当サイトでは、看護学生や新人看護師のために、NANDA-Iの看護診断に基づく看護計画&看護記録の記載例・書き方を多数ご紹介しています。
今回は、NANDA-I領域9の看護診断「恐怖」の患者の観察ポイントを解説してまいります。
急性疼痛は、看護診断の中でも使用頻度が高く、しっかりと抑えておくべき診断の一つです。
記事の最後には、看護計画と看護記録(SOAP)の記載例を公開しており、すべてコピペ可です。
あくまでも一例であり、所属している病院や法人によって、書き方やルールは異なる場合も考えられますので、各自カスタマイズしてご活用ください。
恐怖(NANDA-I領域9)とは
恐怖とは、実際の危険や脅威、またはそれを予想することで生じる強い不安感や警戒心を指します。
恐怖は、具体的な対象や状況に対して起こるため、漠然とした「不安」とは異なります。
医療現場では、診断結果や治療法、手術などに対する恐怖が患者に影響を及ぼし、身体的・心理的なストレスを増大させることがあります。
恐怖(NANDA-I領域9)の原因
恐怖(NANDA-I領域9)の原因は個々の状況や背景によって異なりますが、以下のように分類されます。
身体的要因
- 痛みや身体の不快感
- 手術や治療に伴う身体的負担の予測
- 病気の進行や合併症に関する心配
心理的要因
- 自己イメージの変化や喪失への恐れ
- 自分ではコントロールできない状況への無力感
- 死亡や長期的な機能喪失への恐怖
社会的要因
- 家族や社会的な役割を果たせなくなる不安
- 経済的な負担や仕事への影響
環境的要因
- 知らない環境(病院や治療施設)への不安感
- 医療スタッフや家族からの支援不足
- 外的な要因(例:騒音や他者の視線)
恐怖(NANDA-I領域9)の評価方法
恐怖(NANDA-I領域9)を評価する際には、患者が感じている具体的な恐怖の内容や影響を明確にすることが重要です。
主観的評価
- 「何が一番心配ですか?」
- 「どんな場面で怖いと感じますか?」
- 患者が恐怖を感じる状況や対象について聞き取ります
客観的評価
- 患者の表情や態度(例:緊張した表情、震え)
- 恐怖に伴う身体症状(例:心拍数や呼吸数の増加、発汗)
標準化された評価ツール
- STAI(State-Trait Anxiety Inventory):状態不安と特性不安を評価
- NRS(Numerical Rating Scale):恐怖の程度を数値化する
背景要因の評価
- 恐怖を引き起こしている要因や、患者が持つストレス耐性を確認します
恐怖(NANDA-I領域9)の治療方法
恐怖(NANDA-I領域9)を軽減するためには、患者が抱える恐怖の具体的な対象に応じた多面的なアプローチが求められます。
情報提供と説明
- 病気や治療について分かりやすく説明し、不明点を解消します
- 患者が理解しやすい言葉や資料(例:図解、動画)を用いる
安心感を与える環境の提供
- 静かで落ち着いた環境を整える
- 医療スタッフが患者の不安に寄り添う態度を示す
心理療法
- 認知行動療法(CBT)を通じて恐怖を引き起こす思考パターンを再構築
- 恐怖の対象に対する段階的な暴露療法(例:針や注射に対する恐怖の克服)
リラクゼーション技法
- 深呼吸、瞑想、筋弛緩法などを用いて緊張をほぐします
- 看護師や心理士が誘導し、リラクゼーションをサポートします
薬物療法
- 必要に応じて抗不安薬や鎮静薬を使用(医師の指示の下で実施)
恐怖(NANDA-I領域9)の患者をケアする上で気をつけること
恐怖(NANDA-I領域9)の患者をケアする際には、以下の点に注意する必要があります。
- 患者の恐怖を否定せず、受け止める姿勢を持つ。
- 患者が恐怖を言語化しやすい環境を整える。
- 恐怖の対象が何であるかを具体的に把握し、それに応じた対処法を提供する。
- 家族や支援者を巻き込み、患者を心理的に支える体制を整える。
- 必要に応じて多職種と連携し、患者に合わせたケアを実施する。
恐怖(NANDA-I領域9)の看護計画を立案する上でのポイント
恐怖(NANDA-I領域9)の看護計画(観察計画、援助計画、行動計画)は、以下のポイントに注意をして立案すると良いでしょう。
観察計画(O-P)の立案ポイント
患者が恐怖を感じる状況や対象を把握します。
また、恐怖が身体や行動にどのような影響を与えているか観察します。
例えば、心拍数や呼吸数の変化、表情や態度などを細かく記録します。
援助計画(T-P)の立案ポイント
患者が安心感を持てるよう、環境調整やリラクゼーション技術を提供します。
患者のペースに合わせた説明を行い、恐怖に対するコントロール感を持たせます。
また、恐怖を感じる対象に対して徐々に慣れさせるような支援を行います。
教育計画(E-P)の立案ポイント
患者や家族に恐怖の原因や影響について説明し、不安を軽減する方法を指導します。
恐怖が克服できる可能性を示し、ポジティブな視点を持てるよう支援します。
また、地域や病院内の心理サポートリソースの活用を案内します。
恐怖(NANDA-I領域9)の看護計画の記載例・書き方
看護診断 | #1 恐怖 |
患者目標 | 長期目標:恐怖を克服し、安心して治療に臨める。 短期目標:恐怖を言語化でき、その対処方法を実践できる。 |
観察計画(O-P) | 患者の恐怖の対象や状況を把握するため、会話や行動を観察する。 恐怖に伴う身体症状(例:心拍数の増加、震え)を記録する。 患者がどの程度恐怖をコントロールできているか確認する。 |
援助計画(T-P) | 恐怖の対象について丁寧に説明し、患者が安心できるよう情報提供を行う。 深呼吸やリラクゼーション技法を指導し、一緒に実践する。 患者が恐怖を感じやすい場面での支援を強化し、安心感を提供する。 必要に応じて、心理士や精神科医に相談し、適切な支援を行う。 |
教育計画(E-P) | 病気や治療法について、分かりやすく説明する。 不安を感じた際の具体的な対処方法(例:家族やスタッフへの相談)を指導する。 社会資源や支援団体の情報を提供し、必要に応じて利用を促す。 |
看護計画作成におけるルールは、コチラの記事(【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】)を参考にしてください!
【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】
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恐怖(NANDA-I領域9)の看護記録(SOAP)の記載例・書き方
看護診断 (看護問題) | 恐怖 |
S(主観的情報) | 「手術のことを考えると怖くて夜も眠れません。」 「麻酔がうまく効かないのではないかと心配です。」 |
O(客観的情報) | 患者は話しながら手を震わせている。 心拍数が通常よりも増加(95回/分)。 夜間の睡眠時間が短く、不安そうな表情が見られる。 |
A(評価) | 手術に対する恐怖が強く、日常生活や睡眠に影響を与えている状態。 |
P(計画) | 手術の流れや麻酔について、具体的な情報を提供する。 リラクゼーション技術を指導し、毎日実践する時間を設ける。 必要に応じて心理士や精神科医に相談し、心理的サポートを提供する。 家族と一緒に患者をサポートする計画を立て、心理的な安心感を強化する。 恐怖の対象が軽減するまで段階的にサポートを継続する。 |
看護記録(SOAP)作成におけるルールは、コチラの記事看護記録(【完全保存版】「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応)を参考にしてください!
【完全保存版】看護記録「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応】
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NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例まとめ
当サイトでは、今回ご紹介した領域の他にも、NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例を多数まとめています。
ぜひ、日々の業務のご活用ください!
看護記録(SOAP)の記載例
看護計画の記載例
引用・参考文献
T. ヘザー・ハードマン 編,上鶴 重美 訳:NANDA-I看護診断 定義と分類 2020-2023.医学書院.