看護計画 看護記録 NANDA-Iに基づく記載例 領域12

慢性疼痛(NANDA-I領域12)の観察ポイントと看護計画&看護記録(SOAP)の記載例【コピペ可】

当サイトでは、看護学生や新人看護師のために、NANDA-Iの看護診断に基づく看護計画&看護記録の記載例・書き方を多数ご紹介しています。

今回は、NANDA-I領域12の看護診断「慢性疼痛」の患者の観察ポイントを解説してまいります。

急性疼痛は、看護診断の中でも使用頻度が高く、しっかりと抑えておくべき診断の一つです。

記事の最後には、看護計画と看護記録(SOAP)の記載例を公開しており、すべてコピペ可です。

あくまでも一例であり、所属している病院や法人によって、書き方やルールは異なる場合も考えられますので、各自カスタマイズしてご活用ください。

慢性疼痛(NANDA-I領域12)とは

慢性疼痛とは、通常の治癒過程を超えて3か月以上続く痛みを指します。

この痛みは、身体的な要因だけでなく、心理的、社会的な影響も強く関与しています。

慢性疼痛は患者の生活の質(QOL)を低下させるだけでなく、うつ病や不安障害などの精神的な問題を引き起こすこともあります。

慢性疼痛は単なる症状ではなく、「痛み」そのものが独立した疾患として扱われる場合もあります。そのため、包括的な治療と看護が必要です。

慢性疼痛(NANDA-I領域12)の原因

慢性疼痛(NANDA-I領域12)を引き起こす主な原因は以下の通りです。

身体的要因

  • 炎症性疾患(例:関節リウマチ、慢性関節炎)
  • 神経障害性疼痛(例:糖尿病性ニューロパチー、帯状疱疹後神経痛)
  • 筋骨格系の障害(例:腰痛、頸椎症)
  • がん性疼痛(例:腫瘍による圧迫や浸潤)

心理的要因

  • ストレス、トラウマ、抑うつ、不安
  • 痛みに対する恐怖心や、回復への悲観的な思考

社会的要因

  • 職場環境や家庭内のストレス
  • 経済的問題や孤立感

慢性疼痛の原因は、これらの要因が複合的に絡み合うことが多く、個々の患者に応じた包括的なアプローチが必要です。

慢性疼痛(NANDA-I領域12)の評価方法

慢性疼痛(NANDA-I領域12)を評価する際には、患者が感じる痛みの特徴や程度を詳細に把握することが必要です。

痛みの特徴を聴取する

  • 痛みの部位:痛みがどこにあるのか
  • 痛みの強さ:痛みのスケール(例:NRS: 0~10で評価)
  • 痛みの性質:鋭い痛み、鈍い痛み、灼熱感など
  • 痛みの持続時間:いつから始まったのか、断続的か持続的か
  • 誘因・緩和因子:何が痛みを悪化させるか、または緩和させるか

身体的観察

  • 患者の表情や姿勢、動作(例:顔をしかめる、特定の部位をかばう)
  • バイタルサイン(例:心拍数、血圧、呼吸数の上昇)

痛みの影響を評価

  • 日常生活や睡眠、食欲への影響を確認
  • 患者の感情的反応(不安、イライラ、抑うつ)を評価する

評価ツールの活用

  • 痛みスケール:NRS(Numerical Rating Scale)、VAS(Visual Analog Scale)
  • 痛み評価シート:痛みの種類や場所を記録する

心理社会的要因の評価

  • 痛みが患者の精神的健康や人間関係に与える影響を把握します
  • うつ病や不安障害の評価には、標準化されたスクリーニングツール(例:PHQ-9、HADS)を使用します

慢性疼痛(NANDA-I領域12)の治療方法

慢性疼痛(NANDA-I領域12)の治療は、身体的な痛みの軽減と心理社会的なサポートの両方を含む多面的なアプローチが求められます。

薬物療法

  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):鎮痛と抗炎症作用を持つ薬
  • オピオイド:強い痛みに対して使用しますが、依存のリスクがあるため慎重に管理します
  • 神経障害性疼痛に対する薬剤:プレガバリンやデュロキセチンなど
  • 抗うつ薬・抗不安薬:痛みの閾値を上げ、心理的な安定を図ります

非薬物療法

  • 物理療法:温熱療法、低周波治療、マッサージなど
  • リハビリテーション:痛みによる身体機能の低下を防ぐための運動療法
  • 心理療法:認知行動療法(CBT)で痛みへの認識を変える
  • ペインクリニックでの治療:神経ブロック注射や脊髄刺激療法を行うこともあります

ライフスタイルの改善

  • 規則正しい生活習慣を促し、身体機能を回復させます。
  • 栄養バランスの取れた食事や適度な運動を推奨します。

慢性疼痛(NANDA-I領域12)の患者をケアする上で気をつけること

慢性疼痛(NANDA-I領域12)の患者は、身体的な痛みだけでなく心理的、社会的にも影響を受けています。

以下の点に注意してケアを行います。

  • 患者の痛みを「気のせい」などと軽視せず、真摯に耳を傾ける。
  • 痛みの管理が長期的になることを理解し、焦らずに治療を続けるよう支援する。
  • 家族や社会資源を活用し、患者が孤立しないよう配慮する。
  • 患者自身が自己管理に積極的に関わるための教育や支援を行う。
  • 必要に応じて、多職種(医師、理学療法士、心理士など)と連携する。

慢性疼痛(NANDA-I領域12)の看護計画を立案する上でのポイント

慢性疼痛(NANDA-I領域12)の看護計画(観察計画、援助計画、行動計画)は、以下のポイントに注意をして立案すると良いでしょう。

観察計画(O-P)の立案ポイント

患者の痛みの強さや性質、生活への影響を詳細に把握します。

例えば、痛みがどのような状況で増悪するのか、どのような活動を避けているのかを確認します。

また、心理的ストレスや社会的孤立の兆候も観察します。

援助計画(T-P)の立案ポイント

痛みを軽減するための具体的な支援を提供します。

温熱療法やリラクゼーション技術の指導を行い、患者が痛みをコントロールするための方法を提供します。

さらに、痛みによる身体機能低下を防ぐための運動指導を行います。

教育計画(E-P)の立案ポイント

患者や家族に慢性疼痛の特性や治療方法について理解を促します。

痛みの自己管理方法、薬物療法の正しい使用法、日常生活での注意点を説明します。

また、心理的サポートが重要であることを伝えます。

慢性疼痛(NANDA-I領域12)の看護計画の記載例・書き方

看護診断#1 慢性疼痛
患者目標長期目標:痛みを効果的にコントロールし、日常生活の質が向上する。
短期目標:痛みの強度が軽減し、自己管理ができる。
観察計画(O-P)痛みの強さ、性質、部位を毎日記録する。
痛みが生活に与える影響を観察する(例:食事、睡眠、活動)。
痛みによる心理的ストレスや不安の有無を確認する。
薬剤の使用状況や副作用を観察する。
痛みがどのような動作や状況で増悪または緩和するかを確認する。
援助計画(T-P)温熱療法や冷却療法を適切に提供する。
痛みを軽減するためのリラクゼーション法(深呼吸、瞑想)を指導する。
適切な運動療法を実施し、身体機能の低下を防ぐ。
痛みによる日常生活の困難を軽減するための環境調整を行う。
痛みが強い場合には、医師と連携して薬物療法を調整する。
教育計画(E-P)痛みの記録方法を説明し、日常的に活用するよう指導する。
薬物療法の正しい使用法と副作用の管理方法を説明する。
慢性疼痛に対する自己管理方法を患者と家族に指導する。
ストレス管理の重要性を伝え、心理的安定を促す方法を教える。
地域のリソース(例:ペインクリニック、患者会)の活用方法を説明する。

トコル
トコル

看護計画作成におけるルールは、コチラの記事(【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】)を参考にしてください!

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慢性疼痛(NANDA-I領域12)の看護記録(SOAP)の記載例・書き方

看護診断
(看護問題)
慢性疼痛
S(主観的情報)「ここ数か月、腰の痛みがひどくて、夜も眠れないことが多いです。」
「痛みが怖くて、あまり動きたくありません。」
O(客観的情報)痛みの強さがVASスケールで7と記録されている。
歩行速度が遅く、腰をかばう姿勢が見られる。
夜間の睡眠時間が4時間以下。
A(評価)痛みが長期間続いており、生活の質に大きな影響を与えている。
P(計画)痛みの記録を継続し、状況を把握する。
温熱療法を毎日提供し、痛みの緩和を図る。
ストレッチや軽いエクササイズを取り入れ、身体の緊張を和らげる。
認知行動療法の導入を検討し、心理的ストレスを軽減する。
地域のペインクリニックを紹介し、多職種と連携して治療を進める。

トコル
トコル

看護記録(SOAP)作成におけるルールは、コチラの記事看護記録(【完全保存版】「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応)を参考にしてください!

【完全保存版】看護記録「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応】

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NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例まとめ

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看護記録(SOAP)の記載例

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看護計画の記載例

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引用・参考文献
T. ヘザー・ハードマン 編,上鶴 重美 訳:NANDA-I看護診断 定義と分類 2020-2023.医学書院.

-看護計画, 看護記録, NANDA-Iに基づく記載例, 領域12