当サイトでは、看護学生や新人看護師のために、NANDA-Iの看護診断に基づく看護計画&看護記録の記載例・書き方を多数ご紹介しています。
今回は、NANDA-I領域4の看護診断「倦怠感」の患者の観察ポイントを解説してまいります。
感染リスク状態は、看護診断の中でも使用頻度が高く、しっかりと抑えておくべき診断の一つです。
記事の最後には、看護計画と看護記録(SOAP)の記載例を公開しており、すべてコピペ可です。
あくまでも一例であり、所属している病院や法人によって、書き方やルールは異なる場合も考えられますので、各自カスタマイズしてご活用ください。
倦怠感(NANDA-I領域4)とは
倦怠感とは、身体的、心理的、または生理的な要因によって生じる持続的で強い疲労感やエネルギーの欠乏状態を指します。
この状態では、休息や睡眠を取っても十分に回復しないことが特徴であり、日常生活活動(ADL)の遂行や生活の質(QOL)に悪影響を及ぼす可能性があります。
倦怠感はさまざまな疾患や治療の副作用として現れることがあり、その評価と対策が重要です。
倦怠感(NANDA-I領域4)の原因
倦怠感(NANDA-I領域4)を引き起こす主な原因は以下の通りです。
身体的要因
- 貧血や栄養不良
- 慢性疾患(例:心不全、腎不全、慢性閉塞性肺疾患)
- 感染症やがんによる体力低下
心理的要因
- ストレス、抑うつ、不安
- 睡眠障害や不眠症
環境的要因
- 不適切な生活リズムや不十分な休息
- 過剰な労働や介護負担
治療に伴う要因
- 化学療法や放射線治療の副作用
- 薬物療法(例:鎮静薬、抗ヒスタミン薬)の影響
その他の要因
- 急性疾患後の回復過程
- 長期間の安静や運動不足による体力低下
倦怠感(NANDA-I領域4)の評価方法
倦怠感(NANDA-I領域4)を評価するには、患者の主観的な感覚だけでなく、身体的、心理的要因を包括的に観察します。
主観的評価
- 「疲れが取れない」「だるい」などの訴えを聴取する
- 疲労感の程度をスケールで測定(例:0~10の疲労評価スケール)
身体的観察
- バイタルサイン(体温、血圧、心拍数)や栄養状態を確認する
- 疾患や治療に関連する身体的症状を観察する
生活状況の確認
- 日常生活活動(ADL)への影響を把握する
- 労働環境や生活リズムを確認する
心理的状態の評価
- 抑うつや不安の有無を評価する
- 睡眠状態やストレスレベルを確認する
関連検査の確認
- 貧血、電解質異常、甲状腺機能異常などの可能性を確認するための血液検査結果を参照する
倦怠感(NANDA-I領域4)の治療方法
倦怠感(NANDA-I領域4)の治療は、原因に応じた適切なアプローチを行い、患者の体力回復と生活の質の向上を目指します。
原因疾患の治療
- 貧血が原因の場合は鉄剤やビタミン補給を行う
- 感染症や慢性疾患に対しては適切な薬物治療を実施する
身体的支援
- 無理のない範囲での軽い運動を推奨する
- 活動と休息を交互に取り入れ、負担を軽減する
心理的支援
- 抑うつや不安がある場合はカウンセリングを行う
- リラクゼーション法(深呼吸、瞑想など)を指導する
生活習慣の改善
- 規則正しい生活リズムを確立する
- 十分な睡眠と休息を取る
- バランスの取れた栄養摂取を促進する
薬物療法
- 必要に応じて、疲労感を軽減するための薬物を使用する(例:ビタミン剤、抗うつ薬)
倦怠感(NANDA-I領域4)の患者をケアする上で気をつけること
倦怠感(NANDA-I領域4)の患者をケアする際には、以下の点に注意する必要があります。
患者の主観的な感覚を尊重する
倦怠感は個々の感覚に依存するため、患者の訴えを丁寧に聴取する。
無理をさせない
過度の活動を強制せず、患者の状態に合わせて支援する。
生活環境を整える
十分な休息を取れる環境を整備する(静かな寝室、快適な温度設定)。
心理的サポートを行う
倦怠感に対する不安やストレスを軽減するため、共感的に対応する。
継続的なフォローアップ
倦怠感の原因や症状の変化に応じてケア計画を調整する。
倦怠感(NANDA-I領域4)の看護計画を立案する上でのポイント
倦怠感(NANDA-I領域4)の看護計画(観察計画、援助計画、行動計画)は、以下のポイントに注意をして立案すると良いでしょう。
観察計画(O-P)の立案ポイント
患者の倦怠感の程度、身体的症状、心理的状態を観察します。
生活リズムや環境要因も確認します。
援助計画(T-P)の立案ポイント
患者の状態に合わせた休息と活動のバランスを支援します。
必要に応じて、生活習慣の改善や心理的ケアを提供します。
教育計画(E-P)の立案ポイント
患者とその家族に、倦怠感の原因や対策、生活習慣の改善方法を説明します。
倦怠感(NANDA-I領域4)の看護計画の記載例・書き方
看護診断 | #1 倦怠感 |
患者目標 | 長期目標:日常生活を無理なく遂行できる。 短期目標:1週間以内に、1日の活動時間を30分増やせる。 |
観察計画(O-P) | 倦怠感の程度をスケールで評価し、記録する。 バイタルサイン(血圧、心拍数、体温)を定期的に測定する。 食事摂取量や栄養状態を確認する。 睡眠の質と時間を評価する。 日常生活活動(ADL)の遂行状況を観察する。 |
援助計画(T-P) | 規則正しい生活リズムを確立するための計画を立てる。 軽いストレッチや散歩など、無理のない範囲で運動を提案する。 十分な休息を取るための環境を整備する(静かな空間、適切な寝具)。 バランスの取れた栄養摂取をサポートする。 倦怠感が強いときは家事や仕事を一時的に軽減するよう提案する。 リラクゼーション法(深呼吸、瞑想)を指導する。 抑うつや不安が見られる場合は心理的ケアを提供する。 必要に応じて医師に相談し、薬物療法を検討する。 進捗を記録し、患者と一緒に改善状況を確認する。 患者が目標を達成した際にはポジティブなフィードバックを行う。 |
教育計画(E-P) | 倦怠感の原因と対処法を患者に説明する。 バランスの取れた食事の重要性を伝える。 適切な運動と休息の取り方を指導する。 睡眠の質を改善するための環境整備を提案する。 ストレス管理法やリラクゼーション法を紹介する。 倦怠感が続く場合の相談窓口を患者と家族に知らせる。 活動と休息のバランスを取る生活スケジュールを提案する。 家族に患者の状態を理解してもらい、支援を依頼する。 日々の疲労感を記録する方法を教え、進捗を確認する習慣を促す。 必要に応じて地域資源(訪問看護、リハビリサービス)の利用を勧める。 |
看護計画作成におけるルールは、コチラの記事(【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】)を参考にしてください!
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倦怠感(NANDA-I領域4)の看護記録(SOAP)の記載例・書き方
看護診断 (看護問題) | 倦怠感 |
S(主観的情報) | 「体がだるくて、何をする気にもなれません。」 「寝ても疲れが取れません。」 |
O(客観的情報) | 睡眠時間:6時間未満/日。 食事摂取量が通常の70%。 歩行距離が100m以下で息切れを訴える。 |
A(評価) | 身体的疲労と心理的ストレスにより、倦怠感が持続している。生活習慣の改善と心理的ケアが必要。 |
P(計画) | 倦怠感のスケール評価を毎日実施し、症状を記録する。 規則正しい生活スケジュールを提案し、実行を支援する。 バランスの取れた栄養摂取をサポートするため、栄養士と連携する。 リラクゼーション法(深呼吸、瞑想)を指導する。 軽い散歩を1日10分から開始し、徐々に時間を増やす。 睡眠の質を改善するための環境整備を提案する。 必要に応じて医師と相談し、薬物療法を検討する。 家族に患者の状態を共有し、サポートを依頼する。 倦怠感が強い場合は、家事や仕事の負担軽減を提案する。 週1回の進捗確認を実施し、計画を適宜見直す。 |
看護記録(SOAP)作成におけるルールは、コチラの記事看護記録(【完全保存版】「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応)を参考にしてください!
【完全保存版】看護記録「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応】
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NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例まとめ
当サイトでは、今回ご紹介した領域の他にも、NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例を多数まとめています。
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看護記録(SOAP)の記載例
看護計画の記載例
引用・参考文献
T. ヘザー・ハードマン 編,上鶴 重美 訳:NANDA-I看護診断 定義と分類 2020-2023.医学書院.