当サイトでは、看護学生や新人看護師のために、NANDA-Iの看護診断に基づく看護計画&看護記録の記載例・書き方を多数ご紹介しています。
今回は、NANDA-I領域11の看護診断「口腔乾燥リスク状態」の患者の観察ポイントを解説してまいります。
口腔乾燥リスク状態は、看護診断の中でも使用頻度が高く、しっかりと抑えておくべき診断の一つです。
記事の最後には、看護計画と看護記録(SOAP)の記載例を公開しており、すべてコピペ可です。
あくまでも一例であり、所属している病院や法人によって、書き方やルールは異なる場合も考えられますので、各自カスタマイズしてご活用ください。
口腔乾燥リスク状態(NANDA-I領域11)とは
口腔乾燥リスク状態とは、唾液の分泌が低下または不足することで、口腔内が乾燥しやすくなり、さまざまな問題が発生するリスクが高い状態を指します。
唾液は、食物の摂取や嚥下、発音、感染防御、歯の健康維持に重要な役割を果たしています。
そのため、口腔乾燥が進行すると、虫歯や歯周病、口腔内の炎症、嚥下障害などのリスクが増大します。
口腔乾燥リスク状態(NANDA-I領域11)の原因
口腔乾燥リスク状態(NANDA-I領域11)を引き起こす主な原因は以下の通りです。
加齢
- 高齢者では、加齢に伴い唾液腺の機能が低下しやすい。
薬剤の副作用
- 抗コリン薬、抗うつ薬、降圧薬、抗ヒスタミン薬などの使用
疾患
- シェーグレン症候群などの自己免疫疾患
- 糖尿病や腎不全など、全身性疾患による影響
- 放射線治療(特に頭頸部)による唾液腺の損傷
生活習慣
- 水分摂取不足や喫煙、アルコールの過剰摂取
- カフェインを多く含む飲料の摂取
口呼吸
- 睡眠時無呼吸症候群や鼻閉による慢性的な口呼吸
精神的要因
- ストレスや緊張が唾液分泌を抑制する
口腔乾燥リスク状態(NANDA-I領域11)の評価方法
口腔乾燥リスク状態(NANDA-I領域11)を評価する際には、患者の訴えや口腔内の状態、唾液分泌量を観察します。
患者の主観的訴え
- 「口の中が乾く」「飲み込みにくい」「話しづらい」といった症状の聴取
身体所見
- 口腔内の粘膜が乾燥している
- 舌苔の付着や亀裂の有無を確認する
- 唇や口角のひび割れ、口内炎の有無を観察する
唾液分泌量の測定
- ガムテスト:ガムを噛み、一定時間内の唾液量を測定する
- サクソンテスト:ガーゼを咬み、一定時間後の重さの変化を測定する
生活習慣や薬剤使用の確認
- 使用中の薬剤や水分摂取状況、喫煙の有無を確認する
関連疾患の評価
- シェーグレン症候群や糖尿病など、関連する全身疾患の有無を確認する
口腔乾燥リスク状態(NANDA-I領域11)の治療方法
口腔乾燥リスク状態(NANDA-I領域11)の治療は、原因の除去と口腔内の保湿を中心に行います。
生活習慣の改善
- 水分をこまめに摂取する習慣をつける
- アルコールやカフェインの摂取を控える
- 加湿器を使用して室内の湿度を適切に保つ
口腔ケア
- 口腔内を清潔に保つため、歯磨きやうがいを励行する
- 保湿効果のあるマウスウォッシュやジェルを使用する
唾液分泌を促進する方法
- 酸味のある食品やガムを噛むことで唾液分泌を刺激する
- 唾液腺マッサージを行う(耳下腺、顎下腺、舌下腺のマッサージ)
薬物療法
- 唾液分泌促進薬(例:ピロカルピン)を使用する
- 必要に応じて、抗コリン作用を持つ薬剤を減量または変更する
関連疾患の治療
- シェーグレン症候群などの基礎疾患に対する専門的治療を行う
口腔乾燥リスク状態(NANDA-I領域11)の患者をケアする上で気をつけること
口腔乾燥リスク状態(NANDA-I領域11)の患者をケアする際には、以下の点に注意する必要があります。
清潔な口腔環境の提供
- 口腔内を定期的に清潔にし、感染のリスクを軽減する。
水分補給のサポート
- 患者がこまめに水分を摂取できるよう環境を整える。
心理的サポート
- 口腔乾燥による不安や不快感を軽減するために寄り添った対応を行う。
患者個別の状況に応じたケア
- 症状や原因に応じて適切な口腔保湿剤や治療法を選択する。
家族や介護者への教育
- 口腔ケアの方法や口腔乾燥の予防策について指導する。
口腔乾燥リスク状態(NANDA-I領域11)の看護計画を立案する上でのポイント
口腔乾燥リスク状態(NANDA-I領域11)の看護計画(観察計画、援助計画、行動計画)は、以下のポイントに注意をして立案すると良いでしょう。
観察計画(O-P)の立案ポイント
口腔内の状態、唾液分泌量、水分摂取状況を観察します。
患者の主観的な訴えを定期的に確認し、症状の変化を評価します。
援助計画(T-P)の立案ポイント
患者に適した保湿ケアを行い、必要に応じて唾液腺マッサージや唾液分泌を促進する食品や飲み物を提供します。
適切な口腔清潔ケアを実施し、感染予防を徹底します。
教育計画(E-P)の立案ポイント
患者とその家族に対し、口腔乾燥の予防方法や口腔ケアの重要性を説明します。
また、生活習慣の改善や水分補給の方法について指導します。
口腔乾燥リスク状態(NANDA-I領域11)の看護計画の記載例・書き方
看護診断 | #1 口腔乾燥リスク状態 |
患者目標 | 長期目標:口腔内の潤いを保ち、乾燥による合併症を予防できる。 短期目標:1週間以内に患者の口腔乾燥感が軽減し、唾液分泌が促進される。 |
観察計画(O-P) | 口腔内粘膜の乾燥状態を毎日観察する。 患者の主観的な乾燥感や不快感を記録する。 唾液分泌量(ガムテストやサクソンテスト)を測定する。 水分摂取量を記録し、摂取パターンを確認する。 使用中の薬剤とその副作用を確認する。 口腔内の感染兆候(発赤、腫脹、痛み)を観察する。 舌苔や亀裂、口角炎の有無を記録する。 生活習慣(口呼吸、喫煙、飲酒)の影響を評価する。 痛みや口腔乾燥に伴う食事摂取量の変化を確認する。 ストレスや緊張の影響を聴取する。 |
援助計画(T-P) | 口腔内を清潔に保つため、定期的な歯磨きとうがいを支援する。 保湿効果のあるマウスジェルや保湿スプレーを使用する。 酸味のある食品やガムを提供し、唾液分泌を促進する。 必要に応じて唾液腺マッサージを実施する。 水分摂取を促し、こまめに水を飲むよう支援する。 室内の加湿を行い、適切な湿度を保つ。 抗コリン薬の影響がある場合は、医師と連携して薬剤変更を検討する。 口腔乾燥による感染リスクを軽減するため、口腔ケア用品を選定する。 ストレスを軽減するため、リラクゼーション法を提案する。 食事内容を見直し、潤いを保ちやすい食品(スープ、ゼリー)を提供する。 |
教育計画(E-P) | 口腔乾燥の原因と予防方法を患者に説明する。 唾液腺マッサージの方法を指導し、家庭でも実践できるようにする。 水分補給の重要性と適切なタイミングを教える。 口腔乾燥を防ぐための生活習慣(禁煙、アルコール制限)を指導する。 保湿ジェルやマウススプレーの使い方を説明する。 口腔内の異常(痛み、腫れ)が見られた際に早期受診するよう助言する。 加湿器の使用や室内の湿度管理の重要性を説明する。 カフェインや刺激物の摂取を控えるよう指導する。 適切な口腔ケア用品(歯磨き粉、うがい薬)の選び方を教える。 口腔乾燥が改善するまでの対応方法について家族にも共有する。 |
看護計画作成におけるルールは、コチラの記事(【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】)を参考にしてください!
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口腔乾燥リスク状態(NANDA-I領域11)の看護記録(SOAP)の記載例・書き方
看護診断 (看護問題) | 口腔乾燥リスク状態 |
S(主観的情報) | 「最近、口の中がすごく乾燥して、話しづらいです。」 「食事のときに飲み込みにくい感じがあります。」 |
O(客観的情報) | 舌苔の付着を認め、口腔内粘膜が乾燥している。 唾液分泌量(ガムテスト):2分間で1mL未満。 口角に軽度のひび割れがある。 |
A(評価) | 口腔乾燥リスクが高く、唾液分泌を促進し、乾燥を防ぐケアが必要な状態。 |
P(計画) | 保湿効果のあるマウスジェルを1日3回使用するよう支援する。 水分摂取量を1日1.5~2Lに増やすよう促す。 毎食後に唾液腺マッサージを実施するよう指導する。 酸味のある食品やガムを提供し、唾液分泌を刺激する。 室内の加湿器を使用し、湿度を50~60%に保つ。 口腔乾燥が改善しない場合は、医師に相談し唾液分泌促進薬の処方を検討する。 口腔内の清潔を保つため、うがいと歯磨きを1日3回実施する。 食事内容を見直し、スープやゼリーなど飲み込みやすい食品を提案する。 口腔乾燥に伴う不安を軽減するため、改善プロセスを丁寧に説明する。 次回の診察時に唾液分泌量を再評価し、ケア方法を調整する。 |
看護記録(SOAP)作成におけるルールは、コチラの記事看護記録(【完全保存版】「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応)を参考にしてください!
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NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例まとめ
当サイトでは、今回ご紹介した領域の他にも、NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例を多数まとめています。
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看護記録(SOAP)の記載例
看護計画の記載例
引用・参考文献
T. ヘザー・ハードマン 編,上鶴 重美 訳:NANDA-I看護診断 定義と分類 2020-2023.医学書院.