当サイトでは、看護学生や新人看護師のために、NANDA-Iの看護診断に基づく看護計画&看護記録の記載例・書き方を多数ご紹介しています。
今回は、NANDA-I領域11の看護診断「非効果的気道浄化」の患者の観察ポイントを解説してまいります。
非効果的気道浄化は、看護診断の中でも使用頻度が高く、しっかりと抑えておくべき診断の一つです。
記事の最後には、看護計画と看護記録(SOAP)の記載例を公開しており、すべてコピペ可です。
あくまでも一例であり、所属している病院や法人によって、書き方やルールは異なる場合も考えられますので、各自カスタマイズしてご活用ください。
非効果的気道浄化(NANDA-I領域11)とは
非効果的気道浄化とは、気道内の分泌物や異物を適切に除去する能力が低下し、呼吸機能が損なわれた状態を指します。
この状態では、気道閉塞やガス交換の障害が生じ、低酸素血症や呼吸困難につながる可能性があります。
原因の特定と迅速な介入が患者の予後を改善するために重要です。
非効果的気道浄化(NANDA-I領域11)の原因
非効果的気道浄化(NANDA-I領域11)を引き起こす主な原因は以下の通りです。
気道分泌物の増加
- 感染症(例:肺炎、気管支炎)
- 喀痰の過剰分泌(例:COPD、喘息)
咳嗽能力の低下
- 神経疾患(例:ALS、パーキンソン病)
- 筋力低下(例:高齢者、慢性疾患)
気道閉塞
- 気管支痙攣や気道狭窄
- 気道内異物(例:食物、分泌物)
その他の要因
- 手術後の痛みによる咳嗽抑制
- 意識レベルの低下(例:薬物過剰摂取、昏睡状態)
- 脱水による痰の粘稠性増加
非効果的気道浄化(NANDA-I領域11)の評価方法
非効果的気道浄化(NANDA-I領域11)を評価する際には、患者の主訴や身体所見、検査結果を基に包括的な評価を行います。
身体的評価
- 呼吸音の変化(例:ラ音、喘鳴)
- チアノーゼや唇の蒼白
- 胸郭の運動や努力呼吸の有無
検査
- 動脈血ガス分析(ABG):低酸素血症や高二酸化炭素血症の有無を確認
- 画像検査:胸部X線で肺炎や無気肺を確認
- 喀痰検査:感染の有無や分泌物の性状を評価
症状の確認
- 呼吸困難、息切れ
- 無効な咳嗽または咳嗽不能
- 痰の性状(量、色、粘稠性)
バイタルサイン
- 酸素飽和度(SpO₂)の低下
- 呼吸数の増加または不規則な呼吸
- 心拍数や血圧の変動
非効果的気道浄化(NANDA-I領域11)の治療方法
非効果的気道浄化(NANDA-I領域11)の治療は、原因の除去と気道のクリアランスを改善することを目的とします。
気道の物理的浄化
- 吸引法を使用して気道内の分泌物を除去する
- 気道内異物がある場合は、内視鏡で取り除く
体位管理
- 排痰を促進するための体位ドレナージ(例:側臥位、頭低位)
- 呼吸を楽にする体位(起座位やファウラー位)
吸入療法
- 蒸気吸入やネブライザーで気道を潤し、分泌物の排出を促進する
薬物療法
- 去痰薬:痰を薄めて排出しやすくする(例:アセチルシステイン)
- 気管支拡張薬:気道を広げて呼吸を改善(例:サルブタモール)
- 抗生物質:感染症の治療に使用
リハビリテーション
- 呼吸リハビリを行い、咳嗽能力を向上させる(例:腹式呼吸、深呼吸)
酸素療法
- 酸素吸入により低酸素血症を改善する。重症例では人工呼吸器の使用を検討する
非効果的気道浄化(NANDA-I領域11)の患者をケアする上で気をつけること
非効果的気道浄化(NANDA-I領域11)の患者をケアする際には、以下の点に注意する必要があります。
早期の異常発見
- 分泌物や呼吸困難の徴候を見逃さない
適切な吸引
- 清潔な吸引手技を行い、感染リスクを最小限に抑える
水分補給
- 痰を薄めるために、十分な水分摂取を促す
患者教育
- 排痰方法や気道浄化の重要性を説明し、患者の協力を得る
呼吸の補助
- 呼吸を補助するために、体位管理やリラクゼーション法を提供する
非効果的気道浄化(NANDA-I領域11)の看護計画を立案する上でのポイント
非効果的気道浄化(NANDA-I領域11)の看護計画(観察計画、援助計画、行動計画)は、以下のポイントに注意をして立案すると良いでしょう。
観察計画(O-P)の立案ポイント
呼吸音、呼吸数、酸素飽和度、痰の性状を観察します。
また、患者の咳嗽能力や呼吸困難の程度を確認します。
援助計画(T-P)の立案ポイント
吸引や体位ドレナージを行い、必要に応じて薬物療法や吸入療法を提供します。
呼吸リハビリや水分補給を支援し、分泌物の排出を促進します。
教育計画(E-P)の立案ポイント
患者とその家族に対して、気道浄化の重要性や適切な排痰方法を指導します。
水分補給やネブライザーの使用方法について具体的に説明します。
非効果的気道浄化(NANDA-I領域11)の看護計画の記載例・書き方
看護診断 | #1 非効果的気道浄化 |
患者目標 | 長期目標:気道が適切に浄化され、呼吸機能が改善できる。 短期目標:1週間以内に痰の排出がスムーズになり、酸素飽和度が安定する。 |
観察計画(O-P) | 呼吸音の変化(ラ音、喘鳴)を定期的に聴取する。 痰の性状(量、色、粘稠性)を記録する。 呼吸数、SpO₂、心拍数をモニタリングする。 咳嗽能力や咳嗽時の痰排出量を観察する。 バイタルサインの変化を記録し、呼吸困難の有無を確認する。 吸引後の分泌物の量と性状を観察する。 患者の主訴(息切れ、胸部不快感)を確認する。 動脈血ガス分析結果を確認し、酸素化状態を評価する。 患者の水分摂取量を記録する。 排痰後の呼吸状態の変化を評価する。 |
援助計画(T-P) | 必要に応じて吸引を行い、気道内の分泌物を除去する。 排痰を促進する体位(側臥位、頭低位)を取るよう支援する。 ネブライザーを使用し、気道の潤いを保つ。 去痰薬や気管支拡張薬を医師の指示に従い投与する。 水分摂取を促し、痰を薄めるよう支援する。 呼吸リハビリテーションを通じて、咳嗽能力を強化する。 酸素吸入を行い、SpO₂を95%以上に維持する。 患者に深呼吸や咳嗽を促す指導を行う。 吸引器具の清潔を保ち、感染リスクを最小限に抑える。 咳嗽時の痛みがある場合は、鎮痛薬を使用する。 |
教育計画(E-P) | 排痰の重要性と適切な方法(深呼吸、咳嗽)を説明する。 ネブライザーの正しい使用方法を指導する。 水分補給の重要性と目安量を教える。 呼吸を楽にするための体位やリラクゼーション法を指導する。 痰が増加または血痰が見られた場合の対応方法を説明する。 医療機器(吸引器、酸素機器)の使用方法と手入れ方法を説明する。 症状が悪化した際に医師へ相談するタイミングを指導する。 喫煙や過剰な乾燥を避ける生活環境の整え方を教える。 呼吸困難が生じた場合の対処方法を家族と共有する。 長期的な呼吸リハビリの重要性を説明し、実践を支援する。 |
看護計画作成におけるルールは、コチラの記事(【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】)を参考にしてください!
【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】
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非効果的気道浄化(NANDA-I領域11)の看護記録(SOAP)の記載例・書き方
看護診断 (看護問題) | 非効果的気道浄化 |
S(主観的情報) | 「痰が喉に詰まった感じがして、咳をしても出ません。」 「息苦しいです。」 |
O(客観的情報) | 呼吸音:両側で湿性ラ音を聴取。 SpO₂:91%(酸素投与なし)。 痰は粘稠で、淡黄色。 呼吸数:28回/分、努力呼吸あり。 |
A(評価) | 気道内に分泌物が溜まり、効果的な気道浄化が行われていない状態。適切な吸引と排痰促進が必要。 |
P(計画) | 吸引を実施し、気道内の分泌物を除去する。 ネブライザーを使用し、気道を湿潤化する。 起座位を保持し、呼吸を楽にする体位を確保する。 水分摂取量を1日1.5~2Lに増やすよう促す。 去痰薬を投与し、痰の粘稠性を低下させる。 呼吸音とSpO₂を2時間ごとにモニタリングする。 呼吸リハビリを支援し、深呼吸と咳嗽の練習を行う。 排痰後の呼吸状態を観察し、改善を評価する。 感染の兆候(発熱、痰の変化)が見られた場合は速やかに医師に報告する。 家族に吸引やネブライザーの操作方法を指導し、在宅ケアを支援する。 |
看護記録(SOAP)作成におけるルールは、コチラの記事看護記録(【完全保存版】「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応)を参考にしてください!
【完全保存版】看護記録「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応】
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NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例まとめ
当サイトでは、今回ご紹介した領域の他にも、NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例を多数まとめています。
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看護記録(SOAP)の記載例
看護計画の記載例
引用・参考文献
T. ヘザー・ハードマン 編,上鶴 重美 訳:NANDA-I看護診断 定義と分類 2020-2023.医学書院.