当サイトでは、看護学生や新人看護師のために、NANDA-Iの看護診断に基づく看護計画&看護記録の記載例・書き方を多数ご紹介しています。
今回は、NANDA-I領域3の看護診断「便秘」の患者の観察ポイントを解説してまいります。
便秘は、看護診断の中でも使用頻度が高く、しっかりと抑えておくべき診断の一つです。
記事の最後には、看護計画と看護記録(SOAP)の記載例を公開しており、すべてコピペ可です。
あくまでも一例であり、所属している病院や法人によって、書き方やルールは異なる場合も考えられますので、各自カスタマイズしてご活用ください。
便秘(NANDA-I領域3)とは
便秘とは、排便回数が減少し、便が硬く、排便が困難になる状態を指します。
通常、排便の頻度は個人差がありますが、3日以上排便がない場合や、排便時に過度の努力が必要な場合、便秘と考えられます。
便秘は一時的なものから慢性的なものまで幅広く、患者の生活の質を大きく低下させる可能性があります。
便秘(NANDA-I領域3)の原因
便秘を引き起こす主な原因は以下の通りです。
生活習慣によるもの
- 水分摂取不足
- 食物繊維の不足
- 運動不足
- 不規則な排便習慣
身体的要因
- 大腸や直腸の機能異常(例:過敏性腸症候群、腸閉塞)
- 骨盤底筋群の機能障害
薬剤の影響
- 抗コリン薬、鎮痛薬、カルシウム拮抗薬、鉄剤など、一部の薬剤は便秘を引き起こす可能性があります。
疾患によるもの
- 糖尿病、甲状腺機能低下症、パーキンソン病などの慢性疾患
- 腫瘍による腸管圧迫
心理的要因
- ストレスや不安、うつ病
年齢や性別
- 高齢者や女性は便秘になりやすい傾向があります。
便秘(NANDA-I領域3)の評価方法
便秘を評価する際には、以下の方法が用いられます。
主観的症状の聴取
- 排便回数、便の硬さ、排便にかかる時間、排便後の残便感について尋ねます。
- 排便時の痛みや不快感の有無を確認します。
客観的な観察
- 腹部の膨満感や圧痛、鼓腸音の変化を確認します。
- 肛門周囲や直腸の状態(例:痔、直腸脱)を観察します。
検査
- 画像診断(例:腹部レントゲン、CTスキャン)で腸管の状態を確認します。
- 血液検査で電解質異常や基礎疾患をチェックします。
スケールを活用した評価
- ブリストル便形状スケール:便の形状を7段階で分類し、便秘の程度を把握します。
- ローマ基準:慢性便秘の診断基準として用いられます。
便秘(NANDA-I領域3)の治療方法
便秘の治療は、原因や症状に応じて以下の方法を行います。
生活習慣の改善
- 水分摂取量を1日1.5~2Lに増やす。
- 食物繊維を豊富に含む食品(野菜、果物、全粒穀物)を積極的に摂取する。
- 定期的な運動(ウォーキング、ヨガなど)を行い、腸の蠕動運動を促進する。
- 規則的な排便習慣をつける(毎日同じ時間にトイレに行くなど)。
薬物療法
- 軟便を作る薬剤:酸化マグネシウム、乳酸菌製剤
- 腸管運動を促進する薬剤:ルビプロストン、リナクロチド
- 浣腸や座薬:緊急時に使用するが、長期使用は避ける
補助療法
- 腸内環境を整えるため、プロバイオティクスを活用する。
- 腹部マッサージを行い、腸の動きを助ける。
医療的介入
- 重度の便秘や基礎疾患が疑われる場合、専門医による診察を受けます。
- 腸閉塞が疑われる場合は外科的治療が検討されます。
便秘(NANDA-I領域3)の患者をケアする上で気をつけること
便秘の患者をケアする際には、以下の点に注意する必要があります。
個別性の重視
- 患者の生活習慣や排便パターンを把握し、それに応じたケアを提供します。
心理的サポート
- 便秘によるストレスや不安を軽減するため、リラクゼーション法やカウンセリングを活用します。
適切な食事指導
- 患者の嗜好やアレルギーに配慮しながら、バランスの取れた食事を提案します。
排便習慣の支援
- 排便しやすい環境(プライバシーの確保、トイレの使いやすさ)を整えます。
- 排便時の体位(前かがみの姿勢)を指導します。
長期的な管理
- 便秘薬の乱用を避けるため、薬剤使用の頻度や効果をモニタリングします。
便秘(NANDA-I領域3)の看護計画を立案する上でのポイント
便秘の看護計画(観察計画、援助計画、行動計画)は、以下のポイントに注意をして立案すると良いでしょう。
観察計画(O-P)の立案ポイント
患者の排便パターンや便の性状を記録することが重要です。
また、腹部の膨満感や痛み、食欲不振などの随伴症状を観察します。
援助計画(T-P)の立案ポイント
患者が快適に排便できるよう、食事や運動のアドバイス、便秘薬の使用方法を説明します。
また、患者に合わせた排便習慣の確立を支援します。
教育計画(E-P)の立案ポイント
便秘の予防方法や生活習慣改善の重要性について患者とその家族に指導します。
薬剤の正しい使用方法や排便のサインについても説明します。
便秘(NANDA-I領域3)の看護計画の記載例・書き方
看護診断 | #1 便秘 |
患者目標 | 長期目標:快適に排便できる状態を維持できる 短期目標:3日以内に自力で排便をすることができる |
観察計画(O-P) | 排便の頻度、性状、量を記録する。 腹部の膨満感や痛みの有無を観察する。 食事内容や水分摂取量を記録する。 患者の排便時の姿勢やトイレの環境を確認する。 ブリストル便形状スケールを用いて便の状態を評価する。 薬剤の使用状況(種類、量、頻度)を確認する。 患者の運動量や活動レベルを観察する。 排便に対する患者の心理的な不安やストレスを聴取する。 尿量や脱水の兆候(口渇、皮膚の乾燥)を観察する。 便秘に伴う他の症状(吐き気、食欲不振)を記録する。 |
援助計画(T-P) | 食物繊維が豊富な食事を提供する。 水分摂取を促し、目標量を設定する(1.5~2L/日)。 排便しやすい姿勢(前かがみ)の指導を行う。 腹部マッサージを適切な頻度で実施する。 毎朝、トイレに座る習慣をつけるよう支援する。 軟便薬や整腸剤の適切な使用を指導する。 適度な運動(例:散歩)を促進する。 プライバシーを確保し、リラックスできる排便環境を提供する。 便意を我慢しないよう指導する。 便秘による不快感を軽減するためのリラクゼーション法を提案する。 |
教育計画(E-P) | 便秘を予防するための食事のポイントを説明する。 水分摂取の重要性と適切な摂取方法を指導する。 腸の蠕動運動を活発にする生活習慣を指導する。 ブリストル便形状スケールを活用し、便の正常な状態を説明する。 排便時に無理をせず、自然な便意に任せるよう指導する。 排便習慣を確立するための時間管理の重要性を説明する。 薬剤の正しい使用方法と注意点を説明する。 運動の効果と簡単に取り組めるエクササイズを提案する。 便秘による不安を解消するため、医療者への相談を勧める。 過剰な便秘薬の使用を避け、生活習慣改善を優先する重要性を説明する。 |
看護計画作成におけるルールは、コチラの記事(【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】)を参考にしてください!
【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】
続きを見る
便秘(NANDA-I領域3)の看護記録(SOAP)の記載例・書き方
看護診断 (看護問題) | 便秘 |
S(主観的情報) | 「ここ数日、便が出なくてお腹が張っています。」 「便意は感じるけど、硬くて出にくいです。」 |
O(客観的情報) | 最後の排便から5日経過。 腹部に軽度の膨満感と圧痛を認める。 ブリストル便形状スケール:タイプ1(硬い塊状の便)。 水分摂取量が1日500mLと少ない。 |
A(評価) | 水分摂取不足と食物繊維の不足が原因で便秘を引き起こしている。 |
P(計画) | 水分摂取量を1日1.5~2Lに増やすよう促す。 食物繊維が多い食品を食事に取り入れるよう指導する。 毎朝、排便習慣を作るためにトイレに座る時間を設ける。 腹部マッサージを実施し、腸の動きを助ける。 軟便薬を使用し、排便を促進する。 患者の排便パターンと便の状態を毎日記録する。 排便時の体位を指導し、スムーズな排便を助ける。 排便環境を整え、プライバシーを確保する。 運動(例:軽いウォーキング)を推奨し、腸の蠕動運動を促す。 次回の診察時に便秘の改善状況を報告できるようにする。 |
看護記録(SOAP)作成におけるルールは、コチラの記事看護記録(【完全保存版】「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応)を参考にしてください!
【完全保存版】看護記録「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応】
続きを見る
NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例まとめ
当サイトでは、今回ご紹介した領域の他にも、NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例を多数まとめています。
ぜひ、日々の業務のご活用ください!
看護記録(SOAP)の記載例
看護計画の記載例
引用・参考文献
T. ヘザー・ハードマン 編,上鶴 重美 訳:NANDA-I看護診断 定義と分類 2020-2023.医学書院.