この記事では、NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)の記載例を公開しています。
今回は領域9「コーピング/ストレス耐性」です。
看護記録の書き方が分からない…と悩んでいる看護実習生、新人の方々はぜひ参考にしてみてください!

看護記録(SOAP)の書き方に関しては、コチラの記事(【完全保存版】看護記録「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応】)を参考にしてください!
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【完全保存版】看護記録「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応】
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他の領域の記載例を知りたい!という人は、この記事最後にまとめているので見てみてね!
*ご紹介しているのはあくまでも記載例ですので、実際は担当する患者にあわせて修正してご使用ください。
*できるだけ多くの患者に適応できるよう、あえて抽象的な内容を含めている部分がございます。こちらもご活用いただく際はご注意ください。
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【NANDA-I看護診断】領域9「コーピング/ストレス耐性」の看護計画の記載例まとめ【コピペ可】
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目次[非表示]
- NANDA-I領域9「コーピング/ストレス耐性」の看護診断名一覧
- 類①-心的外傷後シンドローム
- 類①-心的外傷後シンドロームリスク状態
- 類①-移住トランジション混乱リスク状態(旧:移住トランジション複雑化リスク状態)
- 類②-コーピング不適応
- 類②-コーピング促進準備状態
- 類②-家族コーピング不適応
- 類②-家族コーピング促進準備状態
- 類②-コミュニティコーピング不適応
- 類②-コミュニティコーピング促進準備状態
- 類②-介護負担過剰
- 類②-介護負担過剰リスク状態
- 類②-悲嘆不適応
- 類②-悲嘆不適応リスク状態
- 類②-悲嘆促進準備状態
- 類②-レジリエンス障害
- 類②-レジリエンス障害リスク状態
- 類②-レジリエンス促進準備状態
- 類②-希望促進準備状態
- 類②-セルフコンパッション不足
- 類②-不安過剰
- 類②-死の不安過剰
- 類②-恐怖過剰
- 類③-自律神経過反射リスク状態
- 類③-感情調整不良
- 類③-気分調整障害
- 類③-急性薬物離脱シンドローム
- 類③-急性薬物離脱シンドロームリスク状態
- NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例まとめ
NANDA-I領域9「コーピング/ストレス耐性」の看護診断名一覧

NANDA-I領域9「コーピング/ストレス耐性」は、類①〜③に分けられます。
それぞれの診断名一覧は以下の通りです。
- 類① トラウマ後反応
- ・心的外傷後シンドローム
・心的外傷後シンドロームリスク状態
・移住トランジション混乱リスク状態
- 類② コーピング反応
- ・コーピング不適応
・コーピング促進準備状態
・家族コーピング不適応
・家族コーピング促進準備状態
・コミュニティコーピング不適応
・コミュニティコーピング促進準備状態
・介護負担過剰
・介護負担過剰リスク状態
・悲嘆不適応
・悲嘆不適応リスク状態
・悲嘆促進準備状態
・レジリエンス障害
・レジリエンス障害リスク状態
・レジリエンス促進準備状態
・希望促進準備状態
・セルフコンパッション不足
・不安過剰
・死の不安過剰
・恐怖過剰
- 類③ 神経行動学的ストレス
- ・自律神経過反射リスク状態
・感情調整不良
・気分調整障害
・急性薬物離脱シンドローム
・急性薬物離脱シンドロームリスク状態
類①-心的外傷後シンドローム
コード:00141
- 定義
- 忘れられないほど衝撃的で圧倒される出来事に対する不適応反応が、長期にわたり続いている状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 心的外傷後シンドローム |
S(主観的情報) | 「あの時のことが何度も思い出されて、忘れようとしても消えない。」「些細なことでも怖くなって、普通に生活できない気がする。」 |
O(客観的情報) | 過去の外傷的な出来事に関連したフラッシュバックや悪夢を頻繁に訴えている。 音や光などの些細な刺激に対して過剰に反応し、強い不安や恐怖を示す。 避けたい記憶や感情に関連する状況や場所を避ける行動が観察される。 持続的な不安、過覚醒(例:過度の警戒心や集中困難)、感情の平坦化が確認される。 |
A(評価) | 過去の心的外傷により、心理的・身体的な症状が続いている心的外傷後シンドローム(PTSD)の状態が見られる。この状態が日常生活や社会的機能に深刻な影響を及ぼしている。 |
P(計画) | 心的外傷に関連する症状を軽減するため、専門的な心理カウンセリングや認知行動療法(CBT)を紹介する。 ストレス管理やリラクゼーション技法(例:深呼吸、瞑想)を導入し、不安や過覚醒を軽減する。 必要に応じて精神科医と連携し、症状に応じた薬物療法(例:抗不安薬、抗うつ薬)の利用を検討する。 安心して話せる環境を提供し、外傷体験についての語りをサポートし、感情の整理を促進する。 家族や支援者に心的外傷後シンドロームに対する正しい理解を促し、患者に対する適切な接し方を指導する。 トラウマに関連した場所や状況への段階的な暴露療法を取り入れ、少しずつ適応力を高める支援を行う。 社会的サポートの重要性を説明し、患者が孤立しないように、グループセラピーや支援団体への参加を促す。 |
類①-心的外傷後シンドロームリスク状態
コード:00145
- 定義
- 忘れられないほど衝撃的で圧倒される出来事に対する不適応反応が、長期にわたり続きやすい状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 心的外傷後シンドロームリスク状態 |
S(主観的情報) | 「あの出来事を思い出すと怖くなる。」「同じような状況にまたなるんじゃないかと不安でたまらない。」 |
O(客観的情報) | 外傷的出来事(例:事故、暴力、災害)を経験しており、その影響で不安や過覚醒が見られる。 トラウマ体験を連想させる場所や状況を避ける行動が増加している。 睡眠障害(例:入眠困難、悪夢)が観察され、日常生活に影響を及ぼしている可能性がある。 過去の外傷体験に関連したフラッシュバックや強い情緒反応が発生するリスクが高い状態にある。 |
A(評価) | 過去の外傷体験により、心理的・身体的な影響が蓄積し、心的外傷後シンドローム(PTSD)の発症リスクが高い状態にある。この状態が進行すると、生活や社会的機能に深刻な支障をきたす可能性がある。 |
P(計画) | 早期の心理支援を受けるため、トラウマ専門のカウンセリングや認知行動療法(CBT)を紹介する。 リラクゼーション法(例:深呼吸、瞑想、ヨガ)を教え、心理的な安定を保つ方法を実践する。 ストレスの軽減を図るため、家族や友人などの社会的サポートを積極的に活用するよう提案する。 精神科医と連携し、不安症状や睡眠障害に対処するための薬物療法を検討する。 トラウマ体験に関連した感情を整理するため、語りの場や安全な環境での表現活動を奨励する。 外傷体験に関連する場所や状況に少しずつ慣れるため、段階的な暴露療法を必要に応じて取り入れる。 心的外傷後シンドロームの兆候に対して家族や周囲の支援者に注意を促し、適切なサポート体制を構築する。 |
類①-移住トランジション混乱リスク状態(旧:移住トランジション複雑化リスク状態)

コード:00484
- 定義
- 母国からの移住や適応過程で、否定的な感情や影響が起きやすい状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 移住トランジション混乱リスク状態(旧:移住トランジション複雑化リスク状態) |
S(主観的情報) | 「新しい環境にうまく馴染めるか不安がある。」「言葉や文化の違いが大きくて、うまくやれるか心配。」 |
O(客観的情報) | 移住先の環境や文化に関する情報不足が確認され、適応への困難さが予想される。 言語や文化的背景の違いにより、社会的孤立やコミュニケーションの困難が見られる可能性がある。 家族や地域からのサポートが不足している、または移住の準備が不十分な様子がある。 ストレスや心理的な負担が増加しており、日常生活の適応能力が低下するリスクがある。 |
A(評価) | 移住に伴う環境や文化の変化、サポート不足、言語的・文化的障壁により、移住トランジションが複雑化するリス |
P(計画) | 移住先の文化や言語に関する情報を収集し、必要に応じて語学や文化適応のためのトレーニングを提供する。 地域の支援団体や移住者コミュニティを紹介し、社会的つながりを構築できる環境を整える。 移住の準備段階で、家族や友人の協力を得る方法を提案し、移住後も連絡を取りやすい体制を整える。 移住先の医療や福祉サービス、教育機関などのリソースに関する情報を提供し、日常生活をスムーズに進められるよう支援する。 心理的ストレスを軽減するためのリラクゼーション法やストレス管理の方法を指導し、適応能力を向上させる。 必要に応じて、心理カウンセリングや移住に特化した支援プログラムを提案し、心理的・社会的適応をサポートする。 |
類②-コーピング不適応
コード:00405
- 定義
- ストレスの多い状況や不快な状況に対処するための認知面や行動面の取り組みが非生産的な状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | コーピング不適応 |
S(主観的情報) | 「ストレスが溜まって、何をしても気持ちが楽にならない。」「どう対処していいのか分からず、逃げたくなってしまう。」 |
O(客観的情報) | ストレスや困難に直面した際、適切な対処方法を見つけられず、感情的になったり回避行動を取る場面が多い。 ストレス解消として不健康な行動(例:過度の飲酒、暴飲暴食)を取る傾向が観察される。 問題解決を試みず、否認や先延ばしといった回避的な態度が目立つ。 ストレスの影響で身体的症状(例:頭痛、胃痛)や社会的な機能低下が確認される。 |
A(評価) | ストレスや困難に対する対処が非効果的であり、問題の解決を妨げるだけでなく、心理的・身体的な負担を増加させている。この状態が継続すると、健康や生活の質にさらなる悪影響を及ぼす可能性がある。 |
P(計画) | ストレスの原因を明確化し、それに適切に対処するための具体的な方法(例:問題解決スキル)を指導する。 健全なストレス解消法(例:運動、趣味、リラクゼーション法)を提案し、実践のサポートを行う。 不適切なコーピング行動(例:飲酒、過食)を減らすための代替行動を一緒に考える。 認知行動療法(CBT)を導入し、否定的な思考パターンを認識し、より建設的な考え方に変える支援を行う。 家族や友人とのサポートネットワークを活用する方法を提案し、孤立を防ぎながら問題に取り組む環境を整える。 必要に応じて心理カウンセリングを受けるよう勧め、感情の整理やストレス対処スキルを習得する機会を提供する。 進捗状況を定期的に確認し、非効果的コーピングの頻度や影響を評価しながら支援計画を調整する。 |
類②-コーピング促進準備状態
コード:00158
- 定義
- ストレスの多い状況や不快な状況に対処するための認知面や行動面の取り組みパターンが強化可能な状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | コーピング促進準備状態 |
S(主観的情報) | 「ストレスへの対処方法をもっと知りたいと思っている。」「これからは前向きに困難に向き合えるようになりたい。」 |
O(客観的情報) | ストレスに対処しようとする積極的な姿勢が見られ、新しいコーピングスキルを学びたい意欲が確認される。 ストレスの原因や影響について冷静に分析し、自分で改善する方法を模索する姿勢がある。 過去に成功したストレス対処法について話すなど、前向きな行動が観察される。 家族や友人とのサポートを求めるなど、社会的支援を活用しようとする姿勢がある。 |
A(評価) | ストレスへの対処スキルを向上させる準備が整っており、適切なコーピングスキルを学び、実践することで生活の質を向上させる可能性が高い状態にある。 |
P(計画) | ストレスの具体的なトリガーを特定し、それに適したコーピングスキルを一緒に計画する。 リラクゼーション技法(例:深呼吸、瞑想、筋弛緩法)を教え、日常生活で活用できるスキルを実践する。 ストレス解消に効果的な活動(例:趣味、軽い運動)を提案し、ポジティブな体験を増やす。 問題解決スキル(例:優先順位の整理、タスク分解)を学び、ストレス原因に具体的に対処する方法を支援する。 社会的サポートの活用を促し、家族や友人と協力して困難に対処する方法を提案する。 成功体験を振り返り、小さな達成を積み重ねて自己効力感を高める。 心理教育を提供し、ストレスに対する理解を深め、建設的な対処法を選択する力を養う。 |
類②-家族コーピング不適応
コード:00373
- 定義
- 家族がストレスの多い状況や不快な状況に対処するための認知面や行動面の取り組みが非生産的な状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 家族コーピング不適応 |
S(主観的情報) | 「家族で話し合っても意見がまとまらない。」「みんながバラバラで、どう対応していいか分からない。」 |
O(客観的情報) | 家族内でのコミュニケーションが不足し、意思決定や問題解決が滞っている。 ストレスが増加し、家族メンバー間の緊張や対立が頻繁に観察される。 家族の役割分担が曖昧で、特定のメンバーに負担が集中している。 外部からのサポート(例:親族、地域コミュニティ)を活用しておらず、孤立している状況が見られる。 |
A(評価) | ストレスや役割分担の不明確さ、コミュニケーション不足が原因で、家族全体のコーピング機能が低下している状態にある。この状態が続くと、家族関係の悪化や心理的健康の悪影響が懸念される。 |
P(計画) | 家族全員が参加する話し合いの場を設け、課題や目標を共有し、家族としての一体感を高める。 家族内での役割や責任を明確にし、負担を公平に分担する方法を提案する。 ストレス管理法(例:リラクゼーション、運動)を家族全員で学び、心理的負担を軽減する。 外部の支援(例:地域コミュニティ、カウンセリング、福祉サービス)を利用する方法を紹介し、家族の孤立を防ぐ。 ポジティブな家族活動(例:一緒に食事をする、趣味を共有する)を計画し、家族の絆を強化する機会を提供する。 問題が複雑化している場合には、家族療法や専門家の介入を提案し、専門的な支援を受けられるようにする。 進捗を定期的に評価し、家族の状況や支援計画を柔軟に見直すことで、コーピング機能の改善を図る。 |
類②-家族コーピング促進準備状態
コード:00075
- 定義
- 家族がストレスの多い状況や不快な状況に対処するための認知面や行動面の取り組みパターンが強化可能な状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 家族コーピング促進準備状態 |
S(主観的情報) | 「家族で一緒に問題を解決していきたいと思っている。」「これからもっと家族で話し合って協力できるようになりたい。」 |
O(客観的情報) | 家族メンバーが前向きにコミュニケーションを取り、課題解決に取り組もうとする意欲を示している。 家庭内での役割や責任について見直し、協力体制を整えたいという話し合いが始まっている。 家族全員がストレスや課題を共有し、それに対して積極的な姿勢を見せている。 地域社会や支援機関とのつながりを築こうとする行動が見られる。 |
A(評価) | 家族のコーピング機能を高める準備が整いつつあり、協力して問題に取り組む意欲が見られる。この状態を活かし、家族全体の絆と適応能力をさらに向上させる支援が効果的である。 |
P(計画) | 家族全員が意見を共有できる話し合いの場を設け、家族としての目標や優先事項を明確化する。 家族内の役割分担を見直し、負担が公平になるよう調整し、協力体制を整える。 ポジティブな家族体験を増やすため、一緒に楽しめる活動(例:家族ゲーム、共同のプロジェクト)を計画する。 ストレス管理のスキル(例:リラクゼーション法、深呼吸)を家族全員で学び、実践する機会を提供する。 地域や専門機関の支援リソース(例:家族療法、カウンセリング、福祉サービス)を紹介し、困難を乗り越えるための外部サポートを活用する。 小さな成功体験を積み重ね、家族のコーピング能力に対する自己効力感を高める。 定期的に状況を振り返り、家族全体の進捗を確認しながら支援計画を柔軟に調整する。 |
類②-コミュニティコーピング不適応
コード:00456
- 定義
- コミュニティの要求やニーズに応えるための適応と問題解決に必要なコミュニティ活動のパターンが不十分な状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | コミュニティコーピング不適応 |
S(主観的情報) | 「地域のことに関わるのが面倒で、相談もできない。」「困っているけど、どこに助けを求めればいいか分からない。」 |
O(客観的情報) | 地域社会との関わりが少なく、助けを求めたり支援を受けたりする行動が見られない。 地域のリソース(例:相談窓口、福祉サービス)についての情報不足が確認される。 社会的孤立が進行しており、コミュニティ内でのサポートを得られない状況が続いている。 コミュニティ内の交流やイベントへの参加が少なく、孤独感や疎外感が増加している。 |
A(評価) | 地域社会やコミュニティとのつながりが弱く、ストレスや困難への適切な対処ができていない非効果的コミュニティコーピングの状態にある。このままでは心理的ストレスや孤立がさらに悪化するリスクが高い。 |
P(計画) | 地域の支援リソース(例:地域包括支援センター、福祉サービス)を紹介し、必要なサポートを受けられるよう情報提供する。 コミュニティ活動(例:地元イベント、趣味サークル)への参加を促し、地域とのつながりを構築する機会を提供する。 社会的サポートを活用する方法を教え、家族や友人、近隣住民と協力して問題に対処する方法を支援する。 孤立感や疎外感を軽減するため、心理的サポート(例:カウンセリング)を提案し、感情の整理と適応力向上を図る。 コミュニティ内での自己効力感を高めるため、小さな役割や貢献の機会を提案し、達成感を積み重ねる。 進捗状況を定期的に確認し、コミュニティとの関わりが増えるように支援計画を柔軟に調整する。 |
類②-コミュニティコーピング促進準備状態
コード:00076
- 定義
- コミュニティの要求やニーズに応えるための適応と問題解決に必要なコミュニティ活動のパターンが強化可能な状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | コミュニティコーピング促進準備状態 |
S(主観的情報) | 「もっと地域の活動に参加してみたいと思っている。」「困ったときに、地域のサポートをうまく利用できるようになりたい。」 |
O(客観的情報) | 地域社会やコミュニティ活動に興味を示し、積極的に関わる意欲が確認される。 地域リソース(例:自治体の福祉サービス、地元のイベント)について調べたり、問い合わせたりする行動が見られる。 他者との交流に前向きで、コミュニティ内での役割を担いたいという姿勢が表れている。 地域社会のサポートや活動を活用し、生活の質を向上させる準備が整っている様子がある。 |
A(評価) | 地域社会とのつながりを構築・強化し、コミュニティコーピングを促進する準備が整っている状態である。適切な支援や情報を提供することで、地域社会との関わりを深め、心理的および社会的な適応をさらに向上させる可能性が高い。 |
P(計画) | 地域で利用可能な支援リソースやサービス(例:自治体の相談窓口、福祉施設、地元のコミュニティセンター)の情報を提供する。 地域のイベントやボランティア活動に参加する機会を提案し、他者との交流を促進する。 コミュニティ内での役割を見つけるためのサポートを行い、自己効力感や達成感を得られるように支援する。 地域の支援ネットワークを活用し、困難やストレスに対処する方法を学ぶ機会を提供する。 成功体験を共有する場を設け、地域活動への参加がもたらすポジティブな影響を本人と一緒に振り返る。 進捗を定期的に確認し、コミュニティとの関わりを広げていけるよう柔軟に計画を調整する。 |
類②-介護負担過剰
コード:00366
- 定義
- 大切な人を世話する際に、多面的で押しつぶされそうな負荷がかかった状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 介護負担過剰 |
S(主観的情報) | 「自分の時間がまったく取れない」「心も体も限界に近い」「誰かに頼りたいけど、私がやらなきゃと思ってしまう」 |
O(客観的情報) | 介護者はほぼ単独で24時間体制の介護を担っており、休息や外出の機会が少ない 表情に疲労感が強く、感情の起伏が激しい場面がみられる 体調不良(肩こり、頭痛、不眠など)の訴えがあるが、医療機関への受診歴はなし 介護対象者のADLは全面的介助を要し、医療的ケアも必要な状態 介護者本人の健康管理や生活が犠牲になっている様子がうかがえる |
A(評価) | 介護者が長期にわたり多大な負担を抱え、身体的・心理的・社会的にストレスを蓄積している状態 介護の質や継続性にも影響を及ぼすおそれがあり、早急な支援と介入が必要 |
P(計画) | 介護者の思いや困りごとを傾聴し、感情を言葉にする機会を設ける 地域包括支援センターやケアマネジャーと連携し、訪問介護やデイサービスなどのサービス利用を検討する 介護負担軽減に向けて、家族や近隣支援者との協力体制を構築する 介護者の健康状態(睡眠・食事・休息など)を定期的に確認し、セルフケアの重要性を伝える 必要に応じて心理職(カウンセラー・精神科医)と連携し、メンタルサポートを行う |
類②-介護負担過剰リスク状態
コード:00401
- 定義
- 大切な人を世話する際に、多面的で押しつぶされそうな負荷がかかりやすい状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 介護負担過剰リスク状態 |
S(主観的情報) | 「今はなんとかなっているけど、このまま続けられるか不安」「他に頼れる人がいない」「自分の体がもつか心配になることがある」 |
O(客観的情報) | 介護者は主に1人で日常の介護(食事、排泄、移動介助など)を担っている 介護対象者はADLの一部に介助を要し、今後の状態悪化が予測される 介護者は日中も休息が取れておらず、夜間の介助が必要な日もある 介護保険サービスの利用が限定的で、外部支援が少ない 介護者に疲労や肩こり、軽度の睡眠障害の訴えあり |
A(評価) | 現在は介護が維持されているが、身体的・精神的負担が積み重なることで今後介護負担が過剰となるリスクが高い 早期に支援体制を整えることで、介護者の健康維持と介護の継続性を支援する必要がある |
P(計画) | 介護者の健康状態や生活リズムについて継続的に観察・傾聴を行う 地域包括支援センターやケアマネジャーと連携し、今後必要となる介護サービスの導入を検討する 家族内での役割分担や支援者の有無を確認し、可能であれば協力体制を整える 介護者が自分の時間や休息を確保できるよう、デイサービスやショートステイの活用を提案する 介護者に対してセルフケアや相談先についての情報を提供し、不安軽減を図る |
類②-悲嘆不適応
コード:00301
- 定義
- 大切な人の死後に対する反応で、喪失に伴う苦悩が、社会文化的な期待から外れている状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 悲嘆不適応 |
S(主観的情報) | 「どうしても立ち直れない。」「ずっと悲しくて、前に進む気力が湧かない。」 |
O(客観的情報) | 愛する人の喪失や重大な出来事の後、悲嘆が長期化し、日常生活に支障をきたしている。 感情表現が抑制されている、または過度に強い悲しみを訴えている。 喪失や出来事に関連する状況を避ける行動が観察される。 社会的孤立が進み、家族や友人との交流が減少している。 睡眠障害や食欲不振、集中力の低下が見られる。 |
A(評価) | 喪失や重大な出来事に適応できず、悲嘆が生活の質や心理的安定に深刻な影響を及ぼしている状態である。このままでは、精神的および身体的健康にさらなる悪影響を及ぼす可能性がある。 |
P(計画) | 悲嘆の感情を整理するため、心理カウンセリングを提案し、安全で共感的な環境で話せる場を提供する。 グリーフサポートグループへの参加を促し、同じ体験を持つ人々と交流しながら悲嘆を共有する機会を作る。 悲嘆に伴う身体的な症状(例:睡眠障害、食欲不振)に対処するため、健康的な生活習慣(例:規則正しい食事、軽い運動)をサポートする。 悲嘆のプロセスを肯定的に受け止めるため、記録や表現(例:日記を書く、絵を描く)を通じて感情を解放する方法を提案する。 必要に応じて、精神科医と連携し、悲嘆に関連したうつ症状や不安への薬物療法を検討する。 進捗を定期的に確認し、感情や生活の変化をモニタリングしながら支援計画を調整する。 ポジティブな未来を見据える目標(例:趣味の再開、社会活動への参加)を一緒に考え、希望を取り戻す支援を行う。 |
類②-悲嘆不適応リスク状態
コード:00302
- 定義
- 大切な人の死後に対する反応で、喪失に伴う苦悩が、社会文化的な期待から外れやすい状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 悲嘆不適応リスク状態 |
S(主観的情報) | 「大切な人がいなくなったらどうしたらいいか分からない。」「将来のことを考えると、不安と悲しみでいっぱいになる。」 |
O(客観的情報) | 愛する人の喪失や重大な出来事が予想され、本人がその影響について深い不安や悲しみを表現している。 ストレス耐性が低下しており、現状に適応する力が弱まっている様子がある。 社会的サポートが不足しており、孤立しやすい環境にある。 感情の表現や共有が抑制され、心理的なサポートを求める行動が少ない。 |
A(評価) | 予想される喪失や出来事に対して、適応困難となるリスクが高い状態にある。この状態が進行すると、悲嘆が長期化し、心理的および身体的な健康に悪影響を及ぼす可能性がある。 |
P(計画) | 悲嘆に備えるため、本人が感じている不安や悲しみについて話し合い、感情を表現する機会を提供する。 喪失や出来事に向き合うための心理教育を行い、悲嘆の正常なプロセスを理解してもらう。 家族や友人とのつながりを強化し、社会的サポートの活用方法を提案する。 リラクゼーション法(例:深呼吸、瞑想)やストレス管理スキルを教え、心理的安定を保つための手段を提供する。 グリーフカウンセリングやサポートグループへの参加を促し、同じ経験を共有する仲間との交流を支援する。 必要に応じて精神科医や心理カウンセラーと連携し、悲嘆や不安に対処するための専門的支援を提案する。 進捗状況を定期的に確認し、感情の変化や適応状況をモニタリングしながら支援計画を調整する。 |
類②-悲嘆促進準備状態
コード:00285
- 定義
- 大切な人の死後に対する反応パターンが、強化可能な状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 悲嘆促進準備状態 |
S(主観的情報) | 「大切な人を失った悲しみを乗り越えて、前に進みたいと思っている。」「今はつらいけれど、自分なりに受け入れられるようになりたい。」 |
O(客観的情報) | 喪失の痛みを感じながらも、自分の感情に向き合おうとする姿勢が見られる。 家族や友人、支援者との関係を維持し、サポートを受け入れる意欲が確認される。 悲嘆の過程を理解し、適応的な方法で感情を表現する行動(例:話す、書く)が見られる。 前向きな目標や生活の再構築に関心を持ち、将来について考え始めている。 |
A(評価) | 悲嘆を適応的に受け入れる準備が整いつつあり、サポートを通じて回復し、前向きな変化を遂げる可能性が高い状態である。 |
P(計画) | 悲嘆に対する感情を整理し、表現するための安全な環境を提供する(例:カウンセリング、グリーフサポートグループ)。 喪失のプロセスを肯定的に受け入れるため、心理教育を行い、悲嘆が自然な過程であることを理解してもらう。 趣味や社会的活動を提案し、新しい目標や生活の喜びを見つける支援を行う。 家族や友人と話し合い、思い出を共有することで悲しみを分かち合い、孤立感を軽減する。 リラクゼーション法(例:深呼吸、瞑想)やストレス管理法を指導し、心理的安定を保つ方法を提供する。 進捗を定期的に確認し、悲嘆の過程を支えながら、新しい生活への適応を促進するための支援計画を柔軟に調整する。 本人が希望する場合、喪失した大切な人への思いを記録や創作活動を通じて形に残すことを提案する。 |
類②-レジリエンス障害
コード:00210
- 定義
- 困難だと認識された状況、または変化している状況から、回復する力が低下した状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | レジリエンス障害 |
S(主観的情報) | 「一度つまずくと、どうしても立ち直れなくなる。」「何をしても状況が改善しないように思えて、やる気が出ない。」 |
O(客観的情報) | ストレスや困難な状況に直面した際、適応的な対処ができず、持続的な落ち込みや回避行動が見られる。 失敗や挫折からの回復が遅く、日常生活や対人関係に支障をきたしている。 自己評価が低下し、問題解決能力への信頼が失われている様子が観察される。 ストレスに伴う身体的症状(例:疲労感、睡眠障害)が見られる場合がある。 |
A(評価) | ストレスや困難に適応し、回復する力(レジリエンス)が低下しており、心理的健康や生活の質に悪影響を及ぼしている。この状態が続くと、さらなる心理的負担や社会的孤立につながる可能性がある。 |
P(計画) | レジリエンスを高めるため、ストレス管理スキル(例:リラクゼーション法、マインドフルネス)を指導し、心理的安定を促進する。 失敗や困難を乗り越えるための具体的な行動計画を作成し、小さな成功体験を積み重ねる支援を行う。 本人の強みや過去の成功体験を振り返り、自己効力感を高める方法を提案する。 支援的な社会的つながりを構築するため、家族や友人、コミュニティとの交流を促進する。 必要に応じて心理カウンセリングや認知行動療法(CBT)を提案し、否定的な思考パターンを前向きに変化させる支援を提供する。 規則正しい生活習慣や運動を推奨し、身体的健康を整えることで精神的な回復力をサポートする。 進捗を定期的に確認し、本人の努力を肯定的に評価しながら、支援計画を柔軟に調整する。 |
類②-レジリエンス障害リスク状態
コード:00211
- 定義
- 困難だと認識された状況、または変化している状況から、回復する力が低下しやすい状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | レジリエンス障害リスク状態 |
S(主観的情報) | 「大きな問題が起きたら、自分には乗り越えられる自信がない。」「失敗したらどうしていいか分からなくなる気がする。」 |
O(客観的情報) | ストレスや困難な状況に直面した際に対処するスキルや経験が不足している様子がある。 社会的サポートが不十分で、孤立しやすい環境にある。 自己効力感が低下しており、困難に直面した際の回復力が弱い可能性がある。 過去に失敗や挫折からの回復に時間がかかった経験があり、同じような状況への不安が観察される。 |
A(評価) | ストレスや困難な状況に対する適応力(レジリエンス)が弱く、困難に直面した際に心理的・社会的な悪影響が生じるリスクが高い状態である。 |
P(計画) | レジリエンスを高めるため、日常生活の中で小さな成功体験を積み重ねられる目標を設定する。 ストレス管理スキル(例:深呼吸、リラクゼーション、マインドフルネス)を教え、心理的安定を保つ方法を提供する。 社会的サポートを強化するため、家族や友人とのつながりを深め、信頼できる人々との交流を促進する。 問題解決スキル(例:タスクを分割して取り組む)を学ぶ機会を提供し、困難への対処力を養う。 心理カウンセリングや認知行動療法(CBT)を提案し、前向きな思考パターンを形成する支援を行う。 規則正しい生活習慣や運動を取り入れることで、身体的健康をサポートし、精神的回復力を向上させる。 進捗を定期的に確認し、本人の努力を評価しながら、支援計画を調整して適応力の向上を図る。 |
類②-レジリエンス促進準備状態
コード:00212
- 定義
- 困難だと認識された状況、または変化している状況から、回復する力のパターンが強化可能な状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | レジリエンス促進準備状態 |
S(主観的情報) | 「困難な状況でももっと冷静に対応できるようになりたい。」「何があっても乗り越えられる力をつけたいと思っている。」 |
O(客観的情報) | 自己効力感を高めようとする意欲があり、困難に対処する方法を学びたい姿勢が見られる。 ストレスや問題解決に向けた積極的な行動(例:相談、情報収集)が確認される。 社会的サポートを求める姿勢があり、家族や友人と連携しようとする行動が見られる。 新しいスキルや知識を学ぶ意欲を持ち、前向きに成長しようとする態度がある。 |
A(評価) | 困難に適応し、乗り越える力(レジリエンス)を高める準備が整っている状態であり、適切な支援や学習機会を提供することで、心理的・社会的な回復力をさらに強化できる。 |
P(計画) | レジリエンスを強化するため、具体的で現実的な目標を設定し、達成感を得られる機会を提供する。 ストレス管理スキル(例:リラクゼーション法、マインドフルネス)を指導し、困難な状況でも冷静に対応できる力を養う。 問題解決能力を向上させるため、小さな課題を分割して取り組む方法を一緒に計画する。 ポジティブな思考を育むため、認知行動療法(CBT)を活用し、前向きな考え方を形成する。 社会的つながりを強化するため、家族や友人、地域コミュニティと連携し、支援ネットワークを構築する。 新しい挑戦(例:趣味や学習活動)を提案し、自己成長を感じられる機会を増やす。 進捗を定期的に確認し、本人の努力を認めながら、計画を柔軟に調整し、さらなる適応力向上を支援する。 |
類②-希望促進準備状態
コード:00185
- 定義
- ポジティブな結果を達成するための、エネルギーの結集に必要な期待と要望のパターンが強化可能な状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 希望促進準備状態 |
S(主観的情報) | 「少し先のことを考えられるようになってきた」「またやってみたいことが出てきた」「前よりも気持ちが前向きになってきた気がする」 |
O(客観的情報) | 表情や口調に明るさがみられ、他者との会話にも積極的に参加している 体調の安定に伴い、日中の活動量が徐々に増加している これまで話題に出なかった「将来の計画」や「趣味・楽しみ」などについて話す場面が見られる 支援者との関係性が良好で、自己表現がスムーズになってきている 不安や落ち込みの言動が減少傾向 |
A(評価) | 心身の安定と周囲の支援により、希望を持ち、自分らしい生活を築こうとする意欲が高まっている状態 このタイミングで支援的関わりを深めることで、さらに前向きな行動変容や目標設定が期待できる |
P(計画) | 本人が大切にしている価値観や生きがいを確認し、それに沿った目標設定を支援する 小さな成功体験や楽しみを積み重ね、自信と希望を強化できるよう関わる 今後に向けてやってみたいことや夢について話す機会を意識的に設ける 希望を維持・拡大するために、家族や支援者とも連携して環境を整える 必要に応じて心理士やスピリチュアルケアの専門職とも連携し、継続的な心の支援を行う |
類②-セルフコンパッション不足
コード:00325
- 定義
- 失敗や限界や困難な状況において、自分に対する優しさや理解を欠き、広い人間社会とのつながりを認識し、自分の思考や感情に注意を向ける力が不十分な状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | セルフコンパッション不足 |
S(主観的情報) | 「自分はダメな人間だと思ってしまう」「他の人ならうまくやれるのに、自分は無理だ」「少し失敗すると、自分を責めて落ち込む」 |
O(客観的情報) | 自責的な発言が多く、失敗や困難を過度に否定的に受け止めている様子がある 表情は硬く、うつむきがちで、他者との視線が合いづらい 他者には気遣いがある一方で、自分に対して否定的・非寛容な姿勢が目立つ 自己肯定感が低く、達成したことに対しても評価ができていない 心理的ストレス反応(不眠、食欲低下、倦怠感など)がみられる |
A(評価) | 自己に対する思いやりの欠如により、ストレス耐性や心理的安定が損なわれている状態 セルフコンパッションの不足は、自己肯定感の低下やうつ傾向、健康行動の維持困難に影響する可能性がある |
P(計画) | 本人の感じている感情を否定せずに受け止め、共感的な態度で関わる 失敗や困難に直面した際の思考パターンを一緒に整理し、リフレーミング(見方の転換)を促す セルフコンパッション(自分への思いやり)の概念についてわかりやすく説明する 日々の小さな達成や努力を一緒に振り返り、ポジティブなフィードバックを行う 必要に応じて心理職と連携し、認知行動療法やマインドフルネスを活用した継続的支援を検討する |
類②-不安過剰
コード:00400
- 定義
- 脅威として認識された状況や出来事を、いつまでも心配しすぎる状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 不安過剰 |
S(主観的情報) | 「何か悪いことが起きるんじゃないかと、いつも心配してしまう。」「頭の中で不安がぐるぐる回って、落ち着かない。」 |
O(客観的情報) | 表情や態度に緊張感が見られ、落ち着きがない様子。 睡眠障害(例:入眠困難、夜中に目が覚める)が観察され、不安が影響している可能性がある。 集中力が低下し、簡単な作業にもミスが増える傾向がある。 心拍数の上昇や発汗など、不安に伴う身体的症状が認められる。 |
A(評価) | 心理的・身体的な症状として不安が強く現れており、日常生活や社会的機能に影響を及ぼしている状態である。適切な支援を通じて、不安感を軽減し、心理的安定を図る必要がある。 |
P(計画) | 不安の原因を明確化するため、本人と話し合い、具体的なトリガー(引き金)を特定する。 リラクゼーション法(例:深呼吸、瞑想、ヨガ)を指導し、不安感を軽減するためのスキルを習得させる。 日常生活の中で、安心感を得られる活動(例:運動、趣味)を提案し、リフレッシュする時間を確保する。 不安が続く場合には、認知行動療法(CBT)やマインドフルネスを活用し、否定的な思考パターンを見直す支援を行う。 必要に応じて精神科医と連携し、薬物療法(例:抗不安薬、抗うつ薬)を検討する。 家族や友人に不安についての理解を深めてもらい、本人を支える環境を整える。 不安の程度や影響を定期的に評価し、支援計画を柔軟に見直す。 |
類②-死の不安過剰
コード:00399
- 定義
- 自分の死や他者の死を予期することで、圧倒的な精神的苦痛と不安感が起こる状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 死の不安過剰 |
S(主観的情報) | 「死ぬことを考えると怖くて仕方がない。」「いつか自分もいなくなると思うと、不安で夜も眠れない。」 |
O(客観的情報) | 死や死後に関連する話題を避けたり、過度に反応したりする傾向が見られる。 不安の影響で睡眠障害(例:入眠困難、早朝覚醒)が観察される。 集中力の低下や日常生活への関心の減少が確認される。 心拍数の上昇や発汗など、不安に伴う身体的症状が見られる。 |
A(評価) | 死に対する強い不安感が日常生活や心理的安定に影響を及ぼしている。この状態が続くと、さらに生活の質や精神的健康が損なわれるリスクが高い。 |
P(計画) | 死に対する不安のトリガー(引き金)や背景を明確化し、不安の具体的な原因を特定する。 リラクゼーション法(例:深呼吸、瞑想、筋弛緩法)を指導し、死への不安感を和らげるスキルを提供する。 認知行動療法(CBT)を取り入れ、不安を引き起こす思考パターンを認識し、現実的かつ肯定的な考え方を形成する支援を行う。 死について安心して話せる環境を提供し、感情を共有しながら、不安を少しずつ整理する。 スピリチュアルケア(例:宗教的信念や価値観を重視する)や意味を見出す活動を提案し、死に対する恐怖を和らげる。 必要に応じて精神科医と連携し、不安症状に対する薬物療法を検討する。 家族や支援者と連携し、患者が孤立感を感じず、不安を共有できる環境を整える。 |
類②-恐怖過剰
コード:00390
- 定義
- 差し迫る脅威を察知することでかき立てられる、過度で激しい感情反応
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 恐怖過剰 |
S(主観的情報) | 「怖くて体が動かない。」「何が起きるのか分からなくて、心臓がバクバクする。」 |
O(客観的情報) | 特定の状況や物事に対して過剰な反応を示し、回避行動を取る様子が観察される。 心拍数や呼吸の増加、発汗、震えなど、恐怖に伴う身体的症状が見られる。 冷静な判断や行動ができず、感情が高ぶりやすい。 日常生活に支障をきたすほどの強い恐怖心が続いている場合がある。 |
A(評価) | 特定の状況や物事に対する恐怖が心理的および身体的な反応を引き起こしており、生活の質に悪影響を及ぼしている。この状態が長期化すると、社会的孤立や健康問題に発展する可能性がある。 |
P(計画) | 恐怖のトリガー(引き金)を特定し、状況や物事に対する理解を深めるための話し合いを行う。 リラクゼーション法(例:深呼吸、筋弛緩法)を指導し、恐怖に直面した際の身体的反応を軽減するスキルを習得する。 段階的暴露療法を提案し、少しずつ恐怖の対象に慣れる機会を作る。 認知行動療法(CBT)を通じて、恐怖を引き起こす思考パターンを認識し、現実的で肯定的な考え方を形成する。 必要に応じて、精神科医と連携し、強い恐怖反応に対する薬物療法(例:抗不安薬)の使用を検討する。 恐怖を共有できる安全な環境を提供し、家族や友人のサポートを得られるようにする。 進捗を定期的に評価し、恐怖の程度や日常生活への影響をモニタリングしながら、支援計画を調整する。 |
類③-自律神経過反射リスク状態
コード:00010
- 定義
- 第6胸髄(T6)、またはそれより上部の胸髄に、損傷や病変を有する人の脊髄性ショック後に、生命を脅かす交感神経系の制御されない反応が起きやすい状態(第7(T7)と第8胸髄(T8)損傷の患者で確認されている)
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 自律神経過反射リスク状態 |
S(主観的情報) | 「お腹が張っていても気づきにくいことがある。」「前に突然血圧が上がって大変だったことがあって、不安がある。」 |
O(客観的情報) | 脊髄損傷(特にT6以上)の既往歴があり、過去に自律神経過反射を起こした経験がある。 膀胱や腸の管理が不十分であり、尿の貯留や便秘などの誘因が発生するリスクが高い。 緊張性や摩擦による皮膚刺激、衣類の締め付けなどが見られる場合がある。 医療や日常ケアにおいて、自律神経過反射の予防策についての知識が不足している。 |
A(評価) | 脊髄損傷に伴い、自律神経過反射を引き起こす要因(例:膀胱過伸展、便秘、皮膚刺激)が存在するため、発症リスクが高い状態にある。この状態を放置すると、重篤な高血圧や合併症(例:脳出血)のリスクが増加する。 |
P(計画) | 膀胱や腸の管理を徹底し、定期的な導尿や適切な排便ケアを実施する。 締め付けのない衣類を選び、皮膚の摩擦や圧迫を避けるよう指導する。 自律神経過反射の兆候(例:急激な頭痛、発汗、顔面紅潮)が現れた際の対応方法を患者および家族に教育する。 血圧の変化を定期的にモニタリングし、リスク要因が早期に発見されるよう支援する。 定期的に医療チームのフォローアップを受け、予防策の実施状況や体調の変化を確認する。 日常生活でストレスを軽減するため、リラクゼーション法(例:深呼吸、瞑想)を取り入れるよう提案する。 予防計画を定期的に見直し、患者の状態や生活状況に応じて支援内容を調整する。 |
類③-感情調整不良
コード:00372
- 定義
- 心の動きを制御できず、それが思考や行動、対人関係に影響し、社会的な場面で不適切な反応や表現につながっている状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 感情調整不良 |
S(主観的情報) | 「急にイライラしたり、泣きたくなったりする」「自分の感情がコントロールできなくてつらい」「落ち着こうとしてもどうしていいかわからない」 |
O(客観的情報) | 感情表出が激しく、状況にそぐわない怒り・不安・涙などがみられる 対人関係において衝動的な言動があり、関係性の緊張や孤立が生じている 発語が早口・大声になる場面や、黙り込むなど極端な反応が交互にみられる ストレス状況において、呼吸の乱れ・不眠・食欲不振といった身体症状が出現 感情の波が激しく、日常生活や治療への影響がある |
A(評価) | 感情の起伏が激しく、自己調整が困難な状態にあり、心理的・身体的健康や人間関係、治療継続に影響を与えている ストレス対処力や自己理解の支援、安心できる対話環境の提供が必要と考えられる |
P(計画) | 感情の動きやトリガーとなる状況を一緒に整理し、感情のパターンに気づけるよう支援する 感情が高ぶったときの対処法(呼吸法、マインドフルネス、安全な場所に移るなど)を提案する 日々の気分や感情の変化を記録する「感情日記」などを用いて自己理解を促す 本人の話を否定せずに受け止める傾聴を行い、安心できる関係性を築く 必要に応じて心理士・精神科医と連携し、継続的な心理的支援や治療を導入する |
類③-気分調整障害
コード:00241
- 定義
- 気分や情動の変動を特徴とする、感情的、認知的、身体的、生理的、行動的なさまざまな症状が見られる精神状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 気分調整障害 |
S(主観的情報) | 「気分がずっと沈んでいて、何をやっても楽しく感じられない。」「イライラすることが多くて、自分でもコントロールできない気がする。」 |
O(客観的情報) | 長期間にわたって、気分の低下やイライラが継続しており、日常生活や対人関係に影響を与えている。 情緒不安定な状態が頻繁に見られ、ストレスに対して過剰に反応する傾向がある。 活動量の減少や集中力の低下、睡眠障害が観察される。 身体症状(例:倦怠感、食欲の変化)が見られる場合がある。 |
A(評価) | 気分調整障害の状態が確認され、心理的および身体的な負担が日常生活に影響を及ぼしている。感情のコントロールが難しい状況が継続しているため、支援が必要である。 |
P(計画) | 気分の低下や情緒不安定の背景にある要因(例:ストレス、身体的疾患)を明確化するため、専門家による評価を提案する。 リラクゼーション法(例:深呼吸、マインドフルネス)やストレス管理スキルを指導し、感情をコントロールする力を高める。 認知行動療法(CBT)を活用し、気分の変動を引き起こす思考パターンを整理し、適応的な考え方を学ぶ機会を提供する。 身体的症状がある場合には、医師の診察を受け、必要な治療を受けるよう勧める。 日常生活でのポジティブな経験(例:趣味、運動)を増やすための計画を立て、活動量を少しずつ増やす。 必要に応じて、精神科医と連携し、気分調整をサポートするための薬物療法を検討する。 家族や友人に本人の状態を理解してもらい、支援や励ましが得られる環境を整える。 気分の変動をモニタリングし、進捗を定期的に評価して、支援計画を調整する。 |
類③-急性薬物離脱シンドローム
コード:00258
- 定義
- 中毒性のある物質を突然やめた後に、重篤で多因子的な続発症が起きている状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 急性薬物離脱シンドローム |
S(主観的情報) | 「体が震えるし、気持ちも落ち着かない。」「薬やお酒をやめたら、こんなにつらくなるなんて思わなかった。」 |
O(客観的情報) | 特定の物質(例:アルコール、薬物、ニコチン)を中断または減量した後、身体的・心理的な離脱症状が確認される。 身体症状(例:発汗、震え、吐き気、頭痛)や心理症状(例:不安、興奮、集中力低下)が観察される。 状況によっては重篤な症状(例:けいれん、錯乱、幻覚)が発生するリスクがある。 日常生活への影響が顕著で、通常の活動が困難な状態にある。 |
A(評価) | 物質依存からの急性離脱により、身体的・心理的な症状が現れている状態。このまま放置すると、重篤な健康障害や再使用のリスクが高まる可能性がある。 |
P(計画) | 緊急性が高い場合は、医療機関での迅速な評価と治療を推奨する。必要に応じて入院治療を提案する。 離脱症状を緩和するため、医師と連携して適切な薬物療法(例:ベンゾジアゼピン、補助薬)を導入する。 水分補給や栄養サポートを行い、身体の回復を促進する。 患者が孤立しないよう、家族や支援者に状況を共有し、サポート体制を整える。 心理的サポートを提供し、不安やストレスを軽減するためのカウンセリングやリラクゼーション法を導入する。 回復期の支援として、依存症治療プログラムやリハビリテーション施設への参加を提案する。 離脱症状が改善した後も、再使用のリスクを防ぐための長期的な計画を立てる(例:自助グループへの参加、トリガーの回避)。 症状の進行や改善をモニタリングし、支援計画を適宜調整する。 |
類③-急性薬物離脱シンドロームリスク状態
コード:00259
- 定義
- 中毒性のある物質を突然やめた後に、重篤で多因子的な続発症が起きやすい状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 急性薬物離脱シンドロームリスク状態 |
S(主観的情報) | 「薬をやめたいけど、どうなるのかが不安。」「以前にお酒を減らしたとき、すごくつらい思いをした。」 |
O(客観的情報) | 特定の物質(例:アルコール、薬物、ニコチン)の長期使用歴があり、使用の中断や減量を検討している。 離脱症状が過去に発生した経験がある、または現在使用量が高く、離脱症状が出るリスクが高い。 不安や落ち着きのなさが観察され、中断に対する恐怖心が強い。 医師や専門家の支援なしに物質使用を中止しようとする意図が確認される場合がある。 |
A(評価) | 長期使用している物質の中断または減量により、急性離脱シンドロームが発生するリスクが高い状態にある。このリスクが進行すると、重篤な離脱症状や再使用の可能性が懸念される。 |
P(計画) | 離脱の可能性とそのリスクについて十分な説明を行い、安全な中断計画を立てるため、医師や依存症専門家への相談を促す。 離脱症状を管理するための計画(例:段階的な減量、適切な薬物療法の使用)を医療機関と連携して作成する。 離脱中の身体的・心理的サポートを提供するため、家族や支援者との協力体制を構築する。 リラクゼーション法やストレス管理スキルを指導し、離脱中の不安や身体症状を軽減する方法を提供する。 依存症のトリガー(例:ストレス、不安)を特定し、それを回避するための環境整備を支援する。 回復期の長期的な支援として、自助グループやカウンセリングの利用を提案し、再使用のリスクを軽減する。 離脱プロセス中および後の身体的・心理的状態をモニタリングし、必要に応じて計画を調整する。 |
NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例まとめ

当サイトでは、今回ご紹介した領域の他にも、NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例を多数まとめています。
ぜひ、日々の業務のご活用ください!
看護記録(SOAP)の記載例
看護計画の記載例
引用・参考文献
T. ヘザー・ハードマン 編,上鶴 重美 訳:NANDA-I看護診断 定義と分類 2020-2023.医学書院.