栄養士、リハビリスタッフと連携し、総合的なケアを実施する。
組織結合性障害(NANDA-I領域11)の看護計画を立案する上でのポイント
組織結合性障害(NANDA-I領域11)の看護計画(観察計画、援助計画、行動計画)は、以下のポイントに注意をして立案すると良いでしょう。
観察計画(O-P)の立案ポイント
創傷の状態や患者の全身状態を日々観察します。
特に、滲出液の性状や量、感染兆候、患者の栄養状態を確認します。
援助計画(T-P)の立案ポイント
適切な創傷ケアを行い、体位変換やドレッシング材の使用を通じて治癒を促します。
患者が快適に過ごせるよう、環境整備や心理的サポートも行います。
教育計画(E-P)の立案ポイント
患者とその家族に創傷の管理方法や体位変換の重要性を指導します。
また、栄養補給や感染予防の方法についても説明します。
組織結合性障害(NANDA-I領域11)の看護計画の記載例・書き方
看護診断 | #1 組織結合性障害 |
患者目標 | 長期目標:創傷が治癒し、皮膚や組織の健全性が回復する。 短期目標:1週間以内に創傷の滲出液が減少し、感染兆候が見られなくなる。 |
観察計画(O-P) | 創傷の大きさ、深さ、滲出液の性状を毎日記録する。 感染兆候(発赤、熱感、悪臭)を観察する。 患者の栄養状態(体重、アルブミン値)を評価する。 バイタルサイン(体温、脈拍)を測定し、感染の有無を確認する。 患者の体位や圧迫部位を2時間ごとに観察する。 創傷部周囲の皮膚の状態(乾燥、発赤)を記録する。 痛みの程度を観察し、適切に記録する。 ドレッシング材の効果を確認し、必要に応じて交換する。 創傷治癒の進行状況を写真で記録し、経過を把握する。 患者の心理的ストレスを聴取し、不安や悩みを記録する。 |
援助計画(T-P) | 創傷部を適切に洗浄し、滅菌されたドレッシング材を使用する。 湿潤環境を保つため、適切なドレッシングを選択する。 体位変換を2時間ごとに行い、圧迫を軽減する。 栄養士と連携し、高タンパク・高ビタミンの食事を提供する。 必要に応じて壊死組織の除去を医師と相談する。 患者に腹式呼吸やリラクゼーション法を教え、ストレスを軽減する。 感染兆候が見られた場合は速やかに医師に報告する。 患者が快適に過ごせるよう、清潔で快適な寝具を使用する。 痛みがある場合は鎮痛薬の投与を検討し、痛みの緩和を図る。 心理的な不安を軽減するため、治療の進行状況を説明する。 |
教育計画(E-P) | 創傷の洗浄方法とドレッシング材の交換方法を指導する。 体位変換の重要性と実施方法を説明する。 創傷治癒に必要な栄養素(タンパク質、ビタミン)の摂取方法を指導する。 感染予防のための手洗いと清潔保持の方法を説明する。 創傷の状態が悪化した場合の対応方法を説明する。 医療機関への相談タイミングを明確に伝える。 家庭環境での清潔管理の重要性を強調する。 創傷治癒を促進する生活習慣(例:適切な水分摂取、禁煙)を指導する。 患者が疑問や不安を感じた場合、相談窓口を案内する。 体圧分散マットやクッションの使用方法を説明し、日常生活での活用を促す。 |
看護計画作成におけるルールは、コチラの記事(【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】)を参考にしてください!
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組織結合性障害(NANDA-I領域11)の看護記録(SOAP)の記載例・書き方
看護診断 (看護問題) | 組織結合性障害 |
S(主観的情報) | 「傷が痛いです。」 「滲出液が多くて不安です。」 |
O(客観的情報) | 創傷部に発赤と軽度の腫脹を認める。 滲出液は透明から膿性へ変化。 アルブミン値が3.2g/dLと低下している。 体位変換が十分に行われていない。 |
A(評価) | 感染のリスクが高まり、創傷治癒が遅れている可能性がある。 |
P(計画) | 創傷部を毎日洗浄し、適切なドレッシング材を使用する。 湿潤環境を保つため、創傷の状態に応じたドレッシングを選択する。 2時間ごとの体位変換を徹底し、圧迫を軽減する。 栄養士と連携し、アルブミン値を改善する食事計画を立案する。 滲出液が多い場合は、ドレッシング材の交換頻度を増やす。 感染兆候(膿性滲出液、悪臭)が見られた場合は速やかに医師に報告する。 患者と家族に創傷の管理方法を指導する。 創傷の状態を毎日写真で記録し、治癒過程を確認する。 痛みが強い場合は、医師と相談し鎮痛薬を投与する。 患者の心理的な不安を軽減するため、治療方針を丁寧に説明する。 |
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【完全保存版】看護記録「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応】
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NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例まとめ
当サイトでは、今回ご紹介した領域の他にも、NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例を多数まとめています。
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看護記録(SOAP)の記載例
看護計画の記載例
引用・参考文献
T. ヘザー・ハードマン 編,上鶴 重美 訳:NANDA-I看護診断 定義と分類 2020-2023.医学書院.