当サイトでは、看護学生や新人看護師のために、NANDA-Iの看護診断に基づく看護計画&看護記録の記載例・書き方を多数ご紹介しています。
今回は、NANDA-I領域4の看護診断「身体可動性障害」の患者の観察ポイントを解説してまいります。
感染リスク状態は、看護診断の中でも使用頻度が高く、しっかりと抑えておくべき診断の一つです。
記事の最後には、看護計画と看護記録(SOAP)の記載例を公開しており、すべてコピペ可です。
あくまでも一例であり、所属している病院や法人によって、書き方やルールは異なる場合も考えられますので、各自カスタマイズしてご活用ください。
身体可動性障害(NANDA-I領域4)とは
身体可動性障害とは、筋力低下、関節可動域の制限、または神経機能の問題によって、全身または一部の身体を自由に動かす能力が低下している状態を指します。
この状態では、日常生活動作(ADL)が制限され、自立性や生活の質(QOL)が低下する可能性があります。
看護師は、患者の可動性を促進し、日常生活での支障を最小限に抑えるための支援が求められます。
身体可動性障害(NANDA-I領域4)の原因
身体可動性障害(NANDA-I領域4)を引き起こす主な原因は以下の通りです。
身体的要因
- 筋力低下(例:廃用症候群、加齢)
- 関節疾患(例:関節リウマチ、変形性関節症)
- 神経系の障害(例:脳卒中、パーキンソン病)
- 骨折や外傷、術後の回復過程
心理的要因
- 動作時の痛みへの恐怖や不安
- 抑うつによる活動意欲の低下
環境的要因
- 不適切な住環境(例:狭い空間、段差)
- 補助具や介助者の不足
痛みや不快感
- 慢性疼痛(例:腰痛、膝痛)
- 筋肉や関節の炎症
その他の要因
- 長期間の安静や臥床による筋力低下
- 肥満や栄養不良による負担増加
身体可動性障害(NANDA-I領域4)の評価方法
身体可動性障害(NANDA-I領域4)を評価するには、患者の身体機能、心理状態、環境要因を総合的に観察します。
患者の訴えや主観的情報
- 「動かすと痛い」「力が入らない」などの訴えを聴取
- 動作中の不快感や疲労感を確認する
身体的観察
- 筋力、関節可動域、バランス能力を評価する
- 歩行や姿勢の異常を観察する
日常生活動作(ADL)の評価
- 食事、移動、更衣、排泄などの基本的なADLの遂行状況を確認する
- どの動作が特に困難かを特定する
環境の確認
- 自宅や病室の安全性(手すり、段差の有無)を評価する
- 必要な補助具や介助が適切に提供されているか確認する
心理的状態の評価
- 動作時の恐怖感や意欲の低下の有無を確認する
- 抑うつやストレスの程度を評価する
身体可動性障害(NANDA-I領域4)の治療方法
身体可動性障害(NANDA-I領域4)の治療は、可動性の改善、痛みの軽減、生活の質の向上を目指します。
環境の整備
- 住環境のバリアフリー化(手すりの設置、段差の解消)を提案する
- 床の滑り止めや適切な靴の使用を推奨する
身体的支援
- 筋力や関節可動域を改善するためのリハビリテーションを提供する
- 運動療法やストレッチを段階的に導入する
- 移動や日常生活動作を補助するための介助や補助具(杖、歩行器)を提供する
心理的支援
- 動作時の恐怖感を軽減するため、患者に自信を持たせるサポートを行う
- 活動への意欲を高めるため、ポジティブなフィードバックを行う
教育的支援
- 動作時の安全な方法や姿勢を指導する
- 家族や介護者に介助方法を説明し、適切な支援を促す
痛みの管理
- 必要に応じて鎮痛薬や抗炎症薬を使用する
- 温罨法や冷罨法を活用し、痛みや炎症を軽減する
身体可動性障害(NANDA-I領域4)の患者をケアする上で気をつけること
身体可動性障害(NANDA-I領域4)の患者をケアする際には、以下の点に注意する必要があります。
患者の安全を最優先する
転倒や怪我を防ぐため、移動や運動時は必ず見守りや補助を行う。
患者のペースに合わせる
無理な運動や動作を強制せず、患者の体力や状態に応じて進める。
小さな成功体験を重ねる
達成可能な目標を設定し、患者が自己効力感を得られるよう支援する。
心理的ケアを行う
動作時の不安や恐怖を軽減するため、患者の気持ちに寄り添う。
継続的なフォローアップ
患者の状態や生活環境の変化に応じてケア計画を調整する。
身体可動性障害(NANDA-I領域4)の看護計画を立案する上でのポイント
身体可動性障害(NANDA-I領域4)の看護計画(観察計画、援助計画、行動計画)は、以下のポイントに注意をして立案すると良いでしょう。
観察計画(O-P)の立案ポイント
患者の筋力、関節可動域、バランス能力を観察します。
また、動作中の痛みや不快感の有無を確認します。
援助計画(T-P)の立案ポイント
患者が安全に身体を動かせるよう支援します。
リハビリや運動療法を提供し、補助具や環境整備を行います。
教育計画(E-P)の立案ポイント
患者とその家族に安全な動作方法や補助具の使用方法を指導します。
環境整備や介助方法についても説明します。
身体可動性障害(NANDA-I領域4)の看護計画の記載例・書き方
看護診断 | #1 身体可動性障害 |
患者目標 | 長期目標:日常生活動作(ADL)を自立して行える。 短期目標:1週間以内に、介助を受けながら安全にベッドから椅子への移動ができる。 |
観察計画(O-P) | 筋力や関節可動域を評価し、記録する。 動作中の疼痛や疲労感の有無を確認する。 患者の歩行や姿勢の異常を観察する。 日常生活動作(ADL)の遂行状況を記録する。 環境の安全性(手すり、段差の有無)を確認する。 |
援助計画(T-P) | ベッド上での簡単なストレッチやリハビリ運動を指導する。 移動時に補助具(杖、歩行器)を使用するよう支援する。 転倒防止のため、手すりや滑り止めマットを設置する。 温罨法を使用して筋肉や関節の緊張を和らげる。 動作が難しい場合は部分的な介助を提供する。 疲労を軽減するため、動作を分けて段階的に行う。 家族に患者の移動介助方法を説明する。 リハビリ専門職と連携し、患者に適した運動プログラムを作成する。 患者の動作中に不安が見られる場合は励まし、サポートする。 活動後に患者の疲労感や体調を確認する。 |
教育計画(E-P) | 補助具の使用方法や安全な移動方法を指導する。 家族に患者の介助のポイントを説明し、負担を軽減する方法を提案する。 環境整備の重要性(手すりの設置、段差の解消)を説明する。 疲労を感じた際の休息方法を指導する。 筋力や関節可動域を維持するための簡単な運動を教える。 動作中に痛みがある場合の対処法を説明する。 定期的な運動や活動が健康維持に重要であることを伝える。 食事や栄養管理の重要性を説明し、体力向上を促す。 活動記録をつける方法を教え、進捗を評価する方法を共有する。 地域のリハビリサービスや訪問介護の利用を提案する。 |
看護計画作成におけるルールは、コチラの記事(【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】)を参考にしてください!
【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】
続きを見る
身体可動性障害(NANDA-I領域4)の看護記録(SOAP)の記載例・書き方
看護診断 (看護問題) | 身体可動性障害 |
S(主観的情報) | 「膝が痛くて動きづらいです。座った状態から立ち上がるのに時間がかかります。」 |
O(客観的情報) | 歩行時に膝をかばう姿勢が見られる。 筋力低下(下肢筋力:3/5)が観察される。 ベッドから椅子への移動に介助を要する。 |
A(評価) | 膝関節の可動域制限と筋力低下により、移動動作が困難な状態。補助具やリハビリによるサポートが必要。 |
P(計画) | 温罨法を使用し、膝関節の緊張を和らげる。 歩行器を使用し、安全に歩行できるよう支援する。 簡単なストレッチや筋力強化運動を毎日指導する。 ベッドサイドに手すりを設置し、移動を補助する。 家族に安全な移動介助の方法を説明する。 活動中に不安が見られる場合は声掛けを行い、安心感を与える。 リハビリ専門職と連携し、適切な運動プログラムを導入する。 活動中や後に疲労や痛みが見られた場合は速やかに計画を調整する。 患者の歩行能力を週1回評価し、進捗を記録する。 地域リハビリ施設や訪問介護サービスの利用を検討する。 |
看護記録(SOAP)作成におけるルールは、コチラの記事看護記録(【完全保存版】「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応)を参考にしてください!
【完全保存版】看護記録「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応】
続きを見る
NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例まとめ
当サイトでは、今回ご紹介した領域の他にも、NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例を多数まとめています。
ぜひ、日々の業務のご活用ください!
看護記録(SOAP)の記載例
看護計画の記載例
引用・参考文献
T. ヘザー・ハードマン 編,上鶴 重美 訳:NANDA-I看護診断 定義と分類 2020-2023.医学書院.