当サイトでは、看護学生や新人看護師のために、NANDA-Iの看護診断に基づく看護計画&看護記録の記載例・書き方を多数ご紹介しています。
今回は、NANDA-I領域5の看護診断「知識不足」の患者の観察ポイントを解説してまいります。
急性疼痛は、看護診断の中でも使用頻度が高く、しっかりと抑えておくべき診断の一つです。
記事の最後には、看護計画と看護記録(SOAP)の記載例を公開しており、すべてコピペ可です。
あくまでも一例であり、所属している病院や法人によって、書き方やルールは異なる場合も考えられますので、各自カスタマイズしてご活用ください。
知識不足(NANDA-I領域5)とは
知識不足とは、患者や家族が健康状態、治療法、自己管理の方法について十分な情報を持たず、その結果、健康維持や回復が妨げられる状態を指します。
患者が正しい知識を持たないと、治療やケアへの非協力的な態度、誤った行動、再発のリスク増加につながる可能性があります。
この看護診断は、教育や指導を通じて改善を目指す重要な介入対象です。
知識不足(NANDA-I領域5)の原因
知識不足(NANDA-I領域5)を引き起こす主な原因は以下の通りです。
患者側の要因
- 健康教育の機会が十分に提供されていない
- 知識を受け入れる準備が整っていない(例:不安やストレスで集中できない)
- 認知機能や学習能力の低下(例:高齢者、認知症患者)
医療提供側の要因
- 情報提供が不十分、または専門用語が多く分かりにくい説明
- 教育方法が患者の学習スタイルに合っていない
社会的要因
- 情報源へのアクセスが制限されている(例:インターネット環境の未整備)
- 言語や文化の違いによる情報ギャップ
知識不足(NANDA-I領域5)の評価方法
知識不足(NANDA-I領域5)を評価する際には、患者や家族が現在持っている情報量やその理解度を確認します。
主観的情報の確認
- 「治療について十分に理解していますか?」
- 「何か不安に思っていることはありますか?」
客観的情報の確認
- 健康行動や治療への取り組みが適切であるかを観察
- 説明後の内容理解度を評価(例:患者が自分の言葉で説明できるか)
学習スタイルの評価
- 視覚、聴覚、体験型など、患者に適した教育方法を確認
知識の欠如を特定する
- 具体的にどの部分の知識が不足しているかを特定(例:病気の原因、治療法、副作用)
知識不足(NANDA-I領域5)の治療方法
知識不足(NANDA-I領域5)への対応には、患者の理解度や学習スタイルに合わせた教育が必要です。
教育内容の明確化
- 患者が必要としている情報を具体的に特定し、分かりやすく説明
個別指導の実施
- 患者が理解しやすい方法(視覚資料、動画、模型など)を活用
- 小さなステップで情報を提供し、過剰な負担を避ける
繰り返しと確認
- 重要な情報は繰り返し伝え、患者が理解したか確認
- 確認方法として、「ティーチバック法」(患者が説明内容を自分の言葉で繰り返す)を活用
社会資源の利用
- 患者が自宅でも活用できる情報源(パンフレット、ウェブサイト、サポートグループなど)を紹介
知識不足(NANDA-I領域5)の患者をケアする上で気をつけること
知識不足(NANDA-I領域5)の患者をケアする際には、以下の点に注意する必要があります。
- 専門用語を避け、患者が理解できる言葉を用いる。
- 患者が質問しやすい雰囲気を作る。
- 患者が不安やストレスを抱えている場合は、心理的サポートも併せて行う。
- 家族や介護者への教育も同時に行い、患者を支える体制を整える。
- 学習速度や理解度は個人差があるため、焦らず丁寧に説明を進める。
知識不足(NANDA-I領域5)の看護計画を立案する上でのポイント
知識不足(NANDA-I領域5)の看護計画(観察計画、援助計画、行動計画)は、以下のポイントに注意をして立案すると良いでしょう。
観察計画(O-P)の立案ポイント
患者や家族の現在の知識レベルを評価し、不足している情報を特定します。
また、患者の反応や学習意欲を観察し、学習スタイルに合わせた指導方法を計画します。
援助計画(T-P)の立案ポイント
患者が必要な情報を正確に理解できるよう、多様な教育ツールを用いて指導します。
患者のペースに合わせて情報を提供し、学習に対する不安やストレスを軽減する支援を行います。
教育計画(E-P)の立案ポイント
患者と家族に対して、適切な情報を分かりやすく説明します。
また、情報提供後の確認作業を行い、確実に理解されていることを確認します。
地域資源や追加学習の方法も紹介します。
知識不足(NANDA-I領域5)の看護計画の記載例・書き方
看護診断 | #1 知識不足 |
患者目標 | 長期目標:病気や治療法について十分な知識を持ち、適切な自己管理ができる。 短期目標:自分の病気について基本的な知識を習得し、治療に積極的に取り組める。 |
観察計画(O-P) | 患者の現在の知識レベルを評価し、理解の程度を確認する。 患者が不安を抱いているポイントや情報の不足を観察する。 質問や疑問点を尋ねる頻度を確認し、関心度を把握する。 情報提供後の理解度を観察する(患者の反応や行動)。 |
援助計画(T-P) | 必要な情報を視覚的に分かりやすく提示する(図解、動画など)。 ティーチバック法を用い、患者が理解した内容を確認する。 患者が落ち着いて学習できる環境を整える。 必要に応じて通訳や文化的配慮を行う(言語や文化の違いがある場合)。 |
教育計画(E-P) | 病気の原因、経過、治療法について基本的な説明を行う。 日常生活で注意すべきポイント(食事、運動、服薬方法など)を具体的に指導する。 家族や介護者に対しても、患者支援に必要な情報を提供する。 地域のサポートグループや信頼できる情報源を紹介する。 |
看護計画作成におけるルールは、コチラの記事(【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】)を参考にしてください!
【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】
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知識不足(NANDA-I領域5)の看護記録(SOAP)の記載例・書き方
看護診断 (看護問題) | 知識不足 |
S(主観的情報) | 「糖尿病って何がいけないんですか?」 「薬を飲むだけで大丈夫なんですよね?」 |
O(客観的情報) | 患者は病気の基本的な知識が乏しい状態である。 食事の選択が適切でなく、糖質の多い食品を多く摂取している。 家族も糖尿病についての理解が十分ではない。 |
A(評価) | 糖尿病に関する知識不足が見られ、適切な自己管理が行われていない状態である。 |
P(計画) | 糖尿病の病態や治療法について、視覚資料を用いて説明する。 日常生活での注意点(食事管理、運動、血糖測定)を具体的に指導する。 ティーチバック法を用い、患者が理解した内容を確認する。 家族とともに教育セッションを行い、患者支援の体制を整える。 地域の糖尿病患者会や管理栄養士との相談を提案する。 |
看護記録(SOAP)作成におけるルールは、コチラの記事看護記録(【完全保存版】「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応)を参考にしてください!
【完全保存版】看護記録「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応】
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NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例まとめ
当サイトでは、今回ご紹介した領域の他にも、NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例を多数まとめています。
ぜひ、日々の業務のご活用ください!
看護記録(SOAP)の記載例
看護計画の記載例
引用・参考文献
T. ヘザー・ハードマン 編,上鶴 重美 訳:NANDA-I看護診断 定義と分類 2020-2023.医学書院.