当サイトでは、看護学生や新人看護師のために、NANDA-Iの看護診断に基づく看護計画&看護記録の記載例・書き方を多数ご紹介しています。
今回は、NANDA-I領域1の看護診断「非効果的健康自主管理」の患者の観察ポイントを解説してまいります。
非効果的健康自主管理は、看護診断の中でも使用頻度が高く、しっかりと抑えておくべき診断の一つです。
記事の最後には、看護計画と看護記録(SOAP)の記載例を公開しており、すべてコピペ可です。
あくまでも一例であり、所属している病院や法人によって、書き方やルールは異なる場合も考えられますので、各自カスタマイズしてご活用ください。
非効果的健康自主管理(NANDA-I領域1)とは
非効果的健康自主管理とは、健康状態を維持または改善するための行動が不十分で、健康目標を達成できない状態を指します。
この状態では、患者が自身の健康に関する知識やスキルが不足している場合や、必要な行動を実行できない状況が見られます。
結果として、病気の悪化や合併症のリスクが高まる可能性があります。
非効果的健康自主管理(NANDA-I領域1)の原因
非効果的健康自主管理(NANDA-I領域1)を引き起こす主な原因は以下の通りです。
知識の不足
- 疾患や治療に関する知識が十分でない
- 適切なセルフケアの方法を知らない
スキルやリソースの不足
- 必要なセルフケアスキルの不足(例:血糖値測定、インスリン注射)
- 医療機器の操作が困難
- 経済的困難や家庭環境の問題
心理的要因
- 自信の欠如(自己効力感の低下)
- 不安や抑うつによる意欲の低下
社会的要因
- 家族や社会的サポートの欠如
- 生活習慣や文化的背景による制約
その他の要因
- 慢性的な疲労や痛み
- 高齢や認知機能の低下
非効果的健康自主管理(NANDA-I領域1)の評価方法
非効果的健康自主管理(NANDA-I領域1)を評価する際には、患者の行動、知識、生活環境を多角的に観察します。
患者の行動の確認
- 医療者からの指示(例:服薬、食事療法、運動)を守れているか
- 血糖値測定や血圧測定など、日常的な自己管理が行われているか
知識やスキルの評価
- 疾患や治療に関する知識レベル
- セルフケアスキル(例:自己注射、食事計画)の確認
患者の主観的な訴え
- 「どう管理していいのかわからない」「やる気が起きない」などの発言
心理的状態の評価
- ストレス、不安、抑うつの有無を確認する
- 自信や意欲の程度を評価する
生活環境の確認
- 家庭内での支援体制(家族や介護者の協力)
- 経済的状況や医療へのアクセスの可否
健康状態のモニタリング
- 定期的な血液検査や体重測定、バイタルサインの記録
- 病状悪化や合併症の有無を確認する
非効果的健康自主管理(NANDA-I領域1)の治療方法
非効果的健康自主管理(NANDA-I領域1)の治療は、患者が健康管理を実行できるよう支援し、必要な知識とスキルを提供することを目的とします。
教育の提供
- 病気や治療についてのわかりやすい説明を行う
- セルフケアスキル(例:服薬管理、自己注射、血糖値測定)を指導する
行動計画の作成
- 現実的で達成可能な短期目標を設定し、患者と共有する
- 小さな成功体験を通じて、患者の自信を高める
心理的サポート
- 不安や抑うつを軽減するために、カウンセリングや心理療法を提供する
- 患者の気持ちに寄り添い、モチベーションを高めるサポートを行う
支援体制の構築
- 家族や介護者を巻き込んでサポート体制を整える
- 地域資源(訪問看護、福祉サービス)の利用を提案する
環境の調整
- 必要な医療機器の導入や、経済的支援制度の活用を検討する
- 患者の生活環境に応じたセルフケア方法を提案する
フォローアップの実施
- 定期的な評価とフィードバックを通じて、計画を見直す
- 患者の進歩を評価し、ポジティブなフィードバックを行う
非効果的健康自主管理(NANDA-I領域1)の患者をケアする上で気をつけること
非効果的健康自主管理(NANDA-I領域1)の患者をケアする際には、以下の点に注意する必要があります。
患者のペースに合わせる
- 患者が過度な負担を感じないよう、段階的に支援を進める
共感的な態度を持つ
- 患者の困難や不安に耳を傾け、理解する姿勢を示す
自己効力感を高める
- 小さな成功を積み重ね、自信を持たせる
家族や介護者との連携
- 家庭での支援体制を整えるため、家族と情報を共有する
継続的なフォローアップ
- 短期間での改善を求めず、継続的な評価と支援を行う
非効果的健康自主管理(NANDA-I領域1)の看護計画を立案する上でのポイント
非効果的健康自主管理(NANDA-I領域1)の看護計画(観察計画、援助計画、行動計画)は、以下のポイントに注意をして立案すると良いでしょう。
観察計画(O-P)の立案ポイント
患者のセルフケア行動(服薬、食事療法、運動)の実施状況や、健康状態の変化を観察します。
心理的な状態や生活環境も定期的に確認します。
援助計画(T-P)の立案ポイント
教育とサポートを通じて患者のセルフケア能力を向上させます。
また、支援体制を整え、患者が行動を継続しやすい環境を作ります。
教育計画(E-P)の立案ポイント
患者とその家族に、病気や治療に関する知識を提供し、セルフケアスキルの習得を支援します。
具体的で実践可能な方法を指導し、継続の重要性を強調します。
非効果的健康自主管理(NANDA-I領域1)の看護計画の記載例・書き方
看護診断 | #1 非効果的健康自主管理 |
患者目標 | 長期目標:健康管理を継続し、病状が安定する。 短期目標:1週間以内に自分で血糖値測定を行えるようになる。 |
観察計画(O-P) | 患者の服薬状況や服薬に関する理解度を確認する。 血糖値や血圧の測定結果を定期的に記録する。 患者の食事内容や運動習慣を観察する。 ストレスや不安、抑うつの兆候を確認する。 患者のセルフケアに対する態度や意欲を観察する。 健康管理に対する障害(経済的問題、家族のサポート不足)を評価する。 定期検査の結果を確認し、病状の進行や改善をモニタリングする。 医療機器(血糖値測定器、血圧計)の使用状況を観察する。 家族や介護者との連携状況を確認する。 患者のライフスタイルの変化(睡眠、活動レベル)を記録する。 |
援助計画(T-P) | 患者に健康管理の重要性を説明し、モチベーションを高める。 血糖値測定の方法をデモンストレーションで指導する。 食事計画を一緒に作成し、実践可能な内容を提案する。 簡単な運動プログラムを提供し、実行をサポートする。 支援体制を整えるため、家族と連携し、役割分担を決める。 医療機器の使い方を再確認し、適切に使用できるよう支援する。 ストレス軽減のため、リラクゼーション法やカウンセリングを提案する。 必要に応じて訪問看護や地域支援サービスを紹介する。 患者がセルフケアを実行した際に、ポジティブなフィードバックを行う。 再評価を定期的に行い、計画を柔軟に見直す。 |
教育計画(E-P) | 病気の管理方法(服薬、食事療法、運動)の基本を説明する。 血糖値測定の手順と重要性を指導する。 患者が負担に感じる行動を分解し、取り組みやすいステップに分ける。 具体的な目標(例:1週間で運動時間を20分増やす)を設定する。 家族に患者の健康管理のサポート方法を指導する。 患者が自信を持てるよう、達成可能な計画を作成する。 医療機関や地域資源の活用方法を教える。 定期的な健康チェックの重要性を強調する。 ストレス管理の方法(深呼吸、趣味活動)を提案する。 生活習慣を見直し、健康に配慮した選択を促す。 |
看護計画作成におけるルールは、コチラの記事(【完全保存版】看護計画の作成ルールと記載例まとめ【NANDA- I】)を参考にしてください!
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非効果的健康自主管理(NANDA-I領域1)の看護記録(SOAP)の記載例・書き方
看護診断 (看護問題) | 非効果的健康自主管理 |
S(主観的情報) | 「血糖値を測るのが面倒で、やる気が出ません。」 「何をどうすればいいかわからない。」 |
O(客観的情報) | 血糖値測定器を正しく操作できていない。 食事記録がつけられていない。 HbA1cが前回検査より上昇(8.5%→9.2%)。 |
A(評価) | 患者のセルフケア能力が不足し、健康管理が十分に行われていない状態。 |
P(計画) | 血糖値測定器の使用手順を説明し、デモンストレーションを行う。 簡単な食事記録のつけ方を提案する。 家族に患者の健康管理のサポート方法を指導する。 患者がストレスを感じた際の相談窓口を紹介する。 医師と連携し、HbA1cを下げるための追加支援を計画する。 定期的に患者と目標を再確認し、進捗を評価する。 患者が成功体験を得られるよう、小さな目標を設定する。 血糖値測定後のデータを患者と共有し、改善点を話し合う。 健康管理の取り組みを患者がポジティブに受け入れられるようサポートする。 次回の看護面接で、進捗状況を確認し、計画を調整する。 |
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【完全保存版】看護記録「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応】
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NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例まとめ
当サイトでは、今回ご紹介した領域の他にも、NANDA-Iの看護診断に基づく看護記録(SOAP)&看護計画の記載例を多数まとめています。
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看護記録(SOAP)の記載例
看護計画の記載例
引用・参考文献
T. ヘザー・ハードマン 編,上鶴 重美 訳:NANDA-I看護診断 定義と分類 2020-2023.医学書院.