この記事では、NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)の記載例を公開しています。
今回は領域3「排泄と交換」です。
看護記録の書き方が分からない…と悩んでいる看護実習生、新人の方々はぜひ参考にしてみてください!

看護記録(SOAP)の書き方に関しては、コチラの記事(【完全保存版】看護記録「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応】)を参考にしてください!
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【完全保存版】看護記録「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応】
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他の領域の記載例を知りたい!という人は、この記事最後にまとめているので見てみてね!
*ご紹介しているのはあくまでも記載例ですので、実際は担当する患者にあわせて修正してご使用ください。
*できるだけ多くの患者に適応できるよう、あえて抽象的な内容を含めている部分がございます。こちらもご活用いただく際はご注意ください。
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【NANDA-I看護診断】領域3「排泄と交換」の看護計画の記載例まとめ【コピペ可】
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NANDA-I領域3「排泄と交換」の一覧

NANDA-I領域3「排泄と交換」は、類①〜④に分けられます。
それぞれの診断名一覧は以下の通りです。
- 類① 排尿機能
- ・排尿障害
・尿閉リスク状態
・機能障害性尿失禁
・混合性尿失禁
・腹圧性尿失禁
・切迫性尿失禁
・切迫性尿失禁リスク状態
- 類② 消化管機能
- ・胃腸運動障害
・胃腸運動障害リスク状態
・排便障害
・排便リスク状態
・慢性機能性便秘
・慢性機能性便秘リスク状態
・排便抑制障害
・排便抑制障害リスク状態
- 類③ 外皮機能
- 本類には現在該当する看護診断なし
- 類④ 呼吸機能
- ・ガス交換障害
類①-排尿障害
コード:00016
- 定義
- 膀胱に溜まった水分や老廃物を、尿道から効果的に排出できない状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 排尿障害 |
S(主観的情報) | 「トイレに行ってもすっきり出ない感じがする。」「何度もトイレに行くけど、少しずつしか出なくてつらい。」 |
O(客観的情報) | 1回の排尿量が少なく、頻回にトイレに行く様子が見られる。 下腹部に膨満感があり、触診で膀胱の充満が確認される。 尿流が細く、排尿に時間がかかっている。 残尿量の測定で、50mL以上の残尿が認められる。 |
A(評価) | 排尿困難と残尿感が見られ、尿の流れが悪いことから、排尿障害が疑われる。膀胱や尿道の機能低下、もしくは前立腺肥大などの要因によって、尿が十分に排出されていない可能性がある。 |
P(計画) | 排尿時に下腹部を軽く押す「腹圧排尿法」を試みるよう指導し、排尿を補助する。 必要に応じて、医師と相談し、膀胱機能や尿道の状態を確認するための検査(超音波検査など)を依頼する。 残尿量が多い場合、カテーテルを用いた一時的な導尿を検討し、膀胱の過度な充満を防ぐ。 水分摂取のタイミングを調整し、夜間頻尿や過剰な膀胱充満を避ける。 膀胱訓練を行い、排尿リズムの改善を図る。また、尿路感染症予防のため、排尿後のケアや衛生管理についても指導する。 |
類①-尿閉リスク状態
コード:00322
- 定義
- 膀胱を完全に空にすることが困難になりやすい状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 尿閉リスク状態 |
S(主観的情報) | 「トイレに行っても尿が出にくい感じがすることが増えた。」「少しずつしか出なくて、すっきりしない。」 |
O(客観的情報) | 尿流が弱く、排尿に時間がかかる。 1回の排尿量が少なく、残尿感があると本人が訴えている。 前立腺肥大の既往があり、現在も経過観察中。 水分摂取量は十分であるが、下腹部に軽度の膨満感が確認される。 |
A(評価) | 前立腺肥大および尿流の弱さが見られ、今後尿閉が起こるリスクが高い状態にある。排尿がさらに困難になる可能性があり、早期の対応と予防が必要と考えられる。 |
P(計画) | 排尿をスムーズに行えるよう、排尿時にリラックスした姿勢を取ることや、腹圧をかけずに排尿を促すよう指導する。 排尿を促すために温かいタオルで下腹部を温める方法や、規則的なトイレ習慣を身につけるよう助言する。 前立腺肥大に伴う症状が悪化している場合は、医師と相談し、適切な治療(薬物療法など)を検討する。 残尿量や排尿の状態を定期的に観察し、異常があれば早期に医師へ報告する。 排尿が困難で尿意があるにもかかわらず排出できない場合には、緊急対応が必要であるため、その際の対応方法をあらかじめ説明する。 |
類①-機能障害性尿失禁

コード:00297
- 定義
- 身体的または認知的な障害により、尿意を感じてもトイレにたどり着けず、意図しない尿漏れが避けられない状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 機能障害性尿失禁 |
S(主観的情報) | 「トイレに行きたいと感じても、間に合わないことがある。」「足が弱くなってきて、急いで移動するのが難しい。」 |
O(客観的情報) | 歩行が不安定で、移動に時間がかかる。 トイレまでの距離があり、間に合わず失禁する場面が観察される。 バイタルサインは安定しているが、下肢筋力の低下が見られる。 認知機能は保たれているが、反応速度の低下により、トイレの間に合わない場合がある。 |
A(評価) | 移動能力の低下や反応の遅れにより、尿意を感じてもトイレに間に合わず失禁する機能障害性尿失禁が見られる。環境調整や移動支援を通じて、失禁予防が必要である。 |
P(計画) | トイレへの移動を安全かつ迅速に行えるよう、動線上の障害物を取り除き、手すりを設置するなど環境整備を行う。 一定の時間ごとにトイレに行く「定時排尿」を取り入れ、失禁のリスクを軽減する。 下肢筋力を強化するため、理学療法士と連携し、歩行訓練や筋力トレーニングを実施する。 ポータブルトイレや尿器の使用も検討し、トイレに間に合わない際の対応策を準備する。 失禁があった場合のケアを家族や本人に指導し、皮膚の清潔と健康維持に努める。 |
類①-混合性尿失禁
コード:00310
- 定義
- 切迫した尿意と一緒かそれに続く、意図しない尿もれ。腹腔内圧が上昇する活動に伴うこともある
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 混合性尿失禁 |
S(主観的情報) | 「咳やくしゃみをすると尿が漏れることがあるけど、急に強い尿意が来て間に合わないこともある。」 |
O(客観的情報) | 咳やくしゃみなどの腹圧がかかった際に失禁する様子が見られる。 トイレまでの移動中に強い尿意を感じて、間に合わず失禁することがある。 尿意を感じた後すぐに排尿が必要となるが、移動に時間がかかる。 骨盤底筋群の筋力低下があり、腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁が同時に認められる。 |
A(評価) | 腹圧がかかった際の尿漏れと、急な尿意に伴う失禁が混在する混合性尿失禁が見られる。骨盤底筋の弱さと反応の遅れが要因となっており、複数のアプローチによる管理が必要である。 |
P(計画) | 骨盤底筋群を強化するため、ケーゲル体操を指導し、筋力を高めて尿失禁を軽減する。 切迫性尿失禁に対応するため、排尿間隔を徐々に延ばす「膀胱訓練」を行い、排尿コントロールを改善する。 腹圧をかけずに排尿できるよう、排尿時の姿勢や呼吸法について指導する。 失禁時の皮膚のケアを行い、皮膚トラブルを予防するための清潔保持方法を説明する。 状況に応じて尿吸収パッドや防水シーツを使用し、失禁がある場合でも快適に過ごせるよう支援する。 |
類①-腹圧性尿失禁
コード:00017
- 定義
- 腹腔内圧が上昇する活動に伴う意図しない尿漏れ。尿意切迫感との関連性はない
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 腹圧性尿失禁 |
S(主観的情報) | 「咳やくしゃみをするときや、重い物を持ち上げたときに尿が漏れてしまうことがある。」 「運動をするときも尿漏れが気になって、思い切り動けない。」 |
O(客観的情報) | 咳やくしゃみなど、腹圧がかかる場面で尿漏れが観察される。 骨盤底筋群の筋力低下が確認されている。 日常生活において、立ち上がりや階段昇降などでも軽度の尿漏れが見られることがある。 |
A(評価) | 腹圧がかかる場面での尿漏れが繰り返し見られるため、腹圧性尿失禁が疑われる。骨盤底筋の筋力低下が主な原因と考えられ、筋力強化による対応が必要である。 |
P(計画) | 骨盤底筋群を鍛えるため、ケーゲル体操を指導し、日常的に取り組めるようサポートする。 排尿時以外に骨盤底筋を意識して締める練習を行い、反射的な尿漏れを予防する。 日常生活で腹圧がかかりにくい動作方法を指導し、重い物を持つ際や立ち上がる際には注意を促す。 必要に応じて尿吸収パッドの使用を提案し、尿漏れによる不安を軽減する。 骨盤底筋群の強化が困難な場合は、理学療法士と連携し、トレーニングを補助する方法を検討する。 |
類①-切迫性尿失禁
コード:00019
- 定義
- 突然の強い排尿欲求に伴う意図しない尿漏れ
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 切迫性尿失禁 |
S(主観的情報) | 「急に強い尿意がきて、トイレに間に合わないことがある。」「トイレが近くにないと不安になる。」 |
O(客観的情報) | 強い尿意が出現した際に、トイレまで間に合わず失禁する様子が観察される。 1日の排尿回数が10回以上で、頻尿傾向がある。 尿検査では感染症やその他の異常は認められない。 下腹部の緊張が見られ、突然の尿意に対して抑制が難しい様子。 |
A(評価) | 膀胱の過敏反応による切迫性尿失禁が見られる。急な強い尿意によりトイレに間に合わないケースが多く、生活の質の低下につながっている。膀胱の過敏性を抑え、排尿コントロールを改善することが求められる。 |
P(計画) | 膀胱訓練を行い、排尿間隔を徐々に延ばすことで尿意をコントロールできるようにする。 カフェインやアルコールなど、膀胱を刺激する飲料の摂取を控えるよう指導する。 急な尿意を感じた際に深呼吸を行い、落ち着いて対応できるよう助言する。 骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操)を指導し、尿意の抑制に役立つよう筋力を強化する。 不安を軽減するため、尿吸収パッドや防水シーツの使用を提案し、外出時の安心感を高める。 |
類①-切迫性尿失禁リスク状態
コード:00022
- 定義
- 突然の強い排尿欲求に伴う意図しない尿漏れが起きやすい状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 切迫性尿失禁リスク状態 |
S(主観的情報) | 「最近、急にトイレに行きたくなることが多くなった気がする。」「トイレが近くにないと落ち着かない。」 |
O(客観的情報) | 1日の排尿回数が8〜10回とやや多く、特に水分摂取後に頻繁に尿意が生じている。 膀胱への刺激で尿意を我慢するのが難しい場面が増えているが、失禁はまだ確認されていない。 カフェイン飲料や刺激の強い食品を好む傾向があり、膀胱が過敏になるリスクがある。 下腹部に軽度の緊張が見られ、排尿が近づくと焦燥感が出ることがある。 |
A(評価) | 膀胱が刺激に対して過敏になり始めており、今後切迫性尿失禁が起こるリスクが高い状態である。膀胱の過敏性を抑え、尿意コントロールの改善が求められる。 |
P(計画) | 排尿間隔を意識し、トイレの回数を徐々に減らす膀胱訓練を行い、膀胱の過敏性を抑えるよう指導する。 カフェインやアルコールなど、膀胱を刺激する飲み物や食品の摂取を控えるよう助言する。 強い尿意を感じた際には深呼吸やリラックス法を試し、焦らずに対処できるよう支援する。 骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操)を取り入れ、尿意抑制のための筋力強化を図る。 尿意に対する不安がある場合、尿吸収パッドなどを使用し、安心して外出できるようサポートする。 |
類②-胃腸運動障害
コード:00423
- 定義
- 消化管の蠕動運動が亢進、減弱、無効、または欠如している状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 胃腸運動障害 |
S(主観的情報) | 「食後にお腹が張ったり、むかむかしたりすることが多い。」「便秘と下痢を繰り返していて、胃腸が落ち着かない感じがする。」 |
O(客観的情報) | 腹部に膨満感が見られ、触診で腸内ガスの滞留が確認される。 便秘と下痢を繰り返すパターンがあり、排便に不規則性が見られる。 腹部の聴診で腸蠕動音が不安定(強すぎたり弱すぎたり)していることが確認される。 食事内容やストレスが消化管の症状に影響している可能性があり、生活リズムが不規則。 |
A(評価) | 消化管の運動機能が不安定で、蠕動運動の過剰または低下によって便通や腹部症状に不調が見られる。食事やストレスなど生活習慣が影響し、症状が悪化している可能性があるため、消化管運動機能の安定化が必要である。 |
P(計画) | 食事を1日3回、少量ずつ規則的に取るよう指導し、消化管の負担を軽減する。 腸内環境を整えるため、食物繊維を適量摂取しつつ、発酵食品(ヨーグルト、納豆など)を取り入れるよう助言する。 ストレスの軽減を図るため、リラクゼーション法や適度な運動(ウォーキングなど)を取り入れるよう支援する。 消化管の蠕動を助ける薬剤やプロバイオティクスの使用について、症状が改善しない場合は医師と相談して検討する。 症状や排便パターンの変化を記録し、悪化が見られる場合は早めに受診するよう指導する。 |
類②-胃腸運動障害リスク状態
コード:00422
- 定義
- 消化管の蠕動運動が亢進、減弱、無効、または欠如しやすい状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 胃腸運動障害リスク状態 |
S(主観的情報) | 「最近お腹が張ることが多く、食後に胃が重く感じることが増えた。」「便通が不規則で、たまに下痢や便秘になる。」 |
O(客観的情報) | 食事が不規則で、早食いや食事量が多い日がある。 運動不足が見られ、1日の活動量が少ない。 ストレスが多く、睡眠の質が低下していることが確認される。 腹部に軽度の膨満感があり、腸蠕動音がやや不規則。 |
A(評価) | 不規則な食習慣や運動不足、ストレスの影響で消化管運動機能が不安定になりやすい状態にある。今後、消化管運動機能障害が発症し、便通異常や腹部不快感が悪化するリスクが高い。 |
P(計画) | 毎日決まった時間に食事を取るよう指導し、消化に負担をかけない規則正しい食習慣を促す。 1日30分以上の軽い運動(ウォーキングやストレッチなど)を取り入れ、消化管運動を活性化するよう助言する。 食事中はゆっくりよく噛むことを勧め、早食いを避けるようにする。 ストレス軽減のため、リラクゼーション法や睡眠の質改善に努めるよう支援する。 腹部症状や便通の変化を記録し、悪化が見られる場合は早めに医療機関を受診するよう指導する。 |
類②-排便障害
コード:00344
- 定義
- 直腸またはストーマからの便の正常な排出プロセスが変化した状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 排便障害 |
S(主観的情報) | 「何日も便が出ないことがある」「便意はあるけど出にくい」「お腹が張って苦しい感じがする」 |
O(客観的情報) | 3日以上排便がなく、腹部膨満感を訴えている 下腹部に軽度の圧痛と張りを認める 食事摂取量および水分摂取量が少なめ(1日800mL以下) 活動量が低下しており、日中の臥床時間が長い 下剤の自己調整による使用頻度の変動あり(1週間に2〜3回) |
A(評価) | 生活習慣や食事・水分・活動量の影響により、排便パターンが乱れており、慢性的な排便障害が疑われる 長期化することで腹部不快感やQOL低下、さらに腸閉塞などの合併症を引き起こす可能性があるため、早期の介入が必要 |
P(計画) | 排便パターン・便性・頻度の記録をつけてもらい、状況を可視化する 水分摂取を1日1500mLを目安に促し、便の軟化を図る 食物繊維を含む食事内容(野菜・果物・海藻類など)への改善を提案する 日中の活動量(短時間の歩行や体操など)を増やすよう支援する 下剤の使用については医師と連携し、適正使用を指導・調整する |
類②-排便障害リスク状態
コード:00346
- 定義
- 直腸またはストーマからの便の正常な排出プロセスが変化しやすい状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 排便障害リスク状態 |
S(主観的情報) | 「最近、便通が不規則になってきた」「お腹がすっきりしない日がある」「便意があってもトイレに行くのを我慢してしまうことがある」 |
O(客観的情報) | 排便回数が週に2〜3回と減少傾向 水分摂取量が1日800mL以下 食物繊維摂取が少なく、肉や加工食品中心の食事が多い 日中の活動量が少なく、ベッド上で過ごす時間が長い 排便時のいきみや不快感の訴えがときどき見られる |
A(評価) | 生活習慣や食事内容、活動量の低下など複数の要因により、今後排便障害(便秘や排便困難)を引き起こすリスクが高い 特に高齢者や長期臥床患者では、放置すると慢性化しやすく、早期の予防的対応が必要 |
P(計画) | 現在の排便状況を記録し、パターンや変化の有無を把握する 1日1500mLを目標に水分摂取を促す 野菜・果物・海藻類など、食物繊維を多く含む食品の摂取を勧める 日中の離床や散歩、体操など軽い活動を日課に取り入れるよう支援する 排便習慣(我慢しない、便意を逃さない)の重要性を説明し、適切な排便環境を整える |
類②-慢性機能性便秘
コード:00235
- 定義
- 低頻度または困難な排便が長時間にわたり続いている状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 慢性機能性便秘 |
S(主観的情報) | 「便が固くて出にくい感じが続いている。」「排便に時間がかかり、週に1~2回しかお通じがない。」 |
O(客観的情報) | 排便頻度が週に2回以下で、排便時に強くいきむ様子が観察される。 腹部に膨満感があり、触診で硬い便が滞留していることが確認される。 食事記録から、食物繊維と水分の摂取量が不足気味である。 長期間にわたり便秘が続いているが、過去の検査において器質的な腸の異常は認められていない。 |
A(評価) | 生活習慣や腸の機能低下が影響して、慢性的な機能性便秘が続いている状態である。長期にわたる便秘により、日常生活にも影響が出ているため、生活習慣の改善と排便の促進が必要である。 |
P(計画) | 食事に食物繊維(野菜、果物、全粒穀物など)を積極的に取り入れ、1日1.5〜2リットルの水分摂取を推奨する。 腸の動きを促進するために、毎日30分以上の軽い運動(ウォーキングなど)を取り入れるよう支援する。 毎朝同じ時間にトイレに行く習慣をつけ、排便リズムを整えるよう助言する。 必要に応じて医師と相談し、便軟化剤や緩下剤など、排便を促す薬剤の使用を検討する。 便秘に伴う腹部不快感やストレスがある場合、リラクゼーション法を取り入れ、不安軽減を図る。 |
類②-慢性機能性便秘リスク状態
コード:00236
- 定義
- 低頻度または困難な排便が長時間にわたり続きやすい状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 慢性機能性便秘リスク状態 |
S(主観的情報) | 「最近、お通じが少なくなってきた気がする。」「便意はあるけど、出にくく感じることが多い。」 |
O(客観的情報) | 排便頻度が週に3回程度で減少傾向が見られる。 食事に含まれる食物繊維が少なく、水分摂取量も1日1リットル未満で不足している。 運動量が少なく、座りっぱなしの時間が長い生活を送っている。 腹部は軽度の膨満感があり、触診で硬い便が感じられることがあるが、現在は排便に特別な痛みや異常はない。 |
A(評価) | 生活習慣における食物繊維や水分不足、運動不足により、慢性機能性便秘のリスクが高まっている状態である。便秘が今後悪化し、腹部不快感や排便困難が進行する可能性がある。 |
P(計画) | 毎日の食事に食物繊維を多く含む野菜や果物、全粒穀物を取り入れるよう指導し、食生活の改善を促す。 1日1.5〜2リットルの水分摂取を目標に、こまめな水分補給を習慣づけるよう助言する。 日常に軽い運動(ウォーキングなど)を取り入れるよう勧め、腸の動きを促進する。 毎朝決まった時間にトイレに行くなど、規則的な排便習慣をつけるよう支援する。 便秘症状が見られる場合は早めに医師と相談し、便秘の予防と管理に役立つサポートを行う。 |
類②-排便抑制障害
コード:00424
- 定義
- 肛門括約筋を制御できず、便やガスが無意識に排出される状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 排便抑制障害 |
S(主観的情報) | 「便意を我慢できないことがあり、外出中にトイレを探すのが不安になる。」「急にお腹が痛くなって、すぐにトイレに行かないと間に合わないことがある。」 |
O(客観的情報) | 急な便意を訴える場面が頻繁に見られ、トイレに間に合わないことがある。 1日の排便回数が3回以上で、排便時の便は軟らかいことが多い。 腹部に軽度の緊張が見られ、便意を感じた際に焦燥感が伴う。 食事内容に特定の刺激物(例:カフェイン、辛い食べ物)が含まれていることが多い。 |
A(評価) | 便意が強く、抑制が困難であるため、排便抑制障害が疑われる。便意に対する不安感が日常生活に影響を及ぼしており、心理的なサポートや生活習慣の調整が必要と考えられる。 |
P(計画) | 刺激物(カフェインや辛い食べ物)の摂取を控え、食事内容を見直して腸への刺激を減らすよう指導する。 急な便意が起きた際に落ち着いて対処できるよう、深呼吸やリラックス法を取り入れる。 排便回数や便性を観察し、日常的な排便パターンの把握を支援する。 便意に対する不安感を軽減するため、外出時にトイレの場所を事前に確認するなどの準備を助言する。 症状が改善しない場合は、医師と相談して腸の過敏性や機能の評価を行い、必要に応じて薬物療法を検討する。 |
類②-排便抑制障害リスク状態
コード:00345
- 定義
- 肛門括約筋を制御できず、便やガスが無意識に排出されやすい状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | 排便抑制障害リスク状態 |
S(主観的情報) | 「急にトイレに行きたくなることがある」「間に合わないんじゃないかと不安になる」「便意を感じてから我慢がきかないことがある」 |
O(客観的情報) | 排便のタイミングが不規則で、急な便意に焦る様子あり 骨盤底筋の筋力低下を示唆する発言や、高齢・経産婦の既往あり 下剤や腸管刺激薬を使用しており、便意のコントロールが困難になるリスクあり 整容や移動に時間がかかり、トイレまでの動作が遅延しやすい 軽度の認知機能低下(理解力・判断力の低下)を認める |
A(評価) | 加齢や身体機能・認知機能の変化、薬剤の影響などにより、今後排便抑制障害(便失禁)を引き起こすリスクが高い 羞恥心やQOLの低下につながるため、早期からの予防的な排泄支援と環境整備が重要 |
P(計画) | トイレ誘導のタイミングを決めて、定時排便を促すよう支援する 骨盤底筋体操などを取り入れ、排便抑制に関与する筋力維持を図る 下剤の使用状況を確認し、医師と連携して適正化を検討する トイレまでの動線を整理し、移動や更衣がスムーズに行えるよう環境調整を行う 排泄に関する不安や羞恥心に寄り添い、安心して相談できる関係を築く |
類③-本類には現在該当する看護診断なし
類④-ガス交換障害
コード:00030
- 定義
- 酸素化や二酸化炭素排出が、過剰または不足した状態
看護記録(SOAP)の記載例
看護診断 (看護問題) | ガス交換障害 |
S(主観的情報) | 「呼吸が浅くて、少し動くだけでも息切れがする。」「胸が苦しい感じが続いている。」 |
O(客観的情報) | SpO2が90%と低下しており、軽度のチアノーゼが口唇や指先に見られる。 呼吸数が1分間に24回と増加している。 聴診で両側肺底に湿性ラ音が確認される。 安静時でも呼吸困難の様子があり、顔色が蒼白。 |
A(評価) | ガス交換が障害され、酸素飽和度の低下や息切れが見られる状態にある。肺胞と毛細血管での酸素と二酸化炭素の交換が不十分であり、酸素供給の不足により全身への影響が懸念される。 |
P(計画) | 酸素投与を実施し、SpO2を95%以上に維持することを目標とする。 呼吸が楽になるよう、セミファウラー位またはファウラー位で安静を保つ。 呼吸を楽にするため、腹式呼吸や呼吸リハビリの方法を指導する。 血液ガス分析や胸部X線検査を医師と相談して依頼し、ガス交換障害の原因を明確にする。 頻回にバイタルサインとSpO2のモニタリングを行い、呼吸状態の悪化に早期に対応できるようにする。 |
NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例まとめ

当サイトでは、今回ご紹介した領域の他にも、NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例を多数まとめています。
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看護記録(SOAP)の記載例
看護計画の記載例
引用・参考文献
T. ヘザー・ハードマン 編,上鶴 重美 訳:NANDA-I看護診断 定義と分類 2020-2023.医学書院.