当サイトでは、看護学生や新人看護師のために、NANDA-Iの看護診断に基づく看護計画&看護記録の記載例・書き方を多数ご紹介しています。
今回は、NANDA-I領域11の看護診断「感染リスク状態」の患者の観察ポイントを解説してまいります。
感染リスク状態は、看護診断の中でも使用頻度が高く、しっかりと抑えておくべき診断の一つです。
記事の最後には、看護計画と看護記録(SOAP)の記載例を公開しており、すべてコピペ可です。
あくまでも一例であり、所属している病院や法人によって、書き方やルールは異なる場合も考えられますので、各自カスタマイズしてご活用ください。
感染リスク状態(NANDA-I領域11)とは
感染リスク状態とは、病原体(細菌、ウイルス、真菌、寄生虫など)に対する防御機能が低下しており、感染を発症する可能性が通常より高まっている状態を指します。
この状態は、免疫力の低下、皮膚や粘膜のバリア機能の破壊、手術後、侵襲的医療機器の使用、あるいは栄養不良など、様々な要因によって引き起こされます。
感染リスク状態(NANDA-I領域11)の原因
感染リスク状態を引き起こす主な原因は以下の通りです。
免疫力の低下
高齢、乳幼児、慢性疾患(糖尿病、がんなど)、免疫抑制剤の使用、HIV感染などが挙げられます。
皮膚・粘膜の損傷
褥瘡、手術創、火傷、皮膚の乾燥やひび割れがあると、外部からの病原体の侵入リスクが高まります。
侵襲的医療機器の使用
留置カテーテル、人工呼吸器、中心静脈カテーテルなどの医療器具は感染の入り口となる場合があります。
栄養不良や生活習慣
バランスの悪い食事、睡眠不足、ストレス過多は免疫系の働きを低下させます。
衛生環境の不備
適切な手洗いや消毒が行われていない環境では、病原体にさらされる機会が増加します。
感染リスク状態(NANDA-I領域11)の評価方法
感染リスク状態を評価する際には、以下の方法が用いられます。
身体的評価
- 発熱、局所の発赤、腫脹、疼痛、膿の有無を確認します。
- 褥瘡や手術創など、病原体の侵入しやすい部位を観察します。
- バイタルサイン(体温、脈拍、呼吸数、血圧)を測定します。
検査
- 白血球数、C反応性蛋白(CRP)など、感染の指標となる血液検査を行います。
- 尿、血液、喀痰などの培養検査で病原体を特定します。
患者背景の評価
- 基礎疾患の有無(糖尿病、慢性腎不全、がんなど)。
- 使用中の医療器具の種類や期間。
- 最近の手術歴や医療処置の有無。
環境的要因
- 病室や家庭環境の清潔さ。
- 看護者や介護者の感染予防策の実施状況。
感染リスク状態(NANDA-I領域11)の治療方法
感染リスク状態の治療は、原因や症状に応じて以下の方法を行います。
原因除去
感染リスクのある器具(例:カテーテル)の早期除去や交換を検討します。
創部の清潔を保ち、ドレッシング交換を適切に行います。
感染予防策
手洗いやアルコール消毒を徹底します。
個人防護具(手袋、マスク、エプロンなど)の適切な使用を徹底します。
必要に応じて、隔離や感染経路遮断のための予防策を講じます。
支持療法
栄養補給、十分な水分摂取、適切な休養を確保し、患者の免疫力を高めます。
疼痛や発熱などの症状がある場合は対症療法を行います。
薬物療法
必要に応じて抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬を使用します。薬剤選択は病原体や患者の状態に基づきます。
感染リスク状態(NANDA-I領域11)の患者をケアする上で気をつけること
感染リスク状態の患者をケアする際には、以下の点に注意する必要があります。
清潔を保つ
患者の皮膚や粘膜、創部を清潔に保ち、感染の入口を防ぎます。
早期発見と報告
発熱や感染兆候(発赤、腫脹、疼痛、膿)の早期発見と速やかな報告が重要です。
環境管理
病室の消毒、リネン交換の徹底を行い、清潔な環境を維持します。
患者教育
感染予防のための手洗いや適切な衛生習慣を患者や家族に指導します。
チーム連携
医師や他の医療スタッフと連携してケアを進め、患者の状態を総合的に管理します。
感染リスク状態(NANDA-I領域11)の看護計画を立案する上でのポイント
感染リスク状態の看護計画(観察計画、援助計画、行動計画)は、以下のポイントに注意をして立案すると良いでしょう。
観察計画(O-P)の立案ポイント
感染リスクの高い部位や症状を注意深く観察し、変化を記録することが大切です。
特に、発熱や局所的な感染徴候(例:腫脹、発赤、疼痛)を見逃さないようにします。
また、患者の基礎疾患や免疫抑制の程度を考慮し、状態に応じた重点観察を行います。
援助計画(T-P)の立案ポイント
患者の皮膚や粘膜の清潔を保つ援助を提供します。
手洗いや感染予防策の実践を支援し、医療器具の適切な管理を行います。
患者が体力を維持できるよう、栄養補給や水分摂取を支援することも重要です。
教育計画(E-P)の立案ポイント
患者とその家族に感染予防策の必要性を理解してもらうため、わかりやすく説明します。
手洗いや創部管理の方法、体調の変化に応じた対応を指導し、自宅での予防策の継続を支援します。
感染リスク状態(NANDA-I領域11)の看護計画の記載例・書き方
看護診断 | #1 感染リスク状態 |
患者目標 | 長期目標:感染の発症を防ぎ、安全に療養生活を送ることができる。 短期目標:感染兆候が現れず、患者の皮膚や粘膜が保護されている状態を維持できる。 |
観察計画(O-P) | 患者の体温、脈拍、呼吸数を毎日測定し、変化を記録する。 創部や皮膚の発赤、腫脹、疼痛の有無を確認する。 尿や痰、血液の培養結果をモニタリングする。 白血球数やCRPなどの感染マーカーを定期的に確認する。 使用中の医療器具の挿入部位を観察し、感染兆候を確認する。 患者の栄養状態や体重変化を記録する。 感染経路となりうる環境因子(清掃状況やリネンの状態)を確認する。 手洗いや消毒の実施状況を確認する。 家族や介護者が感染予防策を実践できているか観察する。 患者の主観的な訴え(例:だるさや熱感)を記録する。 |
援助計画(T-P) | 手洗いや消毒の方法を実践し、患者と環境を清潔に保つ。 創部のドレッシング交換を適切なタイミングで行う。 必要に応じて保湿剤を使用し、皮膚の乾燥を防ぐ。 栄養補給や水分摂取を促し、患者の体力を維持する。 ベッドやリネンを清潔に保ち、病室の環境を整える。 感染予防具(手袋、マスクなど)を適切に使用する。 感染兆候がある場合は速やかに医師に報告し、指示を仰ぐ。 患者の体位を適切に管理し、圧迫や摩擦を防ぐ。 医療器具を使用する際は、適切な挿入・維持管理を行う。 心理的サポートを提供し、感染リスクに対する不安を軽減する。 |
教育計画(E-P) | 手洗いの重要性と正しい方法を患者と家族に指導する。 創部ケアの方法や注意点を説明する。 感染リスクを低下させる生活習慣(バランスの取れた食事、十分な休養)を指導する。 使用する医療器具の取り扱い方法を家族に説明する。 発熱や局所感染の兆候が出た場合の対応方法を指導する。 家庭環境での感染予防策(清掃や換気の実施方法)を説明する。 感染リスクが高まる要因について患者に理解してもらう。 衛生的な食品の取り扱いや調理法を指導する。 免疫力を高める生活習慣(軽い運動やストレス管理)を説明する。 感染予防に関する疑問や不安をいつでも相談できる体制を整える。 |
看護計画作成におけるルールは、コチラの記事(【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】)を参考にしてください!
【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】
続きを見る
感染リスク状態(NANDA-I領域11)の看護記録(SOAP)の記載例・書き方
看護診断 (看護問題) | 感染リスク状態 |
S(主観的情報) | 「最近体がだるく、熱っぽい感じがします。」 「傷口が少し痛むような気がします。」 |
O(客観的情報) | 体温:37.8℃、脈拍:90回/分。 手術創部が発赤しており、軽度の腫脹がみられる。 白血球数が基準値を超過、CRPが上昇。 留置カテーテル挿入部位が発赤し、触れると痛みがある。 |
A(評価) | 感染リスクが高い状態にあり、早期介入が必要である。 |
P(計画) | バイタルサインを毎日測定し、感染徴候の変化を観察する。 創部を清潔に保ち、消毒とドレッシング交換を実施する。 感染予防具を着用し、感染経路を遮断する。 白血球数やCRPを定期的に測定し、治療の効果を確認する。 必要に応じて抗菌薬の使用を医師に提案する。 栄養補給を支援し、患者の免疫力を維持する。 感染予防のため、家族に手洗いや衛生管理を指導する。 症状の変化や悪化の兆候を迅速に医師に報告する。 医療器具の管理方法を見直し、感染リスクを軽減する。 心理的サポートを提供し、患者の不安を軽減する。 |
看護記録(SOAP)作成におけるルールは、コチラの記事看護記録(【完全保存版】「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応)を参考にしてください!
【完全保存版】看護記録「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応】
続きを見る
NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例まとめ
当サイトでは、今回ご紹介した領域の他にも、NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例を多数まとめています。
ぜひ、日々の業務のご活用ください!
看護記録(SOAP)の記載例
看護計画の記載例
引用・参考文献
T. ヘザー・ハードマン 編,上鶴 重美 訳:NANDA-I看護診断 定義と分類 2020-2023.医学書院.