当サイトでは、看護学生や新人看護師のために、NANDA-Iの看護診断に基づく看護計画&看護記録の記載例・書き方を多数ご紹介しています。
今回は、NANDA-I領域6の看護診断「ボディイメージ混乱」の患者の観察ポイントを解説してまいります。
感染リスク状態は、看護診断の中でも使用頻度が高く、しっかりと抑えておくべき診断の一つです。
記事の最後には、看護計画と看護記録(SOAP)の記載例を公開しており、すべてコピペ可です。
あくまでも一例であり、所属している病院や法人によって、書き方やルールは異なる場合も考えられますので、各自カスタマイズしてご活用ください。
ボディイメージ混乱(NANDA-I領域6)とは
ボディイメージ混乱とは、身体の見た目や機能に関する認識や感覚に不一致や混乱が生じる状態を指します。
事故や手術による身体的な変化、疾患による機能の喪失、加齢や美容への意識変化が原因となることがあります。
この状態に陥ると、自己像の喪失や低い自尊感情が現れ、心理的なストレスが増加する場合があります。
患者が身体の変化に適応できず、不安や抑うつ、社会的な引きこもりにつながるリスクが高まるため、適切なケアが必要です。
ボディイメージ混乱(NANDA-I領域6)の原因
ボディイメージ混乱(NANDA-I領域6)を引き起こす主な原因は以下の通りです。
身体的要因
- 外科手術後の身体的変化(例:乳房切除、人工肛門造設、四肢切断)
- 外傷(例:火傷、交通事故による損傷)
- 慢性疾患(例:糖尿病による切断、がん治療による外観の変化)
- 加齢に伴う外見の変化(例:しわ、体形の変化)
心理的要因
- 身体的変化への適応困難
- 低い自己肯定感や外見への強いこだわり
- 他者からの評価への過剰な恐怖心
社会的要因
- 周囲の偏見や差別的な態度
- 社会的役割の変化(例:就労制限)
- 支援ネットワークの欠如
ボディイメージ混乱(NANDA-I領域6)の評価方法
ボディイメージ混乱(NANDA-I領域6)を評価には、患者の身体的、心理的、社会的側面を包括的に確認することが必要です。
患者の主観的な意識の確認
- 「手術後、自分の体についてどう感じますか?」
- 「身体の変化が生活にどのような影響を与えていますか?」
心理的評価
- 不安や抑うつの有無を確認するためのスケール(例:HADS:Hospital Anxiety and Depression Scale)
行動観察
- 鏡を見ることを避ける、自己管理を怠るなどの行動を観察
社会的支援状況の把握
- 家族や友人からのサポートの有無
- 仕事や社会活動への影響
身体的評価
- 患者が指摘する身体的な不快感や具体的な変化点の確認
ボディイメージ混乱(NANDA-I領域6)の治療方法
ボディイメージ混乱(NANDA-I領域6)の治療は、身体的な問題への対応と心理的支援を組み合わせることが基本となります。
身体的アプローチ
- リハビリテーションを通じた身体機能の回復
- 義肢や補綴具の使用による身体イメージの補完
- 傷跡を目立たなくするための医療的介入(例:形成外科)
心理的アプローチ
- カウンセリングや心理療法(例:認知行動療法)による心理的サポート
- 患者が自己肯定感を高められるよう支援する
- ピアサポートグループへの参加
社会的アプローチ
- 家族や友人への教育を通じた支援強化
- 地域の社会資源(例:患者会、福祉サービス)の利用促進
- 職場や学校への復帰支援
ボディイメージ混乱(NANDA-I領域6)の患者をケアする上で気をつけること
ボディイメージ混乱(NANDA-I領域6)の患者に対しては、患者の自己尊重感を高め、安心感を提供する姿勢が求められます。
以下の点を意識してケアを行います。
- 患者の感情に寄り添い、身体的変化に対する否定的な思いを認める。
- 無理に身体の変化を受け入れさせようとしない。
- 他者と比較するのではなく、個人の価値を強調する。
- 必要に応じて専門家(心理士、作業療法士など)と連携する。
ボディイメージ混乱(NANDA-I領域6)の看護計画を立案する上でのポイント
ボディイメージ混乱(NANDA-I領域6)の看護計画(観察計画、援助計画、行動計画)は、以下のポイントに注意をして立案すると良いでしょう。
観察計画(O-P)の立案ポイント
患者の表情や態度、言葉から心理的負担の程度を評価します。
例えば、鏡を避ける行動や身体の一部を隠す仕草は、ボディイメージ混乱の兆候として捉えられます。
また、身体的変化による不快感や不便さが生活に与える影響を観察します。
援助計画(T-P)の立案ポイント
患者が自分の身体を受け入れられるような環境作りを目指します。
例えば、手術跡を隠す方法を提案したり、義肢や補綴具の装着を補助します。
また、リハビリや日常生活動作の訓練を通じて、患者の自立を支援します。
教育計画(E-P)の立案ポイント
患者や家族に対して、身体の変化に適応するための方法を説明します。
心理的負担を軽減するためのセルフケア技術を教えたり、地域のサポートグループへの参加を促したりします。
ボディイメージ混乱(NANDA-I領域6)の看護計画の記載例・書き方
看護診断 | #1 ボディイメージ混乱 |
患者目標 | 長期目標:身体の変化を受け入れ、自信を取り戻し、社会生活に復帰できる。 短期目標:身体の変化に対して少しずつ適応し、自分の価値を再確認できる。 |
観察計画(O-P) | 身体的変化に対する患者の言動や感情を観察する。 鏡を見る頻度や反応を確認する。 日常生活動作への影響の有無を観察する。 社会的な活動(友人との交流、外出など)への参加状況を確認する。 不安や抑うつの兆候を確認する。 |
援助計画(T-P) | 義肢や補綴具の選択や使用をサポートする。 リハビリを通じて、身体機能の向上を支援する。 鏡や写真を使用した自己認識の促進を行う。 手術跡を隠すための衣類や化粧品の使用を提案する。 ピアサポートグループや患者会への参加を促す。 生活環境の整備を行い、身体的な変化が生活の質を低下させないよう配慮する。 |
教育計画(E-P) | 身体の変化と適応について患者とその家族に説明する。 心理的負担を軽減する方法(例:リラクゼーション技術)を指導する。 地域の支援機関や福祉サービスの利用方法を教える。 義肢や補綴具の正しい使用法を指導する。 |
看護計画作成におけるルールは、コチラの記事(【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】)を参考にしてください!
【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】
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ボディイメージ混乱(NANDA-I領域6)の看護記録(SOAP)の記載例・書き方
看護診断 (看護問題) | ボディイメージ混乱 |
S(主観的情報) | 「手術後、自分の姿を見るのが怖くて、鏡を見られません。」 「外に出るのが恥ずかしくて、人に会いたくないです。」 |
O(客観的情報) | 患者は鏡を避け、体を隠す服装を選んでいる。 家族以外の人との交流を避けている。 義肢の装着を拒否している。 |
A(評価) | 身体的変化への適応が困難であり、自尊感情が低下している。 |
P(計画) | カウンセリングを提案し、心理的支援を提供する。 義肢装着に対する不安を聞き取り、必要に応じてリハビリスタッフと連携する。 患者の感情を尊重しながら、少しずつ鏡を使用する練習を進める。 地域のピアサポートグループへの参加を促す。 家族と連携し、患者が安心して生活できる環境を整備する。 |
看護記録(SOAP)作成におけるルールは、コチラの記事看護記録(【完全保存版】「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応)を参考にしてください!
【完全保存版】看護記録「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応】
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NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例まとめ
当サイトでは、今回ご紹介した領域の他にも、NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例を多数まとめています。
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看護記録(SOAP)の記載例
看護計画の記載例
引用・参考文献
T. ヘザー・ハードマン 編,上鶴 重美 訳:NANDA-I看護診断 定義と分類 2020-2023.医学書院.