当サイトでは、看護学生や新人看護師のために、NANDA-Iの看護診断に基づく看護計画&看護記録の記載例・書き方を多数ご紹介しています。
今回は、NANDA-I領域4の看護診断「入浴セルフケア不足」の患者の観察ポイントを解説してまいります。
感染リスク状態は、看護診断の中でも使用頻度が高く、しっかりと抑えておくべき診断の一つです。
記事の最後には、看護計画と看護記録(SOAP)の記載例を公開しており、すべてコピペ可です。
あくまでも一例であり、所属している病院や法人によって、書き方やルールは異なる場合も考えられますので、各自カスタマイズしてご活用ください。
入浴セルフケア不足(NANDA-I領域4)とは
入浴セルフケア不足とは、身体的・認知的・環境的な要因により、患者が自力で入浴を行うことができない状態を指します。
これにより、皮膚の清潔保持が困難になり、感染リスクや皮膚トラブルの増加、心理的な不快感や社会的疎外感につながる可能性があります。
看護師は、患者の自立を支援しながら、適切な清潔ケアを提供することが求められます。
入浴セルフケア不足(NANDA-I領域4)の原因
入浴セルフケア不足(NANDA-I領域4)を引き起こす主な原因は以下の通りです。
身体的要因
- 筋力低下や関節可動域の制限(例:加齢、関節リウマチ)
- 疼痛(例:骨折、手術後)
- 呼吸困難や疲労感(例:慢性心不全、COPD)
心理的要因
- 入浴への抵抗感や羞恥心(例:他者の介助を嫌がる)
- 抑うつや不安による活動意欲の低下
環境的要因
- 自宅の浴室が利用しにくい構造(例:段差、滑りやすい床)
- 適切な介助者や補助具の不在
認知的要因
- 認知症や記憶障害による入浴行動の計画や実行の困難
- 意識の混乱や判断力の低下
その他の要因
- 経済的困難による設備や介助サービスの利用制限
- 文化的な背景や習慣の違いによる入浴頻度の低下
入浴セルフケア不足(NANDA-I領域4)の評価方法
入浴セルフケア不足(NANDA-I領域4)を評価するには、患者の身体的能力、心理的状態、生活環境を総合的に観察します。
患者の訴えや主観的情報
- 「浴槽に入るのが難しい」「すぐ疲れてしまう」といった訴えを聴取する
- 入浴に対する心理的な抵抗感の有無を確認する
身体的観察
- 筋力、関節可動域、バランス能力を評価する
- 皮膚の状態(汚れ、発疹、感染兆候)を観察する
環境の確認
- 浴室の構造や安全性(手すりの有無、滑り止めマットなど)を評価する
- 入浴時の介助者や補助具の利用状況を確認する
日常生活動作(ADL)の評価
- 入浴に必要な動作(脱衣、浴槽への出入り、身体を洗う動作)が可能か確認する
- 他のADL(食事、排泄)との比較を行い、入浴に特化した問題を特定する
心理的評価
- 不安や抑うつの有無を確認する
- 入浴に対するモチベーションや満足感を評価する
入浴セルフケア不足(NANDA-I領域4)の治療方法
入浴セルフケア不足(NANDA-I領域4)の治療は、原因に応じて患者の自立を支援することを目指します。
身体的支援
- 患者の体力や筋力を考慮し、部分浴や洗身で代替する
- 介助用リフトや手すり、シャワーチェアなどの補助具を導入する
- リハビリテーションで筋力やバランス能力を向上させる
心理的支援
- 患者が羞恥心や抵抗感を抱えている場合、同性の介助者を配置するなど配慮する
- 入浴後のさっぱりした感覚や気分の良さを伝え、動機付けを行う
環境の改善
- 浴室を安全に利用できるように改修する(例:手すりの設置、段差解消)
- 入浴介助サービスの利用を提案する
教育的支援
- 入浴の重要性を説明し、患者と家族に適切なケア方法を指導する
- 入浴後の血行促進やリラクゼーション効果を説明する
部分的な代替ケア
- 入浴が難しい場合は、清拭や洗顔で皮膚の清潔を保持する
- 入浴の頻度を減らし、患者の負担を軽減する
入浴セルフケア不足(NANDA-I領域4)の患者をケアする上で気をつけること
入浴セルフケア不足(NANDA-I領域4)の患者をケアする際には、以下の点に注意する必要があります。
患者のペースを尊重する
無理に入浴を強制せず、患者が安心してケアを受けられるよう配慮する。
安全対策を徹底する
転倒や滑りを防ぐため、補助具や介助を適切に行う。
羞恥心への配慮
プライバシーを守るため、タオルや浴衣で体を覆いながらケアを行う。
家族や介護者との連携
自宅での入浴ケアが適切に行えるよう、家族に具体的な方法を説明する。
継続的なフォローアップ
ケアの効果や患者の状態を定期的に評価し、計画を見直す。
入浴セルフケア不足(NANDA-I領域4)の看護計画を立案する上でのポイント
患者のADLや入浴時の身体機能、心理的状態を観察します。
入浴が困難な原因を特定し、環境要因も評価します。
観察計画(O-P)の立案ポイント
患者のADLや入浴時の身体機能、心理的状態を観察します。
入浴が困難な原因を特定し、環境要因も評価します。
援助計画(T-P)の立案ポイント
患者の自立を支援しつつ、安全に入浴できる環境を整えます。
必要に応じて部分浴や清拭を提案し、皮膚の清潔を保ちます。
教育計画(E-P)の立案ポイント
入浴の重要性やケア方法を患者と家族に指導し、補助具や介助サービスの活用を勧めます。
入浴セルフケア不足(NANDA-I領域4)の看護計画の記載例・書き方
看護診断 | #1 入浴セルフケア不足 |
患者目標 | 長期目標:自立して安全に入浴できる。 短期目標:1週間以内に、介助を受けながら入浴を行い、清潔を保持できる。 |
観察計画(O-P) | 患者の筋力や関節可動域を観察する。 入浴中のバランス能力や疲労感の有無を確認する。 入浴後の皮膚状態(乾燥、発赤、感染兆候)を記録する。 入浴に対する心理的抵抗感や羞恥心を聴取する。 浴室の環境(手すり、段差)の安全性を確認する。 |
援助計画(T-P) | 入浴前に患者の身体状態を評価し、安全を確保する。 シャワーチェアや手すりを使用し、安全な姿勢を保つ。 部分浴や清拭を提供し、皮膚の清潔を保つ。 入浴の負担を軽減するため、温水で短時間の入浴を提案する。 必要に応じて同性の介助者を配置し、プライバシーに配慮する。 入浴後に皮膚の保湿ケアを行い、乾燥を防ぐ。 患者が疲労を訴えた場合、途中で中断し休息を取る。 家族に補助具の使い方や入浴介助の方法を指導する。 患者が安心して入浴できるよう、リラックス効果のある香りや音楽を提案する。 介助サービスの利用を提案し、負担を軽減する。 |
教育計画(E-P) | 入浴の重要性(清潔保持、血行促進)を説明する。 シャワーチェアや手すりなどの補助具の使い方を指導する。 患者の安全を守るための環境整備(滑り止めマット、浴室改修)の重要性を教える。 家族に入浴介助の方法とポイントを説明する。 入浴時に無理をしないよう、患者に適切な休息の取り方を教える。 清拭や部分浴の方法を説明し、患者や家族が実践できるよう支援する。 入浴後のスキンケア(保湿剤の使用)を提案する。 入浴頻度を患者の体力に合わせて調整する方法を教える。 リラックスのための入浴方法(温度、時間)を指導する。 地域資源(訪問看護、デイサービス)の利用方法を紹介する。 |
看護計画作成におけるルールは、コチラの記事(【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】)を参考にしてください!
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入浴セルフケア不足(NANDA-I領域4)の看護記録(SOAP)の記載例・書き方
看護診断 (看護問題) | 入浴セルフケア不足 |
S(主観的情報) | 「自分では浴槽に入れないので、清拭だけになっています。」 |
O(客観的情報) | 筋力低下により浴槽への出入りが困難。 皮膚の乾燥と軽度のかゆみを訴える。 シャワーチェアと手すりを設置済みだが未使用。 |
A(評価) | 入浴セルフケア不足により、清潔保持が不十分な状態。安全な補助具の使用と介助が必要。 |
P(計画) | シャワーチェアと手すりを使用して安全に入浴できるよう指導する。 入浴中のバランスを保つため、看護師が介助を行う。 入浴後に保湿ケアを実施し、皮膚の乾燥を防ぐ。 家族に入浴介助の方法を説明し、実践できるよう支援する。 患者の状態を毎日評価し、必要に応じて計画を見直す。 入浴中の患者の疲労感を観察し、適宜休息を取る。 地域のデイサービスや訪問看護の利用を提案する。 患者が羞恥心を感じないよう、プライバシーを確保する。 リラクゼーション効果のある温度設定や短時間入浴を提案する。 入浴後の感想を聴取し、心理的な負担を軽減する。 |
看護記録(SOAP)作成におけるルールは、コチラの記事看護記録(【完全保存版】「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応)を参考にしてください!
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NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例まとめ
当サイトでは、今回ご紹介した領域の他にも、NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例を多数まとめています。
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看護記録(SOAP)の記載例
看護計画の記載例
引用・参考文献
T. ヘザー・ハードマン 編,上鶴 重美 訳:NANDA-I看護診断 定義と分類 2020-2023.医学書院.