当サイトでは、看護学生や新人看護師のために、NANDA-Iの看護診断に基づく看護計画&看護記録の記載例・書き方を多数ご紹介しています。
今回は、NANDA-I領域12の看護診断「急性疼痛」の患者の観察ポイントを解説してまいります。
急性疼痛は、看護診断の中でも使用頻度が高く、しっかりと抑えておくべき診断の一つです。
記事の最後には、看護計画と看護記録(SOAP)の記載例を公開しており、すべてコピペ可です。
あくまでも一例であり、所属している病院や法人によって、書き方やルールは異なる場合も考えられますので、各自カスタマイズしてご活用ください。
急性疼痛(NANDA-I領域12)とは
急性疼痛とは、組織の損傷や炎症に伴って生じる一時的な痛みを指します。
通常、急性疼痛は組織損傷が修復されると軽減し、治癒する痛みです。
この痛みは体の防御反応の一環であり、損傷部位を保護し、さらなる損傷を防ぐ役割があります。
急性疼痛の適切な評価と管理は、患者のQOL(生活の質)を維持し、慢性痛への移行を防ぐために重要です。
急性疼痛(NANDA-I領域12)の原因
急性疼痛(NANDA-I領域12)を引き起こす主な原因は以下の通りです。
外傷
- 骨折、捻挫、打撲などの物理的な損傷
- 火傷や切り傷などの皮膚損傷
手術後の疼痛
- 手術部位の炎症や損傷による痛み
炎症性疾患
- 虫垂炎、胆石、膵炎などの炎症による痛み
感染症
- 中耳炎や尿路感染症などによる炎症性の痛み
その他の要因
- 内臓痛(例:心筋梗塞、腎結石)
- 生理的変化(例:分娩、月経痛)
急性疼痛(NANDA-I領域12)の評価方法
急性疼痛(NANDA-I領域12)を評価する際には、患者が感じる痛みの特徴や程度を詳細に把握することが必要です。
痛みの特徴を聴取する
- 痛みの部位:痛みがどこにあるのか
- 痛みの強さ:痛みのスケール(例:NRS: 0~10で評価)
- 痛みの性質:鋭い痛み、鈍い痛み、灼熱感など
- 痛みの持続時間:いつから始まったのか、断続的か持続的か
- 誘因・緩和因子:何が痛みを悪化させるか、または緩和させるか
身体的観察
- 患者の表情や姿勢、動作(例:顔をしかめる、特定の部位をかばう)
- バイタルサイン(例:心拍数、血圧、呼吸数の上昇)
痛みの影響を評価
- 日常生活や睡眠、食欲への影響を確認
- 患者の感情的反応(不安、イライラ、抑うつ)を評価する
評価ツールの活用
- 痛みスケール:NRS(Numerical Rating Scale)、VAS(Visual Analog Scale)
- 痛み評価シート:痛みの種類や場所を記録する
急性疼痛(NANDA-I領域12)の治療方法
急性疼痛(NANDA-I領域12)の治療は、痛みの原因に基づいて行われます。
痛みを軽減し、患者が早期に日常生活に復帰できるよう支援します。
薬物療法
- 鎮痛薬:アセトアミノフェン、NSAIDs(イブプロフェン、ロキソプロフェンなど)
- オピオイド:中等度から重度の痛みに対して使用(モルヒネ、フェンタニルなど)
- 局所麻酔薬:リドカインパッチやジェル
- 補助薬:抗けいれん薬や抗うつ薬(神経痛の併発時)。
非薬物療法
- 冷却・温罨法:炎症や腫れを軽減する
- リラクゼーション法:深呼吸や瞑想で痛みを和らげる
- 理学療法:軽度の運動やストレッチ
原因治療
- 感染症の場合は抗菌薬、炎症性疾患の場合は抗炎症薬を併用する
- 骨折や脱臼の場合は整復や固定を行う
心理的支援
- 患者が痛みに対して不安を感じている場合は、心理的な安心感を与える
急性疼痛(NANDA-I領域12)の患者をケアする上で気をつけること
急性疼痛(NANDA-I領域12)の患者をケアする際には、以下の点に注意する必要があります。
早期の痛み評価と介入
- 痛みが軽減されない場合は、速やかに医師に報告し治療計画を見直す
患者の訴えを尊重する
- 痛みの主観的な訴えを軽視せず、真摯に受け止める
副作用のモニタリング
鎮痛薬の副作用(胃腸障害、眠気、便秘など)を観察する
日常生活への影響を軽減する
- 患者が痛みを和らげる体位や環境を整える
心理的ケア
- 痛みに伴う不安や恐怖を軽減するため、傾聴や励ましを行う
急性疼痛(NANDA-I領域12)の看護計画を立案する上でのポイント
急性疼痛(NANDA-I領域12)の看護計画(観察計画、援助計画、行動計画)は、以下のポイントに注意をして立案すると良いでしょう。
観察計画(O-P)の立案ポイント
患者の痛みの強さや性質、影響を観察します。
薬物療法や非薬物療法の効果も確認します。
援助計画(T-P)の立案ポイント
薬物療法や非薬物療法を組み合わせ、患者が快適に過ごせる環境を提供します。
また、患者のニーズに応じた体位の調整や心理的サポートを行います。
教育計画(E-P)の立案ポイント
患者に対し、痛みの軽減方法や薬物の正しい使用方法を説明します。
必要に応じて、日常生活での注意点も指導します。
急性疼痛(NANDA-I領域12)の看護計画の記載例・書き方
看護診断 | #1 急性疼痛 |
患者目標 | 長期目標:痛みをコントロールし、日常生活に復帰できる。 短期目標:24時間以内に痛みの軽減を実感できる。 |
観察計画(O-P) | 痛みの強さをNRSで評価し、変化を記録する。 痛みの性質や部位、持続時間を確認する。 鎮痛薬投与後の効果と副作用を観察する。 患者の表情や行動を観察し、痛みの影響を確認する。 バイタルサインの変化(血圧、心拍数、呼吸数)をモニタリングする。 日常生活(睡眠、食事)の支障状況を評価する。 患者が訴える不安やストレスの有無を確認する。 冷罨法や温罨法の効果を観察する。 |
援助計画(T-P) | 医師の指示に基づき、鎮痛薬を適切に投与する。 患者の痛みを軽減するための体位を調整する。 冷罨法または温罨法を使用し、痛みを和らげる。 リラクゼーション法(深呼吸、瞑想)を患者に指導する。 患者が痛みを訴えた場合、速やかに医師に報告する。 適切な環境(静かで快適な部屋)を提供する。 日常生活の中で痛みを軽減する方法(緩やかな動作など)を提案する。 患者の不安を軽減するため、傾聴と心理的支援を行う。 鎮痛薬の副作用が見られた場合、速やかに対応する。 必要に応じて、理学療法士や心理士と連携する。 |
教育計画(E-P) | 鎮痛薬の服用方法と注意点を説明する。 冷罨法や温罨法の適切な使用方法を指導する。 痛みを緩和するための簡単な体位や姿勢を教える。 痛みが軽減しない場合の対応方法(報告先、相談窓口)を説明する。 日常生活での注意点(無理な動作の回避)を指導する。 リラクゼーション法を紹介し、自宅で実践できる方法を教える。 痛みが予想される場合の対処法を患者と一緒に考える。 痛みの記録をつける重要性と具体的な方法を説明する。 家族に患者の痛みへの理解と支援の重要性を説明する。 痛みが改善した場合、日常生活への復帰プランを話し合う。 |
看護計画作成におけるルールは、コチラの記事(【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】)を参考にしてください!
【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】
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急性疼痛(NANDA-I領域12)の看護記録(SOAP)の記載例・書き方
看護診断 (看護問題) | 急性疼痛 |
S(主観的情報) | 「足がズキズキ痛くて、じっとしていると少し楽になります。」 |
O(客観的情報) | 痛みの強さ:NRS7/10。 右足の腫脹と発赤を認める。 鎮痛薬(ロキソプロフェン)投与後30分でNRS4/10に軽減。 |
A(評価) | 右足の炎症による急性疼痛が認められる。鎮痛薬により一定の効果が見られるが、さらなる管理が必要。 |
P(計画) | ロキソプロフェンを医師の指示通り投与する。 冷罨法を1日3回、20分間実施する。 痛みの強さを4時間ごとに評価し、記録する。 患者が快適な体位を取れるよう支援する。 痛みが強まった場合は、医師に報告する。 鎮痛薬の副作用(胃腸障害)の有無を観察する。 リラクゼーション法を指導し、不安軽減を図る。 再評価を行い、必要に応じて計画を調整する。 |
看護記録(SOAP)作成におけるルールは、コチラの記事看護記録(【完全保存版】「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応)を参考にしてください!
【完全保存版】看護記録「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応】
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NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例まとめ
当サイトでは、今回ご紹介した領域の他にも、NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例を多数まとめています。
ぜひ、日々の業務のご活用ください!
看護記録(SOAP)の記載例
看護計画の記載例
引用・参考文献
T. ヘザー・ハードマン 編,上鶴 重美 訳:NANDA-I看護診断 定義と分類 2020-2023.医学書院.