当サイトでは、看護学生や新人看護師のために、NANDA-Iの看護診断に基づく看護計画&看護記録の記載例・書き方を多数ご紹介しています。
今回は、NANDA-I領域9の看護診断「非効果的コーピング」の患者の観察ポイントを解説してまいります。
非効果的コーピングは、看護診断の中でも使用頻度が高く、しっかりと抑えておくべき診断の一つです。
記事の最後には、看護計画と看護記録(SOAP)の記載例を公開しており、すべてコピペ可です。
あくまでも一例であり、所属している病院や法人によって、書き方やルールは異なる場合も考えられますので、各自カスタマイズしてご活用ください。
非効果的コーピング(NANDA-I領域9)とは
非効果的コーピングとは、ストレスや困難な状況に直面した際に、適応的または効果的に対応できない状態を指します。
この状態では、問題解決が困難になり、身体的、精神的な健康に悪影響を及ぼすことがあります。
適切な支援を通じて、患者がより効果的な対処方法を学ぶことが目標となります。
非効果的コーピング(NANDA-I領域9)の原因
非効果的コーピング(NANDA-I領域9)を引き起こす主な原因は以下の通りです。
ストレスや問題の性質
- 慢性的な疾患や痛み
- 突然の健康状態の悪化(例:病気の診断、障害の発生)
- 家族や仕事の問題、経済的な困難
個人的要因
- コーピングスキルの欠如
- 過去の失敗体験やトラウマ
- 自尊感情の低下、不安、抑うつ
社会的要因
- 支援体制の不足(例:家族や友人の不在)
- 社会的孤立や環境の変化
その他の要因
- 性格特性(例:完璧主義、回避的行動)
- 精神疾患(例:適応障害、依存症)
非効果的コーピング(NANDA-I領域9)の評価方法
非効果的コーピング(NANDA-I領域9)を評価する際には、患者の言動や背景、感情的反応を詳細に観察します。
患者の主観的な訴え
- 「どうすればいいのかわからない」「すべてがうまくいかない」などの発言
- 気持ちの不安定さや絶望感の表出
行動の観察
- 回避行動(例:治療やケアへの非協力)
- 過剰な依存や攻撃的行動
- 不健康な習慣(例:過食、飲酒、喫煙、睡眠不足)
心理的反応
- イライラ、不安、抑うつなどの情緒的変化
- 集中力の低下や意思決定能力の減退
生活状況の確認
- 家庭や職場での人間関係の問題
- 支援体制や社会的孤立の有無を確認
ストレス評価スケールの活用
- ストレス診断や心理テストを活用し、ストレスレベルや対処能力を評価
非効果的コーピング(NANDA-I領域9)の治療方法
非効果的コーピング(NANDA-I領域9)の治療は、患者が効果的なコーピングスキルを学び、ストレスを軽減できるよう支援することを目的とします。
心理教育
- ストレスや感情の管理方法を学ぶ
- コーピングスタイルの評価と改善
心理療法
- 認知行動療法(CBT):否定的な思考パターンを修正し、適応的な行動を促進
- リラクゼーション療法:深呼吸、瞑想、マインドフルネスを実践
- ソリューションフォーカストアプローチ:具体的な解決策を見つける支援
環境調整
- 家族や友人との連携を強化し、支援体制を整える
- 環境のストレス要因を特定し、可能な限り除去または軽減する
薬物療法
- 不安や抑うつが強い場合、抗不安薬や抗うつ薬を使用することも検討される
社会的支援の活用
- 医療ソーシャルワーカーや地域資源を活用し、患者の孤立感を軽減
非効果的コーピング(NANDA-I領域9)の患者をケアする上で気をつけること
非効果的コーピング(NANDA-I領域9)の患者をケアする際には、以下の点に注意する必要があります。
患者の感情を尊重する
- 不安や絶望感を否定せず、共感的に対応する
無理のないペースで進める
- 患者の状態に合わせ、段階的な支援を提供する
積極的な支援体制の構築
- 家族や友人、医療スタッフとの連携を強化する。
自己効力感を高める
- 小さな成功体験を通じて、自信を回復させる
患者の意欲を引き出す
- 短期的な目標を設定し、達成感を感じられるよう支援する
非効果的コーピング(NANDA-I領域9)の看護計画を立案する上でのポイント
非効果的コーピング(NANDA-I領域9)の看護計画(観察計画、援助計画、行動計画)は、以下のポイントに注意をして立案すると良いでしょう。
観察計画(O-P)の立案ポイント
患者の言動や感情の変化、ストレスの原因となる環境を観察します。
身体的な影響(食欲低下、睡眠不足、疲労感)も確認します。
援助計画(T-P)の立案ポイント
心理教育やリラクゼーションを通じて、患者がストレスに適応できるよう支援します。
支援体制の強化と小さな成功体験を提供することが重要です。
教育計画(E-P)の立案ポイント
患者とその家族にストレス管理の方法やリラクゼーション技術を指導し、コーピングスキルの向上を目指します。
非効果的コーピング(NANDA-I領域9)の看護計画の記載例・書き方
看護診断 | #1 非効果的コーピング |
患者目標 | 長期目標:ストレスを適切に管理し、問題解決能力が向上できる 短期目標:1週間以内にストレスの原因を具体的に言語化できる |
観察計画(O-P) | 患者のストレス反応(言動、感情)を観察する。 ストレスの原因となっている要因を特定する。 睡眠や食事のパターンを記録し、変化を確認する。 患者の対処行動(回避、依存、攻撃)の種類を観察する。 家族や友人との関係性を評価する。 ストレスによる身体症状(頭痛、動悸、倦怠感)の有無を確認する。 患者の自尊感情や自己評価の低下を観察する。 不安や抑うつの兆候を定期的に評価する。 患者が使用しているコーピング方法の有効性を評価する。 サポートを受けた際の患者の反応を確認する。 |
援助計画(T-P) | 患者が感じているストレスを聴取し、共感的に対応する。 簡単なリラクゼーション技術(深呼吸、瞑想)を指導する。 ストレスを分解し、具体的な解決策を見つける手助けをする。 患者の小さな成功体験を評価し、達成感を得られるよう支援する。 家族や友人との対話の場を設け、支援を強化する。 支援団体やカウンセリングサービスを紹介する。 必要に応じて医師に相談し、薬物療法を検討する。 患者がリラックスできる環境を整える。 ストレス日誌を記録するよう提案し、自己理解を促す。 再発防止のためのコーピングスキルを強化するプランを提供する。 |
教育計画(E-P) | ストレス管理の基本的な方法(リラクゼーション、運動)を説明する。 簡単に実践できるマインドフルネス技術を指導する。 支援を受ける重要性と方法(家族、地域資源)を説明する。 患者が抱える問題を具体的に捉え、解決策を提案する。 ネガティブな考え方をポジティブに転換する方法を指導する。 家族に患者のストレス軽減のための具体的なサポート方法を教える。 ストレスが及ぼす身体的影響について説明し、ケアの重要性を強調する。 ストレスの原因を早期に特定し、適切な対応を取る方法を教える。 日常生活の中で楽しい活動を取り入れる重要性を指導する。 自己効力感を高める方法を患者と一緒に検討する。 |
看護計画作成におけるルールは、コチラの記事(【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】)を参考にしてください!
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非効果的コーピング(NANDA-I領域9)の看護記録(SOAP)の記載例・書き方
看護診断 (看護問題) | 非効果的コーピング |
S(主観的情報) | 「何をしても解決しない気がして、どうしたらいいかわかりません。」 |
O(客観的情報) | 食欲不振、体重減少2kg/週を認める。 睡眠時間が3時間未満で、日中に強い疲労感を訴える。 過去3日間、ストレスについての会話を避ける様子が見られる。 |
A(評価) | ストレスに対する効果的な対処ができておらず、身体的および心理的影響が現れている状態。 |
P(計画) | 毎日10分間のリラクゼーション法を練習する時間を設ける。 ストレスの具体的な原因を話し合い、リスト化する。 支援団体を紹介し、患者が利用できるようサポートする。 食事の量を増やすための工夫を提案し、栄養士と連携する。 医師に相談し、必要であれば抗不安薬の処方を検討する。 毎日、患者が感謝できることを記録する日誌を提案する。 家族に患者の不安を軽減するための具体的なサポート方法を説明する。 ストレス日誌を活用し、自己理解と適応能力を高める練習を行う。 患者の努力を評価し、ポジティブなフィードバックを行う。 再評価を1週間後に行い、進捗に応じて計画を調整する。 |
看護記録(SOAP)作成におけるルールは、コチラの記事看護記録(【完全保存版】「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応)を参考にしてください!
【完全保存版】看護記録「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応】
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NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例まとめ
当サイトでは、今回ご紹介した領域の他にも、NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例を多数まとめています。
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看護記録(SOAP)の記載例
看護計画の記載例
引用・参考文献
T. ヘザー・ハードマン 編,上鶴 重美 訳:NANDA-I看護診断 定義と分類 2020-2023.医学書院.