当サイトでは、看護学生や新人看護師のために、NANDA-Iの看護診断に基づく看護計画&看護記録の記載例・書き方を多数ご紹介しています。
今回は、NANDA-I領域4の看護診断「摂食セルフケア不足」の患者の観察ポイントを解説してまいります。
感染リスク状態は、看護診断の中でも使用頻度が高く、しっかりと抑えておくべき診断の一つです。
記事の最後には、看護計画と看護記録(SOAP)の記載例を公開しており、すべてコピペ可です。
あくまでも一例であり、所属している病院や法人によって、書き方やルールは異なる場合も考えられますので、各自カスタマイズしてご活用ください。
摂食セルフケア不足(NANDA-I領域4)とは
摂食セルフケア不足とは、身体的、認知的、または環境的な要因により、患者が自力で食事を摂取することが困難な状態を指します。
この状態では、栄養摂取が不十分になる可能性があり、患者の健康維持や回復に悪影響を及ぼします。
看護師は、患者の能力や環境に応じた支援を行い、適切な栄養摂取を促すことが求められます。
摂食セルフケア不足(NANDA-I領域4)の原因
摂食セルフケア不足(NANDA-I領域4)を引き起こす主な原因は以下の通りです。
身体的要因
- 筋力低下や関節可動域の制限(例:脳卒中後の麻痺、リウマチ)
- 疼痛や疲労(例:術後、慢性疾患)
- 嚥下障害(例:神経変性疾患、脳梗塞)
- 視力低下や手の震え(例:パーキンソン病)
心理的要因
- 抑うつや不安による食欲低下
- 自信喪失や羞恥心
環境的要因
- 食事中の騒音や不適切な環境
- 食事を補助する介助者や補助具の不在
認知的要因
- 認知症や記憶障害による食事動作の手順の理解が困難
- 注意力や判断力の低下
その他の要因
- 経済的困難による十分な食品や補助具の不足
- 食事形態が患者の嚥下能力や咀嚼能力に合っていない
摂食セルフケア不足(NANDA-I領域4)の評価方法
摂食セルフケア不足(NANDA-I領域4)を評価するには、患者の摂食能力や栄養状態、環境要因を多角的に観察します。
患者の訴えや主観的情報
- 「箸やスプーンを使うのが難しい」「食べ物が飲み込めない」などの訴えを聴取する
身体的観察
- 筋力、手指の可動域、握力を評価する
- 嚥下能力や咀嚼能力を観察し、誤嚥の有無を確認する
栄養状態の確認
- 体重の減少や栄養不足の兆候(例:皮膚の乾燥、脱毛)を観察する
- 食事摂取量を記録し、必要摂取量との差を確認する
環境の確認
- 食事環境(椅子の高さ、照明、食器の配置)を評価する
- 食事中に介助者がいるか、補助具が使用されているかを確認する
心理的状態の評価
- 食事に対する意欲や不安、抵抗感を確認する
- 抑うつの兆候や食事に対する興味の有無を評価する
摂食セルフケア不足(NANDA-I領域4)の治療方法
摂食セルフケア不足(NANDA-I領域4)の治療は、患者が可能な限り自立して食事を摂取できるように支援することを目的とします。
環境の整備
- 安静な環境で食事を行えるように調整する
- 食事しやすい高さの椅子やテーブルを用意する
- 必要に応じて、食事介助者を配置する
身体的支援
- 握力が弱い場合は軽量で握りやすい食器や箸を導入する
- 嚥下障害がある場合はとろみ剤を使用し、誤嚥を防ぐ
- 疲労を軽減するため、食事時間を長めに設定する
心理的支援
- 自分で食事を摂る楽しさや満足感を感じられるように支援する
- 抑うつや不安がある場合は、心理的な安心感を与える
教育的支援
- 食事動作を補助する技術や器具の使い方を指導する
- 家族や介護者に、患者の食事介助の方法を説明する
代替ケアの提供
- 食事形態(刻み食、ミキサー食)を調整し、患者に合ったものを提供する
- 必要に応じて経腸栄養や補助食品を使用する
摂食セルフケア不足(NANDA-I領域4)の患者をケアする上で気をつけること
摂食セルフケア不足(NANDA-I領域4)の患者をケアする際には、以下の点に注意する必要があります。
患者の尊厳を守る
自分で食べる意欲を尊重し、可能な範囲で自立を促す。
誤嚥や窒息を防ぐ
患者の嚥下能力を評価し、適切な食事形態を提供する。
無理のないペースで支援する
患者が疲れないよう、ペースに合わせた食事介助を行う。
心理的ケアを行う
食事に対する不安や羞恥心を軽減するため、共感的に対応する。
継続的なフォローアップ
食事状況や身体機能を定期的に評価し、必要に応じて計画を見直す。
摂食セルフケア不足(NANDA-I領域4)の看護計画を立案する上でのポイント
摂食セルフケア不足(NANDA-I領域4)の看護計画(観察計画、援助計画、行動計画)は、以下のポイントに注意をして立案すると良いでしょう。
観察計画(O-P)の立案ポイント
患者の摂食能力や栄養状態、食事環境を観察します。
また、食事中の患者の行動や反応を確認します。
援助計画(T-P)の立案ポイント
患者が自力で安全に食事を摂取できるよう支援します。
必要に応じて補助具を使用し、栄養摂取を確保します。
教育計画(E-P)の立案ポイント
患者とその家族に、適切な食事介助や補助具の使い方を指導します。
栄養管理の重要性を説明します。
摂食セルフケア不足(NANDA-I領域4)の看護計画の記載例・書き方
看護診断 | #1 摂食セルフケア不足 |
患者目標 | 長期目標:自力で安全に食事を摂取し、栄養状態を維持できる。 短期目標:1週間以内に、補助具を使用して食事の半分を自力で摂取できる。 |
観察計画(O-P) | 摂食時の患者の筋力や可動域を観察する。 嚥下時のむせや咳込みの有無を確認する。 食事摂取量を記録し、必要摂取量との差を評価する。 食事環境の安全性や快適さを確認する。 食事中の患者の心理的反応(意欲、不安)を観察する。 |
援助計画(T-P) | 握りやすい箸やスプーンなどの補助具を提供する。 嚥下が安全に行えるよう、食事形態を調整する。 食事中に疲れた場合は適宜休憩を促す。 患者が自力で食べやすい環境を整える(食器の配置や高さの調整)。 食事中に患者を見守り、必要に応じて介助する。 食事の進み具合に応じて励まし、患者の意欲を引き出す。 家族に患者の摂食を補助する方法を指導する。 誤嚥の兆候が見られた場合は医師に報告し、計画を見直す。 食事後の口腔ケアを実施し、衛生状態を保つ。 栄養士と連携し、患者に適した栄養計画を作成する。 |
教育計画(E-P) | 家族に補助具の使用方法を説明する。 嚥下が困難な場合の対処法(とろみ剤の使用)を指導する。 栄養バランスの取れた食事内容を提案する。 食事中の姿勢(背筋を伸ばす)の重要性を説明する。 栄養管理の重要性を家族と共有し、協力を得る。 食事中の誤嚥や窒息のサインを教え、対応方法を指導する。 患者に食事記録をつける習慣を促し、進捗を評価する方法を説明する。 食事に対する抵抗感を軽減するため、楽しい雰囲気作りを提案する。 必要に応じて訪問看護サービスや地域資源の活用を提案する。 食事介助における家族の負担を軽減する方法を話し合う。 |
看護計画作成におけるルールは、コチラの記事(【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】)を参考にしてください!
【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】
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摂食セルフケア不足(NANDA-I領域4)の看護記録(SOAP)の記載例・書き方
看護診断 (看護問題) | 摂食セルフケア不足 |
S(主観的情報) | 「スプーンを持つのが難しくて、食べこぼしてしまいます。」 |
O(客観的情報) | スプーンの使用に手間取り、食事の摂取速度が遅い。 嚥下時にむせる場面が見られる。 食事摂取量が1食あたり50%未満。 |
A(評価) | 握力低下と嚥下障害が原因で、自力での摂食が困難な状態。補助具や介助を利用しながら栄養摂取の改善が必要。 |
P(計画) | 軽量で握りやすい補助具を提供する。 とろみ剤を使用して嚥下の安全性を確保する。 食事中に介助を行い、食事の進行を見守る。 食事中にむせる場合は医師に報告し、嚥下機能の評価を依頼する。 栄養士と連携し、嚥下しやすい食事形態を提案する。 家族に適切な食事介助方法を指導する。 栄養状態を評価するため、体重と摂取量を記録する。 食事後に口腔ケアを行い、誤嚥性肺炎を予防する。 食事中の疲労を軽減するため、休憩を適宜促す。 食事中の安全性を確保するため、適切な座位を維持するよう調整する。 |
看護記録(SOAP)作成におけるルールは、コチラの記事看護記録(【完全保存版】「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応)を参考にしてください!
【完全保存版】看護記録「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応】
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NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例まとめ
当サイトでは、今回ご紹介した領域の他にも、NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例を多数まとめています。
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看護記録(SOAP)の記載例
看護計画の記載例
引用・参考文献
T. ヘザー・ハードマン 編,上鶴 重美 訳:NANDA-I看護診断 定義と分類 2020-2023.医学書院.