看護記録

【完全保存版】看護記録「SOAP」の書き方と記載例まとめ【NANDA-Iの看護診断対応】

看護師にとって、患者の状態を正確に記録し、適切なケアを提供することは非常に重要です。

そのために有効な記録形式のひとつが「SOAP:ソープ(S:主観的情報、O:客観的情報、A:評価、P:計画)」です。

SOAPは患者の経過を整理して記録し、チーム全体で共有するためのツールとして多くの医療現場で活用されています。

しかし、看護実習生や新人看護師にとっては書き方に戸惑ってしまうこともあることでしょう。

この記事では、SOAPの書き方を看護実習生・新人看護師でもわかりやすく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

トコル
トコル

記事の最後には、NANDA-Iの看護診断に基づくSOAPの記載例をなんと270例以上もまとめているので、ぜひ参考にしてみてください!

看護記録「SOAP」とは

SOAPとは、患者の状態を記録するための方法で、「S(主観的情報)」「O(客観的情報)」「A(評価)」「P(計画)」の4つの項目に基づいて記載します。

S(主観的情報)患者が感じている症状や訴え
O(客観的情報)看護師が観察した客観的なデータや検査結果
A(評価)SとOの情報に基づく患者の総合的評価
P(計画)評価に基づいた今後のケアや治療計画

SOAPは情報を体系的に整理し、他職種間でも容易に共有できることから、多くの医療機関で導入されています。

S(Subjective:主観的情報)

「S」には、患者が感じている症状や訴えを記録します。

重要なのは、患者の言葉をそのまま反映することです。

「患者の言葉=感情や気持ち」を正確に記載することにより、その背景にある問題点を理解しやすくなります。

良い例: 「息苦しい」「左足に強い痛みを感じる」→患者の言葉をそのまま書いている

悪い例: 「少し辛そう」「何となく元気がないようだ」患者の言葉ではなく看護師の考えが書かれている

O(Objective:客観的情報)

「O」には、看護師が観察した客観的なデータや検査結果を記録します。

バイタルサインや検査結果など、具体的な数値や観察内容を書くことがポイントです。

客観的な情報を詳細に記録することで、患者の状態を正確に把握し、ケアの根拠を明確にします。

良い例:「血圧120/80、体温37.0℃、脈拍90回/分」→客観的なデータを書いている

悪い例: 「血圧が少し高い」「体温はまあまあ」→曖昧な表現を使っている

A(Assessment:評価)

「A」には、SとOの情報を基に患者の状態を総合的に評価したものを記載します。

客観的であることが重要で、看護師の主観が入ってはなりません。

この評価の部分が看護師として最も大切な部分と言っても過言ではないでしょう。

良い例: 「体液貯留が見られ、心不全による呼吸困難の可能性が高い」→SとOを元に客観的な評価ができている

悪い例: 「少し辛そう」「何となく元気がないようだ」→曖昧な表現かつ問題点が明確になっていない

P(Plan:計画)

「P」は、評価に基づき今後のケアや治療の計画を立てます。

計画は患者の状態に応じて柔軟に変更されることが求められ、ケアの進捗に応じて見直しを行うことも重要です。

良い例: 「利尿薬を投与し、1日ごとの体重変化を観察する」「患者と家族に塩分制限の指導を行う」→具体的な計画が書かれている

悪い例: 「様子を見る」「必要なら対応する」→曖昧な表現かつ具体性がない

看護記録「SOAP」を書くときのポイント

では、看護記録「SOAP」を書くときの、具体的なポイントをお伝えしてまいります。

情報に一貫性を持たせる

SOAP記録を書く際には、各項目間の一貫性が重要です。

例えば、SとOの情報に基づかない評価(A)や計画(P)を記載すると、一貫性が欠けてしまい、適切なケアが提供できなくなる可能性があります。

そのため、SとOの情報を基に、論理的に評価(A)を行い、それに基づく計画(P)を立てることが大切です。

情報の一貫性が保たれることでケアの根拠が明確になり、チーム全体でのケアの質も向上します。

問題点ごとに分けて記録する

1つのSOAP記録に複数の問題点を混在させると、評価が曖昧になり、計画が不明瞭になる恐れがあります。

例えば、呼吸に関する問題と栄養に関する問題がある場合、どの問題に対する評価・計画なのかが分からなくなってしまいます。

問題ごとに記録を分けることで、各問題に対するケアの効果を正確に評価しやすくなり、患者にとって最適なケアを提供することができます。

データ収集と分析を徹底する

SOAP記録を作成する際は、患者の基礎データをしっかりと収集して分析することが重要になります。

当たり前のことではありますが、まずは問診や医師のカルテを参照するなどをして、事前のデータをしっかりと収集するようにしましょう

また、データは具体的かつ客観的であることが求められます。

「やや改善」といった曖昧な表現を避け、数値など具体的な指標を用いることが望ましいです。

定期的に記録の見直しを行う

SOAP記録は、患者の状態の変化に応じて柔軟に対応し、記録を見直すことも重要です。

例えば、患者の症状が改善したり、新たな問題が発生した場合は、SOAPの各項目を適宜修正し、最新の状態に基づいて評価と計画を更新するようにしましょう。

看護記録「SOAP」の記載例

これらのポイントを踏まえた、看護記録「SOAP」の記載例をご紹介します。

慢性心不全患者の記載例

S(主観的情報)

  • 「少し胸が苦しい感じがする。以前よりも動くと息切れがひどい。」

O(客観的情報)

  • バイタルサイン:血圧130/85、脈拍98回/分、SpO2 92%、体温36.8℃
  • 呼吸音にて両側下肺野で軽度の湿性ラ音あり。
  • 下肢に軽度の浮腫を認める。
  • 体重が前日より1.5kg増加している。

A(評価)

  • 心不全による体液貯留が疑われ、息切れや胸部不快感を引き起こしている可能性が高い。体重増加や下肢浮腫が観察されており、利尿薬の調整が必要と考えられる。

P(計画)

  • 利尿薬の投与を行い、体液量の管理を実施する。
  • 日々の体重測定を継続し、体重の変化を観察する。
  • 塩分制限に関する指導を行い、患者とその家族に食事管理の重要性を説明する。
  • 必要に応じて酸素投与を検討する。

糖尿病患者の記載例

S(主観的情報)

  • 「足がしびれて感覚が鈍くなってきた。最近は疲れやすく、夕方になると特にだるさを感じる。」

O(客観的情報)

  • 血糖値:空腹時180mg/dL、食後2時間で250mg/dL。
  • 足部に軽度の浮腫と皮膚の乾燥が見られる。
  • 体重が3か月前に比べて2kg増加している。
  • HbA1c 8.2%。

A(評価)

  • 高血糖の管理不良により、末梢神経障害の症状が進行している可能性が高い。血糖コントロールを改善するための介入が必要。

P(計画)

  • 食事療法の見直しを行い、栄養士による指導を実施する。
  • インスリン投与量の調整を検討し、内科医と相談する。
  • 足部のケアを指導し、適切な保湿を行うよう指示する。
  • 毎日の血糖値測定を継続し、次回の受診時に結果を共有する。

喘息患者の記載例

S(主観的情報)

  • 「夜中に咳が止まらなくて眠れなかった。胸が苦しくて息がしづらい感じがする。」

O(客観的情報)

  • 呼吸数24回/分、SpO2 90%(室内気)。
  • 呼気時に喘鳴を聴取。
  • ピークフロー値が普段よりも20%低下している。
  • 胸部X線で特に異常なし。

A(評価)

  • 夜間の喘息発作が悪化しており、気道の炎症と狭窄が進行している可能性がある。呼吸困難の改善が必要。

P(計画)

  • 吸入ステロイドと短時間作用性β2刺激薬の使用を指示する。
  • 発作時の吸入方法を再確認し、適切な使い方を指導する。
  • アレルゲンの回避方法について患者と話し合い、環境整備の指導を行う。
  • 1週間後に再評価し、症状の改善具合を確認する。

新人看護師
新人看護師

もっと記載例をたくさんみたい!という人は、この記事最後に270例以上をまとめているので参考にしてみてね!

どうしてもSOAPがうまく書けない!という人は

このように、SOAPには独自のルールがあったり、特に初心者にとっては決して簡単に作成できるものではありません。

どうしてもSOAPがうまく書けない!という人は、以下の点を意識してみることをオススメします。

何を考え、何を行ったのかを明確にする

看護記録には、看護師が「どのように考え、どのようなケアを行ったのか」をしっかりと記載する必要があります。

特に「A(アセスメント)」と「P(看護プラン)」の部分は、看護師の判断や行動が具体的に示される重要な部分です。

しっかりと自分の考えが記載されているか、そしてそれに基づくケアが記載されているかを確認するようにしましょう。

誰が見てもわかりやすい文章にする

SOAP記録は他の医療スタッフとも共有するため、誰が読んでも理解できる必要があります。

確かに記録を読む人も医療関係者であることが多いと思いますが、専門用語を適切に使いながら、そして簡潔でわかりやすい表現を心がけましょう。

記録を一通り書くことができたら、友人や同僚に読んでもらうことも効果的です。

A(アセスメント)から書き始める

看護記録を作成する際に、どこから書けば良いか迷うことがあるかもしれません。

その場合は、まず「A(アセスメント)」から書いてみるのも有効です。

患者の問題や苦しみを考え、それに対してどのようなケアが必要かを考えることで、自然と他の項目も埋めやすくなります。

事前の予習を行う

記録作成をスムーズに進めるためには、患者の情報を事前に予習しておくことが大切です。

準備が万全であれば、現場での混乱を最小限に抑えることができ、イレギュラーな出来事にも対応できやすくなります。

特に患者の病状や生活状況を把握し、予測される問題点をいくつか挙げておくことで、的確な情報収集が可能になります。

重要な情報に焦点を当てる

すべての情報を書き出すのではなく、本当に重要な情報に焦点を当てて記録することがポイントです。

「問題点ごとに分けて記録する」にも通じますが、あれもこれもと詰め込みすぎると、結局何が言いたいのか分からなくなってしまいます。

「この患者にとって一番重要なポイントはどこだろう?」という視点を持って作成するようにしましょう。

たくさんの記載例を参考にする

最後は「たくさんの記載例を参考にする」です。

多くの記載例を見ることにより、文章の書き方や表現方法を学ぶことができます。

確かに「自分で学ぶ機会が薄れる」という指摘もあるかもしれませんが、私は良いものを真似て、そして自分のものとして吸収するという過程も立派な学びだと考えています。

当サイトでは、NANDA-iの看護問題に基づく270例の記載例をまとめています。

「看護記録がうまく書けない」「もっと時短をして睡眠時間を確保したい!」という人は、この記事最後に記載しているので、ぜひ参考にしてみてください。

看護記録「SOAP」のメリット

臨床で広く使われているSOAPではありますが、メリットと同時にデメリットがあることも抑えておかなければなりません。

SOAPを使うメリットは以下の通りです。

情報の整理が容易

SOAP形式は情報を4つのカテゴリに分けて整理するため、患者の状態や必要なケアが一目でわかります。

また、各情報が体系的に整理されているため、次のステップに進むための指針が明確になります。

チーム間の情報共有がスムーズ

SOAPを用いることで、異なる職種間でも患者の状態を正確に共有でき、一貫したケアを提供することが可能になります。

特に、多職種(医師やリハビリスタッフなど)が関与する医療現場では、SOAP形式による情報共有は不可欠と言っても良いでしょう。

記録の見直しが容易

各項目ごとに記録が整理されているため、患者の状態の変化やケアの効果を振り返る際に役立ちます。

また、過去の記録を基にして、ケアの改善点や新たな計画を立てる際の参考にもなります。

看護記録「SOAP」のデメリット

次はSOAPのデメリットです。

長期間の計画には不向き

SOAPは短期的な問題に対しては有効ですが、長期的なケア計画には適さないことがあります。

そのため、長期的な目標を立てる際には他の記録方法との併用が必要になってくることもあります。

急変時の対応には不向き

患者の容態が急変した場合、SOAP形式での記録は迅速な対応に向かないことがあります。

このような状況では、即時的な対応が優先されるため、SOAP記録の作成が後回しになることもあります。

また、急変時にはより迅速で簡潔な記録が求められるため、SOAPのように詳細な記録形式は不適切な場合があります。

記録に時間がかかる

SOAP記録は各項目を詳細に記載する必要があるため、特に慣れないうちは記録に時間がかかることがあります。

そのため、業務が立て込んでいる際には負担になることもあります。

経験が物をいう世界でもあるので確かに難しい部分ではありますが、記載例を活用するなどして、効率よく書くための方法を確立していく必要があります。

看護記録「SOAP」以外の看護記録方法

このように、SOAPは広く使われている一方、デメリットも存在します。

そのため、実習する(働く)医療機関によっては、SOAP以外の看護記録方法を導入している場合もあります。

SOAP以外の代表的な看護記録方法は以下の通りです。

  • フォーカスチャーティング(Focus Charting): 患者の状態やケアにおける特定の出来事に焦点(フォーカス)を中心に記録する方法。「F(Focus)」の情報をもとに、「D(Data)」「A(Action)」「R(Response)」で患者の容態や状態を記載する。
  • POS(Problem Oriented System):「問題志向型システム」。患者の健康問題を合理的・系統的に解決する手法。
  • 経時記録:患者の容態や実施した看護ケアの内容を、時系列に沿って記載する方法。

SOAPとフォーカスチャーティングの違い

この中でも「フォーカスチャーティング(Focus Charting)」は比較的多く使用されている看護記録方法です。

SOAPとフォーカスチャーティングは、どちらも看護記録の方法として用いられていますが、いくつかの違いがあります。

SOAPは、患者の「問題」に焦点を当てて記録を行います

全体的な視点から患者の問題を把握し、適切なケアを提供することが目的です。

一方、フォーカスチャーティングは、「出来事(トピックス)」に焦点を当てて記録を行います

具体的には、F(フォーカス)、D(データ)、A(アクション)、R(レスポンス)の4つの要素で構成されており、患者が抱える問題や重要な出来事に焦点を当てて記録します。

フォーカスチャーティングでは、患者の関心や注意すべき行動、重要な出来事などに注目し、記録を行う点が特徴です。

項目SOAPフォーカスチャーティング
記録の焦点問題に焦点を当てる出来事(トピックス)に焦点を当てる
記録形式S(主観的情報)F(フォーカス)
O(客観的情報)D(データ)
A(評価)A(アクション)
P(計画)R(レスポンス)

SOAPもフォーカスチャーティングも「情報収集」「アセスメント」「計画」を明確にすることにおいては共通しており、どちらの形式も質の高い看護ケアを提供するために有効です。

フォーカスチャーティングは、SOAPよりも読み手にとって患者の現状を素早く把握しやすいという点で近年採用されつつありますが、それでも他職種と共有しやすいという特長からSOAPがまだまだ主流な現状です。

NANDA-Iの看護問題に対応!看護記録「SOAP」の記載例まとめ

当サイトでは、NANDA-Iの看護問題に基づくSOAPの記載例を多数紹介しています。

NANDA-Iに掲載されているすべての看護問題(270以上)に対する記載例を紹介しているので、きっとあなたの担当患者に合う記載例にも出会えるはずです。

ぜひ、参考にしてみてください。

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まとめ

SOAP形式の看護記録は、患者の状態を明確に把握し、適切なケアを提供するために非常に有効なツールです。

S(主観的情報)、O(客観的情報)、A(評価)、P(計画)の各項目を通じて、患者の問題点を整理し、チーム全体で情報を共有することで、質の高い看護ケアを実現することができます。

しかし、SOAP記録を正しく使いこなすためには、一貫性のある情報の収集と分析、問題点ごとの記録といったポイントを押さえる必要があります。

看護実習生や新人看護師にとっては難しく感じるかもしれませんが、多くの記載例を見るなどをして書き方に慣れていきましょう。

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